いろいろなハムでハムカツを(デジタルリマスター)

デイリーポータルZ

どういうわけかハムカツが好きだ。

子供のころ裏の家が肉屋で、おつかいでよくハムカツを買いに行ったりしたせいだろうか。

大人になってからはしばらく遠ざかっていたのが、最近よく飲み屋のメニューで見かけるようになり、再びハムカツが気になりだした。

ハムカツってなんなんだろう。

あんまりそう考えてはいけない食べ物かもしれないが、ハムカツで育った人間としては、もっとハムカツをいじってみたい。いろいろ作って検証してみたいと思う。どうかついてきてください。

2005年3月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

ハムカツ行脚

ここ最近、飲み屋で「ハムカツ」を見かけると、必ず頼んでしまう。「オツさん。またですかー!」「本当、好きだよねぇ」などと言われながら頼んだ、ハムカツ行脚の道のりをちょっと紹介しよう。

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ハムカツだが、「なんとかソースはさみ」みたいな名前だった。
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その「なんとかソース」。中を開いたところ。チーズとマヨネーズの中間くらいの味。

肉屋のハムカツでも「チーズをはさむ」というメニューは一般的になっているかもしれない。うちの近所の肉屋さんのは、いきなり「カマンベールチーズ」がはさまっている。

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何だかすごくご立派な様子。トンカツかと思う。
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中を開いたところ。堂々とした肉。

上の写真は、仕事場の近所の居酒屋で。肉はお店独自のやり方でハムにしているそうだ。

「ハムカツ」といえば、「質の決して良くないようなハムまたはソーセージを薄くない衣で揚げたもの」と相場は決まっていたかと思ったが、こんなサラブレッドみたいなハムカツもあるのだ。馬にたとえるのもどうかと思うけど。

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オリジン弁当の「ミルカツ弁当」。ミルカツ、とは。
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「ミルカツ」の「ミル」はミルフィーユのミル。何層にも重ねた肉だ。

厳密には上の弁当のは「ハム」カツではない。が、薄い肉を(重ねてはいるが)揚げているという点で、示唆に富んでいるのでは、と思い取り上げた。

食感も、「層になった薄いものに歯を入れる」快感が味わえ、なかなかだった。ハムで応用しても良いかもしれない。なおもハムカツについて考える日々が続く。

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ハムカツ宴の前に

スーパーや肉屋をまわってハムを集めてきた。スーパーではハムだけ詰めたカゴをレジに持っていくのが相当な恥ずかしさだ。

ふだんはあまり気にしていなかったハムの分類だが、「ボンレス」と「ロース」の区別がよくわからなかったので、ハム会社のサイトを調べてみた。

・ロースハム・・・文字通り、豚のロース肉をハムにしたもの
・ボンレスハム・・・豚のモモ肉から骨を抜いて(「Bone」が「less」だ)ハムにしたもの

それに、ハムだけでなくソーセージも買う。ソーセージカツになってしまうが、同じく調べたところによると、「ハムやベーコンは塊の状態から作り、ソーセージは豚肉や牛肉、鶏肉などをミンチして混ぜ合わせて作る」とあった。なのでこれも「ハムカツだ!」と言ってしまってもあながち間違いではない。

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ハムやソーセージの舞い踊り。
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揚げてしまえば個体の識別に困難を要する。前もって鑑札を作成。よい段取り。

ハムカツで逡巡

余談だが、私は「薄いカツにぐっとくる会」という会を作っており、今回はそのメンバーを集めて屋外でパチパチ揚げようと考えていた。

が、当日は天候不順。ときおり細かな雨がぱらつく。なので会は延期。買ってしまった大量のハムを消費すべく、一人でハムカツパーティを行うこととなった。

だいたい、小雨が降るかもしれないのに屋外で揚げ物を企画するほうが間違っている。

しかし、その結果ちょっと感じることもある。

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ハムを卵に浸す。やりなれない感覚。
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パン粉はいいのを選びました。
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揚げる。薄いので反り返ったり、空気が入ったり。
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ハム揚がる。

以前、漫画家の東海林さだおさんが、「シューマイはひとりでしみじみ元気なく食べたほうがうまい」というようなことをエッセイに書かれていた。

ハムカツもその中に入らないだろうか?と気づいた。今さら言うのもあれだが、どうも会を催す前から、「ハムカツ」と「屋外」がしっくり来ない気がしていた。

わーい、揚がったー!と喜んでも、揚がるのはハムだ。トンじゃない。

「今日はステーキよ」と聞くと舞い上がるものだが、それが実は「ハムステーキ」だったとしたらどうか。着かけていた心のタキシードを脱いで、パジャマのままもくもくと食べることになるだろう。

つまりハムカツとはそういう食べ物だ。

しかし幼きころから刷り込まれた「ハムカツ好き」の性質が、そうじゃないと叫んでいる。ハムカツはもっとその内容に言及される資格があるのではないだろうか。それゆえの今回の企画だ。

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わかりにくいが、波うっている。
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肉と衣の分離がまたいい。オサイフハムカツ。

