Reuters
米コミックのヒーロー、キャプテン・アメリカの盾を持って香港の民主化デモに参加していたことから「キャプテン・アメリカ2.0」と呼ばれていた活動家が11日、香港国家安全維持法(国安法)違反罪で約6年の禁錮刑を言い渡された。
馬俊文被告(31)は、香港の独立を訴えるスローガンを唱えて中国の分裂をあおったとして、香港の裁判所で禁錮5年9カ月の実刑判決を受けた。
デモで掲げたプラカードや、メディアのインタビューの内容についても罪に問われていた。
裁判官は馬被告について、悔恨の念がまったくみられないと批判した。
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国安法で有罪判決を受けたのは2人目。同法は2019年の抗議デモを受け、昨年成立したもので、香港の自治を狭め、活動家を処罰しやすくしている。
中国政府は同法について、香港の安定のために必要だと主張している。一方、同法に批判的な人たちは、香港の反体制派を弾圧するためのものだと訴えている。
「後悔はまったくない」
法廷ではこの日、判決が言い渡される前に、馬被告が裁判官に宛てて書いた文書が読み上げられた。
ロイター通信によると、被告はその中で、「後悔はまったくない」と表明。
「民主主義と自由に向かっている私は、腰抜けになどなっていられない」とした。
被告側弁護士の1人、クリス・ン氏は記者団に、控訴するかはわからないと話した。
多数を拘束・訴追
香港では2019年、香港住民を中国本土に送還しやすくする法案が提出されたことを受け、市街地でデモが起こった。デモは民主化運動へと広がり、2020年も続いた。
この抗議デモへの対応として中国政府は国安法を整備したと、多くの人はみている。中国当局は、反体制派を容易に拘束することを狙っているとも言われている。
香港当局は国安法の成立後の1年で、民主派の政治家、活動家、ジャーナリスト、学生など117人を同法に違反したとして拘束、60人以上を訴追した。
その後も訴追は続き、天安門事件(1989年)の犠牲者追悼集会を毎年主催してきたことで知られる団体のメンバーらが対象となった。
言葉について判断
国安法違反をめぐる最初の裁判は今年7月に判決が出され、元ウェイターの唐英杰被告(当時)が分離独立とテロ行為を扇動した罪で有罪となった。その後、禁錮9年が言い渡された。
裁判では、バイクで警官たちの中に突っ込み、抗議のスローガンが書かれた旗を掲げたと認定された。
このケースと異なり、馬被告の事件は暴力が絡んでおらず、言葉による行為を基に裁かれた。
馬被告は、「香港を解放せよ、私たちの時代の革命だ」、「香港独立、それが唯一の道だ」などのスローガンを唱えたとされる。
人権団体アムネスティ・インターナショナルは、今回の判決を「とんでもない」と評している。
「香港政府は『国家の治安を脅かしている』という言葉の定義を際限なく広げるのをやめなくてはならない。政府にとって気に食わないことを言う人たちを閉じ込める手段になっている」と、同団体のカイル・ウォード事務局次長は話した。