「全世界で年間18万人以上が糖分を含む飲み物の過剰摂取で死亡している」と報告されるなど、砂糖が入った飲み物は健康によくないことが知られています。しかし、2021年9月に米国医師会が発刊する医学雑誌・JAMA Network Openに掲載された研究により、砂糖が入っていないダイエット飲料にも、食欲をかきたてて体重の増加の一因になってしまう作用があることが分かりました。
Obesity and Sex-Related Associations With Differential Effects of Sucralose vs Sucrose on Appetite and Reward Processing: A Randomized Crossover Trial | Nutrition | JAMA Network Open | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2784545
Artificial sweeteners in drinks may increase food cravings and appetite, study reveals
https://www.news-medical.net/news/20210928/Artificial-sweeteners-in-drinks-may-increase-food-cravings-and-appetite-study-reveals.aspx
Diet soda may increase hunger and weight gain : Shots – Health News : NPR
https://www.npr.org/sections/health-shots/2021/10/07/1044010141/diet-soda-may-prompt-food-cravings-especially-in-women-and-people-with-obesity
砂糖が入っていないのに甘い炭酸飲料と同じ味わいのダイエット飲料は、砂糖が大量に入った清涼飲料水より健康的な選択肢として認識されており、アメリカでは大人の40%が甘い物が食べたくなった時や減量のために人工甘味料を摂取しているといわれています。しかし、ダイエット飲料に入っている人工甘味料には「耐糖能異常を引き起こして糖尿病の原因になる危険性がある」など健康によくないという研究結果も報告されていることから、砂糖と人工甘味料のどちらが健康的なのかは専門家の間でも意見が一致していません。
人工甘味料が耐糖能異常を引き起こして糖尿病を引き起こす可能性 – GIGAZINE
by Brayan Esteban Esparza Gonzalez
また、人工甘味料と健康の関係についての研究は、参加者が男性や標準体重に偏っていることが多いのも、問題として指摘されています。そこで、アメリカ・南カリフォルニア大学の肥満専門医であるケイティ・ペイジ氏らの研究チームは、女性43人を含む合計74人の被験者らに「ショ糖入り飲料」「人工甘味料のスクラロース入り飲料」「水」を飲んでもらう実験を行いました。この実験には、BMI値が19と標準的な体重の人から、重度の肥満であるBMI値が40の人まで、さまざまな体形の人が参加しました。
研究チームが飲料を飲んだ後の参加者の血液を採取して分析したところ、「人工甘味料入り飲料」を飲んだ人は「ショ糖入り飲料」を飲んだ人に比べて満腹感を刺激するホルモンのレベルが低く、ダイエット飲料は空腹をまぎらわせる効果があまりないことが確かめられました。
また、参加者の脳をfMRIで調べたところ、特に女性と肥満の人が「人工甘味料入り飲料」を飲むと、「ショ糖入り飲料」を飲んだ場合に比べて食欲をつかさどる脳の部位の働きが活発なことも判明しました。一方、男性や健康な体重の人は、どの飲料を飲んでも脳の活動に有意な影響はなかったそうです。さらに、検査後の参加者にビュッフェで食事をしてもらった結果、男性の参加者は実験で飲んだ飲料の種類と食べた量の間に関係がなかった一方で、「人工甘味料入り飲料」を飲んだ女性の参加者は「ショ糖入り飲料」を飲んだ女性より食べた量が多かったとのことです。
ペイジ氏はこの研究結果について、「肥満の人や女性のグループでは、人工甘味料が入った飲み物を飲むと空腹を感じてしまう可能性があり、その結果より多くのカロリーを摂取することになることが示唆されました」と述べました。
アメリカのニュースサイト・NPRの取材を受けたカリフォルニア大学サンフランシスコ校のローラ・シュミット教授によると、人工甘味料が食欲を刺激してしまうのは、「実際にはカロリーを摂取していないのに甘い物を食べたと錯覚するから」という仮説があるとのこと。
今回の研究には参加していないパデュー大学の行動科学者のスーザン・スウィザーズ氏は、取材に対し「甘い味がしたら糖分が摂取されたと脳が認識し、人の体は糖の代謝の準備を始めます。しかし、ダイエット飲料だと実際に糖が入ってくることはありません。そのため、脳は次に甘さを感じたときに実際に糖が入ってくるかどうかの判断がにぶり、代謝を低下させてしまっている可能性があります」とコメントしました。
また、「ダイエットを目指す人は人工甘味料入りのダイエット飲料を飲まない方がいいと思いますか?」という質問に対して、シュミット教授は「2週間ほど完全にダイエット飲料をやめて、高カロリー食品への欲求を我慢できるかどうかを試してみるといいかもしれません」と答えました。
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