書き出し小説大賞第244回秀作発表

へその穴に夏の光を溜めたまま、秋を寝る。

タカタカコッタ

その台風は、各地に虹をもたらした。

タクタクさん

「マスクばっかしてるとさあ、息のしかた忘れちゃうよねー」君が吹くシャボン玉に空が映る。

Sugar toy soldier

始業式。燃える百葉箱。

寂寥

戻ってきた定規には、サインペンの痕が残っていた。

朝礼

左利きなのに箸だけは右で持っていることを指摘されて、私は、毒親からは一生逃れられないのだと気がついた。

ハヤタ隊員

もうこれが恋でいい。

正夢の3人目

髪を切って変わる世界があるのなら、僕を愛して変わる世界もあるんじゃないか！

薄荷飴

鳴り止まない銃声に怯えながらも、アンナはモンゴノとの連弾を思い出していた。

みよおぶ

スヌーズの間だけの夢。あの子はずっと逆光の中で笑っていた。

みよおぶ

「なぜそこまでするのさ？」「理解したいからだよ」「何をそんなに分かろうとしているのさ？」「それを知りたいんだよ」

あの

パワースポットの脇をタクシーで通り過ぎる。

井沢

熊に追いかけられても、紅葉は美しい。

ウチボリ

自分のパンツのデカさに、毎朝笑ってる。

葱山紫蘇子

唇より先に触れ合った。

吉田髑髏

メタルフレームが光った瞬間、嘘がバレた。

人馬一体勘

眼鏡についたマスカラを拭きながら、アヤは別れ話を上の空で聞いていた。

げたのにつけ

世界の輪郭をあやふやにする、一夜の過ちも溶けていく。

セレン

べ、別にあんたを良くみる為に老眼鏡かけてるわけじゃないんだからね。

八王寺義昭

あれ、お兄ちゃん。今日、勝負メガネだ。

オメガ

快速で忘れた眼鏡が遠ざかる。

ぐるりん

プールの底に、眼鏡がひとつ。

morin

土砂降りよりも風に舞う霧雨が憎い。幽

自転車通学を思い出す。

なぜか、田中は視力検査の時のメガネをいつも掛けている。

八王寺義昭

またお前か！割れたメガネをかけ直して男はまた同じ台詞を吐いた。

longroof

卓球部全員、ビンタで眼鏡が飛ぶ。

ろっさん

「近視？ 遠視？」「伊達」初めての会話は失敗に終わった。

もろみじょうゆ

彼女はメガネを「脱ぐ」と言う。

suzukishika

あたしジョン・レノンになりたかった。視力は悪くなかった。

suzukishika

その中指がいいんだよ。

なまらあつし

轟音をたてて眼鏡が落ちる。「おっと、いけない」師匠はひょいと拾って掛け直した。

七世

君は眼鏡を押し上げ、泣きぼくろが顔を出した。

七世

眼鏡を軍手で拭いた。

寂寥

私より眼鏡が似合う柴犬だ。

若葉猫

いつでも捜しているよ、どっかで外したメガネを。

g-udon

祖父はZoffだった。

g-udon

わらしべ交換の最後は全く度数の合わない眼鏡で終わった。

prefab

『鴨のソテーのブルーベリーソースがけ 高身長ウエイターに眼鏡を添えて』

カズタカ

そのメガネをつけた途端、乳首と肝臓の色が見えた。

ミミズグチュグチュ

「そうか、わかったぞ！」吉田はメガネを輝かせたが、何もわかっていなかった。

ウチボリ

メガネだけが竜巻に巻かれ上空へと消えた。

タカタカコッタ

派手に転んで、メガネだけがゴールした。

南極行太郎