くどくど申して参りましたが、試しに1枚揚げてみたカツをかじってみる。

「・・・・・11111!!!!!!!」

気がはやって最初Shiftキーを押し忘れたが、いや、なかなか、どうして、すばらしい。パリッとした衣、熱いまま薄いものをかじりとる快感。一句できた。

    ハムカツで うんめぇーと叫ぶ 夜中のキッチン

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ハムカツコレクション

2枚目を食べたくなるのを我慢して、どんどん行こう。食べ比べは冷ましてから平等に行うのだ。

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これをやってみたかった。メロンの上から油の中へ。
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透けるが大丈夫か。
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これ好きなんです。おせちのお重に紛れ込んだりしてるのが。
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縁に胡椒のまぶしてあるアイツ。
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ローゼンハイムで買ってしまった!
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パックをあけたときの香りで陶酔。
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どうかなー。
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どうかなー。沖縄でのいわゆる「ポーク」、SPAMミート。
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ミルカツをまねて。
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上左から時計回りにSPAM、サラミ、ミルカツ。三者三様。
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問題の品。1cmと2.5cmで試す。ハムカツはどこまでハムカツか。
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特殊な工程。もうなにがなんだか。

美味しんぼで、山岡がカツ丼を作る回があった。そのカツを揚げるとき、「カツは厚さ5mmが限度、それ以上だとバランスが崩れる」と言っていたが、これはどうだろう。トンでさえ超えられないところをハムでオーバーラン。新たな地平へ。

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大量のハムカツが並ぶ午前2時の食卓です。
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ハムカツ・ペァラダーイス(paradise)

揚げまくってここに集結。さて興味があるのは正面からの姿ではなく(どれもほぼ丸いんで)、やはり切り口であろう、ということにさせていただく。飲み屋やいろんなところでも、切り口ってしげしげ眺めたりしませんか?その喜びを共有しましょう。

 

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ビアソーセージ
  • 心のハムカツに近い安っぽさ
  • 奴自体にも白い脂がボコボコ埋め込まれているので、どうしようもない油&脂っこさがガツンと胃に来る。

 

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パストラミ
  • せっかくの「端っこの胡椒」が感じられず。
  • ビアソーの後に食べたからあっさりめ。

 

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ロースハム
  • 薄い。とにかく薄い。ので衣パリパリの感覚のみ味わう。

 

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ボンレスハム
  • しかし薄い。市販のではなく、自分で切らにゃならんか。

 

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生ハム
  • おーいどこへいった。本体。
  • 薄すぎて見失った。彼には気の毒なことをした。

 

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ボロニアソーセージ
  • もともとこのムニュムニュしたソーセージは好きなのだが、やはりうまい。
  • ハムカツにはハムじゃなく、ソーセージが合うのだろうか、と思った1品。

 

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いろいろ入ってうまいソーセージ
  • 名前を控えておくのを忘れたが、これもローゼンハイムの。何やらタネ状のものが断面に見える。

 

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季節の菜の花が入ったソーセージ
  • 同じくローゼンハイム。うまいがやはり薄いな。

 

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生サラミ
  • 失敗くさい。
  • 中身と外の油の文化が違う模様。あくまでパラレル、うまみ交わらず。

 

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SPAMミート
  • 脂と油の相克!濃い!昼の東海テレビのドラマか。

 

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ミルハムカツ
  • やっと肉本体の味がする。
  • 口が油まみれになる前に食べたかった。
  • もっと薄切りのを何層にも重ねたらもっといいと思う。

 

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1cm厚
  • うまいが……、ハムカツではない、すでに。

 

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2.5cm厚
  • 公民館にハーレーでマルボロマンが乗り込んできた感じ。

 

2.5cm厚。もっと肉本体に油がしみて、アメリカンドッグの中のソーセージやちくわ天の中のちくわみたいに化学反応を起こして別モノのうまさになるかと思っていたが、あてが外れた。さらにじっくり揚げたほうがよかったかもしれない。

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アメリカーン!なボリューム。ひなびた感がまったくなく、ずうずうしさ爆発。
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6つ切りにしてしまえ。

味覚が狂うのでほんの少しずつ食べていたんだが、それでも最後は油で腹いっぱいになった。ああ。芥川龍之介の「芋粥」じゃないが、飽くまで食べてもう当分顔も見たくなくなった。

といっても、次の日にはもうあの薄さが懐かしく、昼の弁当にして食べました。ハムカツは下味をつける必要もなく、中心まで火が通ったか心配する必要もない。手軽だけどうまいのでお薦めです。みんなももっとハムカツを食べようではないか。

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最後に「ソースハムカツ丼」にしたところ。ハムカツにはウスターソースが合う。

 

結局、「中身はほどほどの厚さで、あまり高級なハムでなくてよい」という気がするのだがどうだろうか。

「肉!」という主張のあまりない、ソーセージ状のものが今回うまかった。

やり終えたが、実は仮題も残る。

  • 油をゴマ油とかにしたらどうか
  • 衣の厚さの限界は
  • 衣を剥がして食べたらどうか

など、今回はできなかった事項だ。今後の研究が待たれるので、いつかまた皆さんとお会いしましょう。

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