【寺キャンプ】坐禅もサウナも車中泊もできる “なんでもあり” のユニークキャンプ場「大泰寺」を体験してきた!

ロケットニュース24

日本には古くから「宿坊」という宿泊施設がある。寺院に設けられた簡易的な宿で、あくまで参拝者のための施設だからレジャースポットではない。

が、お寺でキャンプをしながら坐禅やリバーサイドサウナまで体験できてしまう場所がある。普通のキャンプでは物足りなくなったあなた、こんなユニークなアウトドア体験はいかがだろうか。


・「Temple Camp 大泰寺」

まずはキャンプ場を見ていただこう。熊野古道沿い、マグロで有名な勝浦漁港からもほど近い和歌山県「大泰寺」。

平坦な土の空間が広がり、オートキャンプ(テントキャンプ)の利用者は木立側、RVパークの利用者は電源のあるブロック塀側にスペースが用意されている。

筆者は今回はキャンピングカーなのでRVパーク利用。周囲には竹林が広がり、鳥の声がにぎやかだ。

元・保育所の建物にある水場とトイレ。別の場所には家庭のトイレと変わらないくらいピカピカの水洗トイレもある。ゴミは配布された指定ゴミ袋に分別しておけば、チェックアウト時に回収してくれる。


……と、ここまでの紹介だけでは普通のキャンプ場と、どこが違うかわからないだろう。


キャンプ場のすぐ隣に位置する大きな建物……


なんと、ここは坐禅堂である! 線香だろうか、「お寺の匂い」がほんのりと鼻腔をくすぐる。


そしてキャンプ場から仰ぎ見る建物はお寺の本堂。境内には薬師堂や各時代の仏像があり、開創1200年という由緒正しい寺院なのである。

建物内では「宿坊」も営んでおり、アウトドアが苦手な人はそちらも利用できる。


宿坊利用者のフリースペース。キッチンも使える。


勝手ながら筆者の脳内で「宿坊」といえば、相部屋であったり、ささくれた古畳の和室であったり、とにかく古く質素なイメージしかない。ところが、こちらはどこも広々として開放的で、モダンなインテリアでまとめられている。おしゃれにリノベした古民家といった趣(おもむき)である。

それでいて、宿泊スペースから渡り廊下をたどるとすぐに正真正銘の本堂だ。「お寺の中に宿泊している」ことに間違いない。


さらに、キャンプ場から小道を下っていくと、太田川の清流がある。


リ、リ、リ、リバーサイドサウナ! ここは本当に寺か!?


訪問したのは11月末である。北海道や東北では初雪の声も聞こえる中、サウナテントで温まった人々は川へザブン! めちゃくちゃ楽しそうだ!! この日も立て続けに予約が入っているようで大人気だった。(2時間1人3000円)

実は筆者、今回のRVパーク利用にあたって「誰もいないお堂、墓地、うっそうとした境内……GANTZみたいに仏像が動いたらどうしよう」と不謹慎なことを考えて、わざわざ予約日を人が多そうな休日にするほどだったのだが、どこも明るい雰囲気で、実に風通しがいいのである。


かつてお寺は子どもの遊び場であり、地域の人が日常の困りごとを相談する場であり、寺子屋に代表される学びの場であったという。前述のとおり、大泰寺の敷地内にも保育所があった。


そんなかつての「開かれた寺院」を目指して、キャンプ場&RVパークを開設したのだとか。子どもたちの明るい声が聞こえる場所になったほか、宿坊として生活備品が整っているため避難所としての役割も果たし、おまけに獣害の防止にも役立っているという。


・お寺体験

滞在中はさまざまな宗教体験が可能。筆者は「写経体験(1000円)」に挑戦! ほかに「坐禅体験(1000円)」や「朝粥体験(1500円)」「仏像鑑賞ツアー(無料)」がある。

