パンツが袖になるトランスフォーム服を作る

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服のルールってなんだろう。

パンツは足を入れて履くものであり、袖からは手を出すものである、というごく当たり前に従っているルールがある。

でも、パンツに手を通してもいいはずだ。逆に袖を履いてもいい。

特にパンツと袖は形が似ているので、入れ替われる気がするのだ。

ただパンツを袖につけるのではなく、さっきまで履いていたパンツが袖にトランスフォームしたらかっこいい。

でもそしたらパンツがなくなってしまうので困る。

それならいっそ、全身トランスフォームさせてみよう。

パンツが袖になって、トップスがボトムスになって、バッグがトップスになるという風に。

そんな夢のようなトランスフォーム服を作りたい。

1995年、海の近く生まれ。映画と動物とバーベキューが好きです。オレンジジュースを飲んでいたコップに麦茶を注いでもらう時でも「コップこのままでいいよー!」と言えます。

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パンツに手を通してみる

わざわざトランスフォーム服を作らなくても、パンツがそのままの形で袖になったら手っ取り早い。淡い期待を抱いてパンツに手を通してみた。

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だめだ。

肩も腕もきつくて不自由だ。

パンツとしてならスルッと履けるのに、袖にしようとすると頑なに着させてくれない。絶対に袖にはならないという意志を感じる。なかなか芯のあるヤツだ。

でも袖にしたい。パンツの袖、かっこいいと思うから。

袖にするには、パンツを股で左右に切り離す必要がある。

そこにファスナーをつければ、パンツにもなるし袖にもなるトランスフォーム服ができそうだ。

トランスフォーム服のデザイン

まずは全身のデザインを考えよう。

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どんなのがいいかなー。

ラフがたくさんあるだけでできる人っぽいな、と思って途中からできる人っぽいラフを描くほうに集中してた。

さて今回作るデザインはこちら。

服の形をトランスフォームさせつつ、夏のスタイルから秋のスタイルへ移り変わるようにしたい。

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モードなキキララさんみたい。

夏のスタイルではビスチェとロングパンツにバッグを持つ。これがトランスフォームして秋スタイルのジャケットとスカートになるのだ。

夏スタイルのパンツ+バッグが合体してジャケットになり、ビスチェ+バッグが合体してスカートになる。

さらに、2色の布でそれぞれトランスフォーム服を作れば、デザイン画のようにパーツを交換して色の組み合わせを楽しめる。それいい!よし、2着作ろう!と意気込んで布を買いに行った。

ビスチェスカートを作る

一目惚れした紫と細かい千鳥柄の布を選んだ。秋らしくて既にかわいい。素材がいいのだ。

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紫は帆布という固い生地、千鳥柄は厚すぎず薄すぎず柔らかい生地にした。

あと使えそうなボタンたちも買ってきた。

 

さぁ、やろう。まずは型紙を作る。

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型紙はいつもいらない裏紙をくっつけて描いている。

資源を大事にしたいのに職場でエクセルの1マスだけ飛び出た紙を大量に印刷しちゃう系人間なのでこれは罪滅ぼしだ。

 

そして千鳥柄の方から裁断。

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裁断した後のパーツっていいな。全然服になりそうにないのに、実は服になるっていうギャップがいい。赤ちゃんなのにフラッシュ暗算できるみたいな。

最初は簡単そうなビスチェスカートから縫っていこう。

夏スタイルのビスチェで秋スタイルのスカートだ。

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ビスチェとしてもスカートとしても仕上げなければいけないところが難しい。

まずは上のパーツと下のパーツでわけてつくる。

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上がビスチェ、下をつけるとスカートだ。これを黒いファスナーで繋げ、つけ外しできるようにする。

ファスナーをつける前に、縫いやすい状態で装飾をする。

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ポケットとヒモ穴をつけた。

ポケットは地の生地と柄の向きが違うのもポイント。柄の生地は柄の向きを変えるだけで雰囲気が変わるので楽しい。

 

絞りの紐を入れてベルト部分を整えたら、背中を閉じて輪っかにする。そして最後にぐるっとファスナーをつける。

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このようにファスナーを少し奥につければ、見た目に影響しない。

できた!スカートがくっついた!

