1000キロ以上離れた海底火山から軽石が流れてきました。
今年の8月、本州から1000キロ以上離れた南の海、福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)というところで海底火山が噴火した。
その時にできた軽石が3か月かけて本州まで流れてきているというのだ。探しに行きました。
海底火山が噴火した
今年の夏、本州から1000キロほど南にある海底火山が噴火した。その名も福徳岡ノ場(ふくとくおかのば)。
たいへんだ。
噴火したときはニュースなんかでもたびたび取り上げられていたので福徳岡ノ場という名前を聞いたことのある人も多いだろう。僕は聞くたびにボサノバみたいだなと思っていた。
福徳岡ノ場では噴火により新しく島ができた。しかしほとんどが軽石で出来ていたため、すぐに波に流されて消えてしまったらしい。
その軽石が3か月かけて沖縄や九州、最近では関東にも流れついてきているという。海からの風が強い日には千葉や神奈川の海岸でも流れ着いた軽石が見つかっているらしい。
↑ここで噴火したのが流れてきた。
ちょうど先日、台風みたいに風が強かったので軽石を探して神奈川県内の海岸をいくつか歩いてみた。
茅ヶ崎、鎌倉、三浦半島と、行ける範囲の海岸をいくつか見に行ってみたのだけれど、それらしき軽石は見つからなかった。
もしかしたら漂着しているものもあるのかもしれないが、僕の探した範囲では異常なしだった。
見つかりませんでした!という事実だけでこの記事を書こうかとも思ったのだけれど、それ、タイトルだけで言い終わるだろう。
こうなったら、と、軽石が流れ着いているという情報のある、伊豆大島まで行ってみることにした。
軽石さがしに伊豆大島へ
軽石が漂着しているという伊豆大島へ向かう。
伊豆大島へと向かうジェット船は、平日の朝の便にもかかわらず、8割がた席が埋まっていた。
東京の竹芝から大島まで、だいたい1時間45分ほどである。
出航してしばらくすると携帯が圏外になった。これがすごくいい。新幹線だとつい携帯を見ちゃうのだけれど、海上だと電波から切り離されるので集中して本を読んだり寝たりできる。
今回は日帰りの予定で軽石を探しに来ているので、10時半に大島について帰りの船が14時半、つまり4時間しか時間がない。
4時間ではたして軽石は見つけられるのだろうか。それは砂浜に落とした100円玉を見つけるみたいなことではないのか。
勢いでここまで来ちゃったけど、結局「見つかりませんでした」だと記事としていよいよつらい。何か発見があるといいなと船を降りる。
前日にTwitterで弘法浜というところに軽石が漂着しているという情報を得ていたので、なにはともあれ直行することにした。
押し戻されそうな海からの強風に逆らいながら歩いて浜におりると、砂浜に薄茶色の帯が見えた。
あれはもしや
すごい量の軽石が打ちあがっていた。
歩くとざくざく、霜柱の上を歩いているかのような、マカロンでも食べているかのような、たよりなく新しい感触がしてたのしい。
確かに大量の軽石が打ちあがってはいるのだけれど、これが本当に1000キロもかなたの福徳岡ノ場から流れてきた軽石なんだろうか。素人にはなかなか断定できない。
と思っていたらちょうど調査に来ていた火山学者の千葉先生にお会いした。
千葉先生いわく、福徳岡ノ場から流れてきた軽石の特徴はグレーがかった色で、中にチョコチップのような黒い粒が混じっているのだとか。まさにいま足元にある軽石がぜんぶそれだ。
軽石は軽いので浜に打ち上げられ、潮が引くとそこに筋となって残る。ここ弘法浜にも何重にも波に運ばれた軽石の筋が残っていた。
軽石は沖縄や九州に大量に漂着していて、漁業や観光、場合によっては生態系にも深刻な影響が及ぶことがあるのだという。
恐竜が滅びたのは隕石か火山かって言われているのだが、正直火山が噴火して絶滅するイメージがわかなかった。
でもこうやって大量の石が地球を覆ったら、そりゃあ大変だろう。ざくざくと歩きながらエサを探す恐竜たちの声が、大島の爆風の中に混じって聞こえてくるようでした。
軽石、来てます
軽石はたしかに流れ着いていた。これから関東やほかの地域にも漂着するのかもしれない。
軽石ってかかとをこすったりするもの、くらいにしか認識していなかったんだけど、こうしてダイナミックな地球の活動が作り出していたものなんだなあ、と改めて思いました。