用紙には書くべき文字が浮かび上がっており、筆記用具も筆ペンなので、初めてでも問題なく取り組める。およそ1時間、一心不乱に取り組む。


ただ目の前のことに向き合う……。過去の失敗や、未来への不安にとらわれず「今ここ」に集中する禅の思想は、「マインドフルネス」という技法に姿を変えて世界のトップ企業に取り入れられるのだが……

筆者の心中に去来していたのは「漢字の書き順わかんないな」「ヤバい、お腹鳴る」「絶対にバレないと思ってやっていた2度書き、習字の先生はどうして見抜けたんだろう」といった雑念ばかりだった。

夕方には「鐘つき体験(無料)」ができる。夏季18時、冬季17時から、ご住職と一緒に坂を登る。有事には集落に異変を知らせるため高台に作られ、戦時中の供出も免れたという。

ついてみると、ゴオォォォンという大きな音の後に、周囲の空気が共鳴するような不思議な揺らぎを感じる。すがすがしくも、どこか郷愁を感じる切ない音色だ。

鐘つきも終わると、周囲のテントからバーベキューの美味しそうな匂いが漂ってきた。そろそろ夕食時である。さっそく筆者も……といいたいところだが、それは叶わない。


なぜなら。


筆者は各地のRVパークを拠点にキャンピングカーで旅をしている最中だった。多くのRVパークは「駐車場」なので、野外調理は禁止だ。

ゆえにガスコンロ、焼き網、ホットプレートなど大型のキャンプ道具は家に置いてきた。積荷の軽量化は安全走行のためにも燃費のためにも重要なのだ。

しかしここ大泰寺では、RVパーク利用者でも自分のサイト内に余裕があれば焚き火や野外調理が可能。車が大きい場合は、2サイト予約することでタープを張ったり、焚き火で調理したりできる。

あああぁぁぁぁ、なぜキャンプ場でレトルトハンバーグ!!


ふりかけご飯、オイシイナ……


ちなみに、近くにはクジラ漁で有名な太地町「道の駅たいじ」があり、生鮮食品は多くはないものの、マグロのブロックやクジラ加工品を扱っていた。珍味を持ち込むのもよさそう。


・坐禅体験

翌日は早朝から坐禅堂で坐禅体験(時間は応相談)。しっかりしたクッションを使うので、足がしびれて立てなくなるといった心配はまったくない。筆者の体験時は15分×2回セットで、ご住職のお話も入れると1時間ほど。

温暖な和歌山とはいえ、早朝は防寒着が必要なほど寒い。しかし坐禅をしているあいだは、まったく寒さを感じない。休憩の声かけで足を崩した瞬間に「さむっ!」となるのだ。これは不思議!

希望者は警策(棒で肩を打つこと)をいただくことも可能!

坐禅堂で使っている分厚いクッションは、災害時に寝具にもなるもの。過去には大きな水害もあり、地域の人の避難場所としての役割を強く意識しているのだそう。ほかにも「禅とサウナの共通点」など興味深いお話が聞けるので、気になったことはぜひご住職に質問してみて欲しい。


・「寺キャン」はいかが?

キャンプ場はRVパーク5区画、オートサイト4区画、合計9区画と、決して大規模ではない。けれど、写経をしたりサウナで整ったり満天の星空を眺めたり、ぎゅぎゅっと凝縮した密度の濃い時間を過ごせる。


そしてお寺全体を貫く「自由な雰囲気」が気持ちいい。もちろん夜は静かにするなどキャンプ場としての基本的なマナーはあるが、どの体験でも「仏教ではこれはダメです」といったルールを押しつけられることがまったくなく、オープンなマインドが感じられる。ご住職の人柄が強く反映されているのだと思われた。


キャンプ文化も成熟し、きっとこれからは付加価値を求める「キャンプ+α」の時代になる。「お寺でキャンプ」こと「寺キャン」、心の底からオススメである!


・今回ご紹介した寺院の詳細データ

名称 大泰寺(公式サイト公式Instagram
住所 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町下和田775
料金 オートサイト、RVパークともに1泊3000円(税込)


執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

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