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ファスナーがきれいに隠れている!上出来だ!

そしてビスチェの肩紐も作った。肩紐は、ボタンでつなげて長い1本にし、スカートの時のベルトに使う。

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スカートの方にもベルト穴をつければ完成!

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ビスチェの時も肩紐はベルト穴に結ぶことにした。結ぶってすごい楽な手法である。

 

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パンツ袖を作る

次はパンツ袖を作ろう。

何がどうくっつくかわからないので、やりながら作ることにしよう!

まずはピンで止めて形を作り、袖にしてみた。

これが念願のパンツ袖だ!

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か、かっこいい!!

この袖のダボっと感、丈が長すぎる感じ、肩にかぶさってる形までも全てがかっこいい。良すぎ良すぎ!

パンツはこんなに素晴らしい袖のポテンシャルを持っていながら、何をもったいぶっていたんだ。

絶対に袖としても輝くべきだ。

パンツの袖が良すぎて、友達と家族に「パンツの袖が良すぎなんだけど!」と連絡した。それでも足りなくて、パンツの袖が良すぎた、と日記にも書いた。

夜も「パンツの袖良すぎるなー。」と思いながら寝た。それくらい良い。本当にいい。

早くパンツのポテンシャルを解放したい。

ささっと仕上げてしまおう!

まずは足の外側と内側を縫い、筒状にする。

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後ろにはポケットもつけた。袖になっても自分はパンツだと忘れないために。

ちなみにポケットにはナミノリのnmのマークを縫った。

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結構時間かけたのに全然見えない。全然見えないけど、「パンツの袖が良すぎ」ということだけで今は無敵だ。

次にパンツを左右に取り外せるように、股ぐりにファスナーをつける。

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股ぐりのぐりは、刳り(えぐり)のぐりらしい。気になって調べた。

ファスナーは完全に開け離れるオープンファスナーではなく、最後で止まるファスナーを使うことにした。その方が肩にかける感じで着やすかったのだ。

 

ウエストにはベルトとボタンをつける。

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自分でもびっくりなくらい仕立てが上達してる。すごいきれい。

ここでひと工夫!パンツの裾にはボタンをつけた。

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これは袖にした時に袖丈が長すぎるので、まくって手首でとめるためだ。

 

ジャケットを作る

つぎはジャケットの身頃を作る。秋スタイルで袖をつけるとジャケットになる部分だ。

まずは襟がペロっとなってる身頃を作った。

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ペロってやつはラペルと言います。

パンツ袖がくっつくとパンツのベルト部分が襟になるので、首周りの襟は見頃にはつけない。

次にパンツ袖と合体させる。

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袖といい位置で組み合わさるように、簡単に付け外しができるスナップボタンでくっつける。
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さらに、腕を上げたとき脇が開かないように、脇下で紐を結ぶ。

できたー!これで全パーツが揃った!

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仕立てがきれい!今までで1番の出来だ!

今回はしっかりアイロンをかけられる布だったので、ひと縫いごとにアイロンをかけていたら、仕上がりがとてもきれいになった。アイロンひと手間の影響は大きい。

バッグにならない

パーツは揃ったが、一つ問題が起きた。

スカートの下と身頃がバッグにならないのだ。

バッグは単純な作りだし、テキトーにくっつければどうにかなるだろうと思っていたのだが甘かった。この2つのパーツをどうこねくり回しても全然バッグにならない。

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バッグどころかなんにもならない。

パンツにも袖にもなる、ビスチェにもスカートにもなる、便利な2wayのものを作った反面、なんにもならないものができた。

世の中ってそういうことがよくある。

たこ焼きパーティーをした時に、誰かが欲張って一個のたこ焼きにタコもウインナーも入れると、それは二つの味が楽しめて美味しいが、反面なんにも入ってないたこ焼きが一個できる。そういうことだと思う。

なんにも入ってないたこ焼きを食べたことがある。

あれはそういうことだったんだと思う。

 

考えた末、この2つのパーツを身につけてればいいんだから、バッグを作って押し込むことにしよう。収まってればいいでしょう、トランスフォームになるでしょう、ということで納得した。

まずパーツがピッタリ入るサイズのバッグを作る。

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ちょうどかわいいなー、作りたいなーと思ってたバッグがあったんだよね。

小さなバッグを作ったら、ベルトをつけて完成!

