政治へのネット効果は限定的? – ABEMA TIMES

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 ネット選挙解禁から8年、政治家がYouTubeやSNSなどのネットを利用することは、今や当たり前の時代だ。これによって若者の関心が高まると思いきや、なぜか投票率は下降の一途。一昨年の参院選では、ネット利用率が高いはずの20代の投票率は60代の半分以下だった。ネットの活用によって、アクセスできる情報量が増えたにも関わらず、なぜ投票率は上がらないのだろうか。

【映像】サイトのデザインもこんなに違う…各党の公式Webサイト一覧(画像あり)※30秒ごろ〜

 ニュース番組『ABEMA Prime』では、31日行われる第49回衆議院議員選挙を特集。ネットやSNSが政治にどのような影響を与えているのか議論を行った。

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「”ネットで情報が増えたから投票に行くだろう”といった考え方は、若者を見下しているような気がする。ネットに情報があるかないかに関わらず、テレビなどから情報はいろいろ手に入れている。その上で”別に投票に行ったって俺の人生は変わらない”とちゃんと判断した結果だ。ネットで情報を得ても、その判断は変わらない。予想された結果ではないか」と分析。

 一方、政治ジャーナリストの安積明子氏は「ネットがまだうまく使われていないような感じがしている。特に地方では、昭和から政治の勢力構造自体が全然変わっていない。握手をしたからといって投票するわけではないと思うし、有権者はそんなに甘くない。ただ、政治家は握手をすると、握手の感じで安心する。有権者と握手をしようと、手を伸ばしたとき逃げるか逃げないか、そういったところを政治家は(情勢を肌で)感じて、票読みしている。握手の方が効くと思っている人は、握手の感触で自分の支持率を(測っている)。世論調査に近い」と握手の重要性を指摘する。

 実際に、『ABEMA Prime』にこれまで出演した主要9党の代表者は、「選挙活動で1つだけ選ぶならSNSか握手か」という質問に下記のように回答している。

自由民主党・宇都隆史政調会長代理「地上戦という意味で握手」
立憲民主党・福山哲郎幹事長「握手は重要」
公明党・山口那津男代表「コロナがなければ握手」
日本共産党・吉良よし子常任幹部会員「両方大事」
日本維新の会・吉村洋文副代表「小さい選挙なら握手。大型選挙ならSNS」
国民民主党・玉木雄一郎代表「握手が一番効く」
れいわ新選組・山本太郎代表「握手ですね」
社会民主党・福島みずほ党首「握手です」
NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で・立花孝志党首「SNSです」

 インターネットでは投票率は上がらないのだろうか。ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、時代とともに変化していくと分析する。

「これは世代交代と共に変わっていく話だ。インターネットは分極化していて、今の若い人はどちらかというと、情報を見て、きちんと判断する人が増えていると感じる。世代交代していけば、普通にネットで情報を得て政策から判断していく有権者が増えてくるのではないか。

 握手すると安心感があるというのは政治家側からするとそうなのかもしれないが、有権者側が握手で(相手に投票するかどうか)判断することは、少なくても都市部ではなくなってくると思う。“田舎は”と言うが、日本は人口比でいうと半分以上が都市人口。昔の自民党は保守政党で農村が地盤だと言われたが、農林水産省の公表データを見ると農業人口は200万人を切っている。そうなると、大半が都市部の住民で、若者が中心になってくる。団塊の世代から人口が減っているし、段々と高齢者が多い逆ピラミッドの状態からフラットになっていけば、ネットを中心にした政策論争が普通に成立する時代がやってくるんじゃないかな」

 この分析に、ひろゆき氏は「政治の情報が手に入るかどうかと、投票に行くかは関係ない。投票することによって自分の生活がどう変わるのか。この可能性の問題だと思う。”あなたの1票が総理大臣を決めます”だったら、もうちょっとみんな投票に行くと思う。でも、若い人たちが、選挙に2回、3回行くと”投票に行っても変わらないよね”と気づく。”それだったら自分の時間をもっと有意義に使いたい”となっているだけ。別にネット上に政治の情報があるかどうかは、大した理由じゃない」と今後も投票率があがらないだろうとコメント。

