不動産の高騰はどこまで続くのか

アゴラ 言論プラットフォーム

2021年の首都圏の新築マンションの平均価格は6260万円でバブル期を超えた、とあります。近年の流れをざっくり言うと2000年代初頭に大量供給時代のピークとなり、首都圏では年間8万戸を超える供給がしばし続きました。当時ですら将来、日本の人口がさほど増えないことを意識し始めていたのになぜ、そんなにたくさんのマンションが生まれたかといえば「ライフスタイルのチェンジ」がマーケティング的にうまく乗せられたのだと記憶しています。

Juergen Sack/iStock

第一次取得層はより駅近でショッピングセンターもある便利な大規模開発に強い興味を示し、リタイア層は駅から遠く、バス便などの不便さも嫌い、戸建てから便利なマンションを選びます。マンションは階段の上り下りも少ないし、セキュリティもしっかりしている点で全ての人に魅力的な不動産に映ったのです。

が、いかんせん、作り過ぎたきらいはあります。その頃のマンション価格はバブル期の6000万円から長期推移でみると大底となる4000万円になります。ここからデベロッパーは供給の絞り込みが始まり、年間供給戸数はこの20年で半分以下となり、22年も3万戸プラスの水準になると予想しています。

供給減なので当然、需給は締まり、価格は上昇する自然の法則に沿っています。また、デベロッパーにとって新築住宅のコスト増も大きな負担要因になっています。建築資材のあらゆるものが値上がりしたため、デベロッパーのコストは当然上昇しています。更に金利が異様に低いことで住宅ローンを組みやすいことも追い風となりました。

では世界で最も不動産価格上昇率が高いカナダはどうなっているでしょうか?オールカナダの住宅インデックスを2000年から今年初めまで比べると概ね2倍強です。これをバンクーバーだけで見ると戸建ては5倍、タウンハウスで4倍、コンドミニアム(マンション)で3倍です。日本の首都圏で高い、高いと言われても50%アップですので比較にならない状態です。

問題はこの先です。以前、何度かお伝えしたようにコロナ禍で当局の建築許可の発出が異様に遅れており、需要に全く追い付ていません。これは北米全般に言えるはずです。なぜ、遅れているか、といえば役所の担当者が在宅勤務なので関連部署間の調整が進まず、業務効率が大幅に落ちている、これに尽きます。

バンクーバーの街の風物詩といえばどこを見ても高層マンション建築用のタワークレーンがあちらこちらに立っていたことですが、今はかなり少ないのです。許可が出ないから建築できないのです。

専門家の22年1年間の住宅価格上昇率は14-5%となっています。私のざっくりした予想は20%以上という狂乱状態になるとみています。こうなると金利が目先上昇し、住宅ローンが上がろうが、早く買わないと住宅は絶対に購入できない高嶺の花になるのです。平均住宅価格はバンクーバーに於いて今年、カナダの住宅価格史上初となる1ミリオンドル(9000万円)を超える見込みです。

なぜ、ミリオンドルの住宅を買えるのでしょうか?最近、私のまわりで二人の第一次取得者層が購入したのも1ミリオンドルから90万㌦(8000万円)クラス。ミリオンドルの住宅を購入した人は夫婦二人のダブルインカムノーキッド、住宅ローンは月々3000㌦(27万円)です。なぜ、返済可能なのでしょうか?二人の月々の生活費となるいわゆる固定生活費は月々30万円ぐらいでそれ以上は増えにくくなります。(豪勢な生活をすれば別ですがカナダでそんな派手なことをする人は少ないです。)すると二人の収入は年収ベースで1000万円はたやすく超えるので住宅ローンの27万円ぐらい払える計算になるのです。

つまり賃金が上昇すれば加速度的に家計の余力は増えることになり、不動産が人生の資産形成という観点からすれば最高の方法になるのです。そして当地の資産評価は日本のような計算方法ではなく、再建築した際の価値で見るため、建物の減価償却より上がる要素が強かったりするのです。よって超長期の資産形成が可能になり、老後の資金的心配は減り、国富も増えることになります。

バブル崩壊後、日本では時折、「ミニバブル待望論」が出ます。今回、日本では賃金上昇圧力がつよまり、物価も上昇、不動産価格も上昇するでしょう。これは長期的に高齢者の資産価値上昇につながり、老後問題を少しは軽くし、仮に日本の相続税が泥棒的な水準であったとしても個人資産のトリクルダウン的な底上げ期待が生まれることになるはずです。これは保証してもいい、絶対確実なのであります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年2月15日の記事より転載させていただきました。

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