完全な形での五輪実施は不可能 – 上田令子(東京都議会議員江戸川区選出)

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ブルーインパルスが東京の空に五輪を描き東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が今夜開幕いたします。

▲都庁聖火リレー到着式

3期目に臨む東京都議会議員として、地域政党自由を守る会代表として、東京五輪に関して厳粛な思いで見解を改めて述べさせて頂きますので、是非ごご一読下さいませ。

東京2020オリンピック競技大会の開幕にあたって

地域政党自由を守る会 代表 上田 令子

【これまでの経緯】

 本日、東京2020オリンピック競技大会(以下、「東京五輪」)が開幕し、天皇陛下のご臨席のもと、国立競技場において、開会式が催されます。1964年10月以来、57年ぶりの東京大会となります。

 まずは、パラリンピック競技大会を含め、各国から集ったアスリートの活躍と33競技339種目全てが無事に終了することを心より祈念するものです。

 今回の東京五輪は、世界的な新型コロナウイルス感染症の蔓延という過去に経験のない特殊な状況で実施されなければなりません。日本国内の死者数は1万5千人を超え、東京都内においては連日、4ケタを超える感染者が判明しています。選手村を含む五輪関係者からも感染者が続々と判明しており、選手村の開村式・入村式は見合わせざるを得ない状況です。

 そこで、本会は本日の開幕にこだわらず「いったん立ち止まること」を小池湯百合子知事らに求め続けてきました。ところが、感染状況に改善がみられないまま、これまで最大の感染者数に至るといわれる第5波を迎えているのに、本日の開幕に至ったことは遺憾ではありますが、現実的判断から、無事な終了を求めて、大会運営を見守るとともに、事後の検証を求めていくことといたしました。

【変質していった“東京五輪”の理念】

 さて、今世紀に入り、スポーツ界をはじめ各界から五輪開催を求める声が拡がりました。これを受けて2006年、当時の石原慎太郎都知事は2016年の夏季五輪の招致方針を表明し、都議会も3月に招致決議をしました。

2009年10月、コペンハーゲンでのIOC総会において東京は落選し、2016年の招致はなりませんでしたが、2011年6月に石原知事は再びの招致を表明し、10月に都議会は招致決議を行いました。招致活動は、猪瀬直樹知事に引き継がれ、2013年9月、ブエノスアイレスでのIOC総会において2020年7月から東京での五輪・パラリンピック開催が決定し、日本国内は歓喜に包まれました。

 東京五輪は、近年の肉体の鍛錬や健全育成を強調する「体育」からレクリエーション活動としての「スポーツ」への質の変化に向けた動きを象徴する大会となるものと期待されています。招致にあたっては、「コンパクト五輪」、「復興五輪」などのコンセプトが訴えられましたが、現在、見る影もありません。

また、近年のオリンピック・パラリンピック競技大会では「多様性と調和」が謳われていますが、開幕直前になっても、これに反する事態が続々と発覚しています。さらに、IOCのトーマス・バッハ会長が「ジャパニーズ・ピープル(日本の人々)」と言うべきときに「チャイニーズ・ピープル(中国の人々)」と発言したことについては、単なる言い間違えでは許されず、民族意識を毀損し、自決権を踏みにじるものとして、許されません

都政の足元を見れば、学校現場や児童施設において、運動中の事故や教職員や指導者による体罰・暴言・セクハラ、明らかな加害暴力行為により、児童・生徒が重度の後遺障がいを負わされる等五輪憲章に悖る体育・スポーツの名を借りた犯罪・違法行為が後を絶ちません。

学校連携観戦について、コロナ禍に加えて、猛暑が予想される中、パラリンピックについては実施の方向で動いています。このような意識、実態では、「お上から市井」まで、日本社会において「体育」から「スポーツ」への質の変化は、まだまだ途半ばといわなければなりません。

【ダッチロールに陥った小池都政】

 開幕された以上、感情的な批判は控えますが無事終了に向けての協力を惜しみませんが、新型コロナ感染拡大をめぐる厳しい現状をみるにつけ、医療体制の確保と医療従事者をはじめエッセンシャルワーカーのみなさまの持ち場、持ち場でのご尽力を片時も忘れてはいけません。このようなご尽力無しに、大会運営はままならないことを厳命すべきです。

また、当初、語られていた「金まみれのオリンピックの見直し」は、いつしか小池知事はじめ運営側からは聞かれなりなりました。900億円以上と目されてきた入場券収入のほとんどが、無観客開催により返金されることになります。これ以外にも、五輪開催に向け、スポーツ施設のみならず都市基盤整備に多額の投資が都、区市町村、国問わず、湯水のように投資されてきました。

コロナ対策により、東京都民共有の貯金である財政調整基金は、いつ何時、底をついてもおかしくない状況に陥っていますが、小池都知事はこの点に関しての説明を拒み、報道機関も都民に全く周知しておりません。今後のコスト負担や財政状況への危惧を強く持ち、警鐘を鳴らすものです。

 ところが、小池知事は、開幕直前の大会準備・実施判断をしなければならないホストシティとして最も肝心な時期に、過労により入院し、副知事を職務代理者にして、10日余りにわたり第一線から離れたばかりか、退院直後に自らの与党である都民ファーストの会公認の都議候補の応援に都内十数か所を回りました。ガバナーとしての優先度が、全くのあべこべになってしまっており、開催都市の首長としての適格性に大きな疑問符を付けざるを得ません。

 もはや、今回のオリンピック・パラリンピック競技大会は、「完全な形」での実施は不可能です。本会は、アスリートの思いを心に深く刻みつつ、コロナ対策については常に最悪の状況を想定して万全を期しつつ、都民・国民の生命・健康を守り抜くためには、時宜に応じ、感染拡大防止に向け、一部競技・イベントの中止・延期を含め、あらゆる選択肢、判断を念頭に、柔軟な大会運営、迅速かつ最適な対応を強く求めます。

【五輪を通じた歴史をふまえて】

最後に、令和のアスリートが活躍する新国立競技場は、旧国立競技場を長寿命化せずに解体され設計変更等紆余曲折を経て建設されました。昭和18年10月21日、全国の学生たちが戦争に駆り出され、学徒出陣の壮行会が、明治神宮外苑競技場(旧国立競技場)で催されました。

旧制高校生だった私の父も学徒出陣する大学生の兄を見送りに行ったと聞きました。先の戦争では、オリンピック選手や野球選手も含め多くの若い命が戦争によって奪われました。若者の無念さ、理不尽な思いはいかばかりだったでしょうか。こうした大きな犠牲と不条理を経て、今日の日本があります。

 なお、私の地元江戸川区からは、白血病を乗り越えられた池江璃花子選手が出場します。すべてのオリンピック・パラリンピック選手に心からのエールを送るとともに、国民の命を奪い続けた政治の末席にいる者として、命と自由を守る都政を、地域政党自由を守る会はお約束いたします。

令和3(2021)年7月23日

以上

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