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ななめがけにもウエストポーチにもできるミニバッグ。

これで全て完成した!

千鳥柄のトランスフォーム服を作るだけで丸4日もかかってしまったので、紫の布の方は断念した。ちょうど裏処理をするロックミシンの針が折れてどっかに飛んでいったので、諦めもついた。

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夏スタイルを着てみる

さぁ、着てみよう。

トランスフォーム服がそれぞれのスタイルでかっこよく完成されるように考えた。違和感なく着られるかがポイントになるだろう。

まずは夏スタイルだ。

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全く違和感がない!トランスフォームしそうにない!いいぞ!

パンツのラインもきれいだ。

パンツの裾には、袖口調整のためのボタンをつけている。

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袖をとめるときは逆方向に回してとめると、円周が小さくなってピッタリになる仕様だ。

そして、無理やり作ったバッグ。

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バッグを止める位置が中央すぎたのか下向きになっている。でもこのバッグ作ってみたかった!

さぁ、ここからトランスフォームだ!!

この夏のスタイルから秋のスタイルへ変身!

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バッグからパーツを取り出す。

そして一旦屋内へ戻ります。

トランスフォーマーみたいにその場でかっこいい変身をしたい気持ちは山々なのだが、やはりこれがリアル。

Dr.スランプ アラレちゃんのヒーロー、スッパマンも変身の時は一旦電話ボックスに入って着替える。それだと思って欲しい。

秋スタイルへトランスフォームさせる

お待たせしました!

ここからが見せ場。まずはビスチェが、スカートに!

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肩紐はベルトに!

次はパンツが開いて袖になり、身頃と合体!

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イケてるジャケットに!

秋スタイルへのトランスフォーム完成!!

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シルエットが抜群だ!いい!良すぎる!

とても良くできたのでこのジャケットをじっくり見て欲しい。

袖口はボタンはこんな感じ。

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ダボっと感がとてもよい。

袖はボタンで止めずに、ダラーっとそのまま流してもいい。

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こういうオシャレもある。

さらに、このジャケットには工夫を施した。

スナップボタンを複数つけたことで、止める位置によってジャケットの襟の形が変わるのだ。

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どっちの襟の形もよかったから、2パターンよくばり仕様にした。

変形後の襟がこちら。さっきよりパンツの袖を前側につけている。

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良い!サイコー!

にしても本当にこのジャケットが良すぎる。全部どうでも良くなるくらいジャケットが良すぎる。

横から見てもダボ袖が良すぎる。

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後ろの肩あたりにはパンツの名残りのポケットがいる。

もうこれ着てる間は、今までの憎しみや悲しみを全て忘れちゃうくらい良すぎる。

だけど背中は虫だ。

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硬めの虫。

背中が虫だけど、完璧すぎる人よりちょっと部屋散らかってるぐらいの人の方が良かったりするし、背中が虫ぐらいの方がいいこともある。

味ってやつである。

お正月からのび太くんへ

この制作をしている間に髪の毛をバッサリ切った。

作業中に気になってしまい自分で10センチほど切ったらバツバツになり、髪の毛を束ねたら断面がそろいすぎてお正月みたいになった。

お正月のしめ縄の断面みたいでちょっとおめでたかった。

 

それからすぐ美容室に行って肩まで切ってもらった。そしたら拍車がかかってさらに切りたくなった。次の日、また自分で肩より上まで切ってバツバツになり、再びお正月になった。

 

そのまた次の日、さすがに同じ美容室に行くのは申し訳ないので、初めての美容室に行ったら、オーダーよりとんでもなく短くなり、のび太くんになってしまった。

でものび太くんはモードな服が似合う。

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