武漢ウイルス発生源解明は可能だ

アゴラ 言論プラットフォーム

海外中国メディア「大紀元」の動画ニュースで調査ジャーナリストとして著名なシャリー・マークソン女史(Sharri Markson)とのインタビューを聞き、「武漢発の新型コロナウイルスの起源の解明は可能だ」という印象を受けた。マークソン女史は今年、新著「武漢で現実に起きたこと」(What Really Happened In Wuhan)を発表、世界的に大きな反響を与えている。

世界で大きな反響を呼ぶシャリ・マークソン女史の新著「What really happened in Wuhan」(クリックするとリンクに飛びます)

当方の楽観的な期待は、中国共産党政権が突然改心して、世界で500万人以上の死者を出した武漢発新型コロナウイルスの起源解明に協力することを願うからではない。中国共産党政権の協力など期待していたら、起源捜査は偽情報の中で迷宮入りするのは間違いない。そうではないのだ。武漢ウイルスの起源解明の物的証拠や情報は中国だけが握っているのではなく、米国、フランス、英国、オーストラリアらの国にもあるのだ。国際社会が武漢ウイルスの起源解明で協力しあうならば、解明が可能だということだ。

21世紀はグローバル社会であり、多様性は時代のアイデンティティとなっている。そこに武漢ウイルス起源の解明の可能性が秘められているのだ。中国共産党政権は世界の覇権を握るために世界のグローバル化を巧みに利用し、最新の科学技術、情報を手に入れてきた。武漢ウイルスはそのグローバル化の恩恵を受けて誕生してきたのだ。それゆえに、というべきか、国際社会はそのグロバリゼーションの痕跡を辿ることで、武漢ウイルス発生の起源を解明できる道が開かれるわけだ。

新型コロナウイルスの起源については、中国の武漢ウイルス研究所(WIV)で研究され、それが何らかの理由で流出した説と、コウモリのウイルスが宿主の生き物を通じて人に感染し、ヒトからヒトへと拡散していったという2通りの説がある。世界保健機関(WHO)の1回目の武漢ウイルス現地調査では後者の説が有力で、前者は「可能性がかなり低い」と評価された。ただし、WHO報告書が公表された後、テドロス事務局長は7月15日の記者会見で、これまでの中国寄りのスタンスを修正し、WIV漏洩説についても調査が必要だと表明するなど、軌道修正を行い、中国側に2回目の調査を要請している。北京からはいい返事が届いていない(「WHO調査団長エンバレク氏の証言」2021年8月22日参考)。

米国情報機関は先月、バイデン大統領の要請を受け、武漢ウイルスの起源調査を行った結果を発表したが、新型コロナウイルスはウイルスに感染した動物からヒトに感染したという自然発生説とWIV流出説の2つの説を列挙するだけに留まり、「決定的な証拠は見つからなかった」という。

調査ジャーナリストのマークソン女史は武漢ウイルスに関する膨大な専門書、学術論文を読破し、政治家、ウイルス専門家へのインタビューを通じて、「武漢ウイルスは遅くとも2019年9月中旬、WIVから流出した」という結論に至っている。

中国は世界の最新の科学技術、知識を短期間で吸収するために対外宣伝機関「孔子学院」や海外ハイレベル人材招致計画「千人計画」などを利用してきた。武漢ウイルスの研究も例外ではない。世界最高水準の安全基準を有するWIVはフランスのウイルス学者の協力で建築された研究機関だ(完成後、フランス人学者はWIVから追放された)。

ウイルスの機能獲得研究、遺伝子操作の痕跡排除技術は米ノースカロライナ大学のラルフ・バリック教授、そして英国人動物学者で米国の非営利組織(NPO)エコ・ヘルス・アライアンス会長のペーター・ダザック氏らとの共同研究で中国側が獲得していった内容だ。ダザック氏らは米国の税金をWIVのコウモリ研究に支援してきた。米国の感染症対策のトップと言われるアンソニー・ファウチ博士も、WIVと関係を有してきたといわれている。ちなみに、機能獲得研究とは、ウイルスの感染力、致死力をアップするための研究で、ウイルス学者からは「非常に危険な研究」といわれてきた。米国のオバマ政権はその研究を禁止したが、数年後、再び許可されたという。ファウチ博士はウイルスの機能獲得研究を支持していたという。

欧米メディアで「コウモリの女」と呼ばれている新型コロナウイルス研究の第一人者、石正麗氏は米英学者と共同で研究をしてきた。石正麗氏は「コロナウイルスの父」と呼ばれるバリック教授やダザック氏との共同研究で遺伝子工作の痕跡削除技術を取得した(ダザック氏はWHO第1回武漢調査団の一員に加わり、WHOの現地調査を巧みにコウモリからの自然発生説に誘導した張本人)。

中国共産党政権下にある石正麗女史には武漢ウイルスの起源解明は期待できないが、上記の2人の学者は米国に住む専門家であり、武漢ウイルスで石正麗女史と共同研究をしてきた学者だ。ダザック氏は15年間あまり、WIVと共同研究をしてきた。それだけではない。マークソン女史の出身国オーストラリアでは今年1月、同国の科学者や研究者など最大600人が「千人計画」の対象となっていることが、連邦議会に報告された調査で明らかになっている。すなわち、武漢ウイルスの発生に直接的、間接的に関与した学者が欧米に多数いるわけだ。

最近明らかになった情報としては、①2019年11月、3人のWIV研究員がコロナに感染していた可能性があること、②19年9月12日、WIVで保管してきた膨大なウイルス関連情報のデータベースが突然、オフラインとなった、③WIV周辺の5カ所の病院の駐車場に同時期、普段より多い車両が駐車していたことが人工衛星の写真分析で判明、④WIVは19年9月以降、P2、P3の研究所の安全管理が不十分であることを認め、メンテナンスの改善、換気設備の新設などを行っている。

マークソン女史はインタビューの中で、「中国人民軍と密接な関係を有しているWIVに、米国から膨大な資金が援助されてきたことに米国政府は深刻にならなければならない」と警告を発している。興味深い情報としては、中国政府が2011年、国連の生物兵器禁止条約(BWC)に「人工合成ウイルス」と書かれた文書を提出したが、その文書には特定の民族、DNA、遺伝子だけをターゲットとするウイルスの製造開発について記述されていたというのだ。

中国共産政権は武漢ウイルスの発生源が明らかになれば大変だから、様々なフェイクニュース、情報工作を繰り返し、国際社会の結束、連帯を崩してくるだろう。架空のスイス生物学者を登場させて、米国批判をするぐらいお手の物だろう。中国共産党政権と共同で生物兵器を研究していた西側の学者がいれば、その事実が暴露されることを警戒し、中国側の真相隠ぺい工作を支援するだろう。

マークソン女史の武漢ウイルス起源調査活動はわれわれに「武漢ウイルスの発生源は必ず解明される」という確信を与えてくれる。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年11月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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