 今後も、若者の投票率は下がり続けていくのだろうか。佐々木氏は「政治に関心がないから行かないのではなくて、政治に関心を持つ必要がないから行かない。でも、国政選挙の投票率の推移を見ると2009年は若者も(投票率が)高い。(20代の)投票率が50%ぐらいある。これは政権交代の時だ。あの頃は自民党を全く信用できなくなって”民主党に頼るしかない”といった空気が生まれたから、盛り上がってみんな選挙に行った。

 80年代、90年代だと”政治に興味がない方がクール”と言われていて、経済も盛り上がってバブル時期だったから政治に興味を持つ必要がなかった。2012年の第2次安倍政権以降に関して言えば、もはや就職率は向上し、失業率は低下し、経済が良くなっているという安心感があった。だから、政治にさほど関心を持たなくても、今の政権で”まあまあいいか”と思っている人が多い可能性はある。

 ”政治を変えないといけない””投票しない”といけないというと、まるで今の政権をひっくり返さないといけないと思っている人が多いかもしれないが、今の政党支持率を見ると、今の10代、20代が選挙に行ったら単に与党が勝つだけだ」

 一方、脳科学者の茂木健一郎氏は政策自体にも問題があると指摘する。

「正直な気持ち、与党も野党もあまり政策は変わらない。最近、選挙戦が単なる”就職活動”に見えてしまう。政策よりも”私は議員になりたい。私を議員にしてください”と言っているように見えてしまう」

 安積氏も「おっしゃる通りだと思う。今、選挙で戦っている人は第一にコロナ対策についての政策をおっしゃる。それから経済対策。大規模な経済政策を行うという方向性は同じだ。私が注目しているのは東京や神奈川、埼玉など、大物と言われる既存の政治家。有権者が”何かしら変わってもらいたい”と思っているのでは。就職率が上がり、有効求人倍率も上がったが、1人の収入は国際的には下がっている。そういったところの不満が出てきているのではないか」とコメント。

 これらの指摘に対し、佐々木氏は「政策の違いが分からないのはメディアの責任も大きい」と説明する。

「経済政策が与野党で変わらないのは大きな誤解だ。やることは同じであっても財源はどこなのか、全く違う意見だ。これは与党がこうで野党がこうではなくて、与野党入り混じって政治家によって言っていることが違う。何もないところからお金は生まれない。だから、どこから生むのかというのは結構大きな議論だ。そういうのがちゃんと議論としてあんまりメディアで浮上していない。そこをちゃんとテレビや新聞が見せる努力をしていないのがかなり大きな問題。だから”与党も野党も経済政策は変わらないよね”となってしまう」

 また、慶応義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「選挙期間中になると、メディアがちゃんと政治を報道しない。公平性を強く意識するがあまりに、9党を全く同じように扱う。しかし、今回の選挙を見る限り、もう少し、大きな政党とそれに対する野党の違い、その違いをもうちょっとクローズアップしてやってもいいのではないかと思った。

 なぜかというと、すごく小さい政党は政権を取る可能性がないから、いくらでも適当なことを言える。ノーブレイナ―(No-brainer)というのはまさにそうで、全く財源をどこにするか関係なく、バラマキを言える。真剣に考えているのかもしれないが、少なくとも現実性はない。それを(公平に報道を)やっていたら違いがよく分からない」とコメント。

 ひろゆき氏も「アメリカの大統領選のように候補2人がお互いに討論する番組があると、違いがはっきり分かる。アメリカの場合は、与党第1党と野党第1党の”ここが違うんだ””あなたのここが違うんじゃないか”と言い合いをする。それを見て、有権者が”自分の考えはこっち側だ”となる。そういう場が日本にない。違いがよく分からないし”これだったらどの党に入れても変わらないよね”が今の日本だと思う」

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