ラオックス 、新業態「アジア食品専門店」で国内需要喚起:インバウンド消失の打開策

DIGIDAY

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コロナ禍による出入国の制限は、日本経済にも大きな打撃を与えた。なかでも、インバウンド消費が売り上げを支えていた企業・ブランドにとっては大きな痛手となり、各社が生き残り策を模索している。

免税店を主力とするラオックスも、例外ではない。インバウンド消費を失った同社が国内需要の喚起をねらって打ち出したのが、2つの新業態。そのひとつが、東京・吉祥寺に11月25日にオープンした、アジアの食材・食品・飲料の専門店「亜州太陽市場(あしゅうたいよういちば)」だ(12月3日にはアジアコスメの専門店「LAOX BEAUTY AIRPORT」を東京・自由が丘店にオープン予定)。海外に行きにくい昨今の状況を踏まえ、現地でしか味わえない「アジアらしさ」を随所に落とし込んでいるのが特徴だ。アジアの街並みやナイトマーケットなどをイメージした店内には、日本では手に入りにくかった商品も揃えた。

「本場、本物のアジアの味を日本の食卓へ」をコンセプトにした約134平方メートルの店舗内には、中国・台湾・韓国・ベトナム・タイ・インドネシアなどアジア12カ国・地域の商品1400点以上を並べた。麺類200種類や、調味料240種類をはじめ、菓子140種類、冷凍食品100種類、ソフトドリンク100種類、アルコール80種類などをラインナップした。「現地の人々が実際に食べているものを厳選した」(ラオックス広報)といい、日本でも馴染みのある商品に加え、中国・光友のインスタントラーメンや、台湾の夜市で提供される黒橋のソーセージなど、日本国内ではほとんど流通していない希少性の高い商品も仕入れた。食べ歩きを想定したテイクアウト商品も充実させている。

「アジアの食材・食品へのニーズが高まっていることと、多様な国籍・地域でビジネスを展開している我々ラオックスグループの強みが、今回の新業態開発の背景にある」と話すのは、ラオックスの代表取締役社長CEOの飯田健作氏。同氏は新業態のオープンを前に、店舗の見どころやオンラインストアとの相乗効果、今後の展開などについて報道陣に語った。以下に囲み取材のやり取りをまとめた。なお、読みやすさを重視して、一部編集してある。

ラオックスの代表取締役社長CEOの飯田健作氏

――新業態の場所に吉祥寺を選んだ理由は?

亜州太陽市場は、インスタント麺やスナックなど1人で楽しめるものもあるが、「本場、本物のアジアの味を日本の食卓へ」をコンセプトとしており、調味料や食材など、家庭で調理することを想定した商品も数多く揃えている。ファミリー層の居住人口が多い場所であることが非常に重要であり、その点において吉祥寺は、新業態の狙いと重なった。

――亜州太陽市場の見どころは?

すべてのカテゴリーにおいて、日本でよく知られている商品もあれば、目にしたことのない商品もあるはず。新しいものを発見してもらえる品揃えの深さこそが我々の強みだ。また、店舗のコンセプトとして、アジアのナイトマーケットのスタイルを採用している。私たちは2年間にわたり閉塞した状況のなかにいる。ポップで混沌としたアジアの楽しい雰囲気を思い出してほしいという思いがあり、店舗の照度を意図的に上げた。原色でカラフルな商品パッケージもアジアならではのムードを創出している。

スタッフが手書きした店舗内のPOPにも注目してほしい。多様な地域・国籍のスタッフがそれぞれ現地での食材の使い方・食べ方について説明している。アナログではあるが、日本にいるとなかなか知ることのできない深い洞察があり、ぜひ読んでほしい。

――客単価はどれくらいを想定している?

扱う商材が重なっている店舗として、アジアの食品とコスメを販売する京都のラオックス河原町OPA店がある。客単価は、その店舗より数割上がると見ている。また、購入ペースも上がると見ているが、その点については我々がもっとも仮説・検証していきたいポイントでもある。

カラフルなネオンや多言語表記などでアジアの街並みやナイトマーケットの情景を再現した

――吉祥寺には似たような商材を扱う競合店も多いが、どう差別化するか?

たとえば韓国食品の専門店など地域・国ごとの専門店はあるが、我々の店舗は、アジア全体の食に焦点を当てている。「アジアのワンストップ・グローサリーストア」という位置づけだ。我々が一番に重視しているのは、顧客のニーズにフォーカスし、そのニーズをどれだけビジネスに反映させるかということだ。競争優位性より、我々のこだわりを重視しているので、競合店という意識は持っていない。

――多店舗展開は考えている?

データと顧客ニーズを深く分析・理解しながら、少なくともあと数店舗はオープンする計画だ。場所については未定だが、商圏は吉祥寺と同様、ファミリー層の居住人口が多い場所を数カ所検討していく。ファミリー層の通過人口の多い場所もあるが、顧客が購入したものを持ち帰るのに荷物がかさばったり、持ち運ぶのに苦労するかもしれないので、想定していない。

――ロングテール型の商品も出てくる可能性があり、EC展開の方が向いているのでは?

私がオムニチャネルのビジネスに長年携わってきた経験上、ECと実店舗は、カニバルよりもシナジー効果が期待でき、ともに成長する可能性の方が高い。そのなかでロングテール商品が生まれれば、ECの方がより伸びてくることもあるだろう。ECは大量注文も楽にできるなど利便性の高さもあるため、実店舗との使い分けも進むと見ている。

――既存店との相乗効果は?

現在営業している既存店は、京都のラオックス河原町OPA店と東京のラオックス秋葉原本店の2店舗だ。河原町OPA店については、コンセプトは異なるが、扱う商材が重なっている。今年7月にオープンして以来好調に売れ行きを伸ばしており、固定客もついている。その強みを新店舗でも再現できればと考えている。秋葉原本店は構造改革中であるため、今のところ、相乗効果は見込んでいない。

――免税店の4店舗が休業中だが、再開の目処は?

コロナ禍が収束するまで、再開の見通しは難しい。だが免税店というビジネスは我々が約10年間培ってきた強みでもある。今はスイッチを切っている状態だが、いつでもスイッチをオンにする準備はしている。あとはタイミング次第だ。

Written by 戸田美子

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