「ネットの高速化」という視点で注目されている「v6プラス」。
NTTの「フレッツ 光」回線で利用できるこの技術の詳細や効果のほどは、前回記事で紹介したが、今回は「使うまでの流れ」を紹介してみたい。
使用するルーターは、8月に「v6プラス」に対応したASUSのゲーミングルーター「TUF Gaming AX3000(TUF-AX3000)」。ゲーム向け機能を特に重視した「ゲーミングルーター」としては手ごろな製品で、実売価格は2万円前後。最新のWi-Fi規格であるWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)にも対応している。
ゲーマーの中には「気になってはいたものの、v6プラスに対応していないとなぁ………」と思っていた人も多いだろう。
そこで今回は、TUF-AX3000でv6プラスを利用する方法を紹介しつつ、v6プラスで通信速度がどう変わるのかチェックしていきたい。
「v6プラス」を利用するために準備すること
さて、まずは回線の準備からだ。
自宅のインターネット接続回線でv6プラスを利用するには、いくつか条件がある。
最低条件となるのが、NTT東西が提供している光回線サービス「フレッツ光」を利用していること。v6プラスは、フレッツ光向けの接続サービスなので、そのほかの接続回線では利用できない。また、フレッツ光にはさまざまな接続タイプが用意されているが、「フレッツ光ネクスト ファミリータイプ」や「フレッツ光ネクスト マンションタイプ」、「フレッツ光ライト」など、一般家庭向けの多くの接続タイプでv6プラスが利用できる。
具体的には、下に示した接続タイプで利用可能だ。
v6プラスに対応するフレッツ光接続タイプ
- フレッツ光ネクストファミリータイプ
- フレッツ光ネクストファミリーハイスピードタイプ
- フレッツ光ネクストファミリー・スーパーハイスピードタイプ隼
- フレッツ光ネクストギガファミリー・スマートタイプ
- フレッツ光ネクストファミリー・ギガラインタイプ
- フレッツ光ネクストマンションタイプ
- フレッツ光ネクストマンション・ハイスピードタイプ
- フレッツ光ネクストマンション・スーパーハイスピードタイプ隼
- フレッツ光ネクストギガマンション・スマートタイプ
- フレッツ光ネクストマンション・ギガラインタイプ
- フレッツ光ライト
- フレッツ光ネクストプライオ1
- フレッツ光ネクストプライオ10
- フレッツ光ネクストビジネスタイプ
- フレッツ光マイタウンネクストファミリータイプ(西日本エリアのみ)
「対応するフレッツ光接続タイプを使っている」ことを確認できたら、次に確認するのがISP。
具体的には「v6プラス対応のISP」との契約が必要になるわけだが、NIFTY、So-net、GMOインターネットなどの主要ISPは対応済みだし、そのほかでも全国に多数存在している。
自分が契約しているISPが対応済みなら、追加でv6プラス対応接続サービスを契約するだけでいい。ほとんどのISPが、初期費用および月額費用無料で提供しているので、追加費用を気にすることなく利用できるのもうれしい部分だ。
通常は、v6プラス対応接続サービスを契約して数日から1週間ほどでv6プラスの利用可能となる。v6プラスの追加だけなら宅内工事もないので、手軽に申し込めるし、v6プラスの利用開始後も、従来方式のPPPoE接続と切り替えできるISPがほとんどなので、v6プラスの利用開始後に「PPPoE接続を利用したい」となった場合でも安心だ。
なお、v6プラス同様のIPv4 over IPv6のインターネット接続サービスには、「transix」や「v6コネクト」、「IPv6オプション」、「OCNバーチャルコネクト」といった接続方式があるが、それらとv6プラスは互換性がない。回線契約やオプション契約の際、混同しないように注意しよう。
ファームウェア更新で「v6プラス対応」に機能強化!
続いて、TUF-AX3000でv6プラスを利用する手順を紹介したい。
TUF-AX3000がv6プラスに対応したのは、2021年7月28日付で配布が始まった最新ファームウェア「バージョン 3.0.0.4.386.43588」から。そのため、それ以降のファームウェアにアップデートすることでv6プラスが利用可能となる。具体的には、現時点で最新版のファームウェアを導入していれば、v6プラスが利用できると考えていい。
もちろん、これから新規に購入する場合は、すでにv6プラス対応になっている場合も多いと思うが、ファームウェアを更新することで機能が向上したり、セキュリティが向上したりすることも多いのがルーターの世界。手順について知っておくと安心だ。
さて、まずは、現在のファームウェアが最新版にアップデートされているかチェックしよう。それには、PCのブラウザーなどからTUF-AX3000のセットアップメニューにアクセスし、現在のファームウェアのバージョンをチェックすればいい。
セットアップメニューの左にあるメニューから「管理」→「ファームウェア更新」と進むか、セットアップメニュー上部に表示されているファームウェアバージョンの数字の部分をクリックすればいい。そして、ファームウェア更新メニュー内の「更新をチェック」項目横にある「チェック」ボタンをクリックすると、自動的にファームウェアのバージョンがチェックされる。
ここで、すでに最新版のファームウェアが導入されていれば「現在使用しているファームウェアは最新バージョンです。」と表示される。そして、最新版が導入されていなければ、「ファームウェア更新」ボタンが表示されるので、そのボタンをクリックすればいい。あとは、自動的に最新ファームウェアがダウンロードされ、アップデートされる。ファームウェアのアップデートには数分かかるので、その間TUF-AX3000の電源は絶対に落とさないように注意しよう。その後、セットアップメニューへのログイン画面が表示されれば、ファームウェアのアップデートは完了だ。
設定変更は「WAN接続タイプ」を「v6プラス」に設定するだけ
最新版ファームウェアへのアップデートが終わったら、v6プラスの接続設定を行おう。
とはいえ、それは非常に簡単だ。
セットアップメニューの左にあるメニューから「WAN」を選択。そして、インターネット接続メニューの「WAN接続タイプ」を「v6プラス」に変更するだけだ。しかも、PPPoE接続のようにIDやパスワードの入力は不要だ。
以上の設定が完了したら、あとはメニュー下部の「適用」ボタンをクリックすればいい。あとは数分待てば自動的にv6プラスでの接続が完了し、インターネットにアクセスできるようになる。
ゲーミングルーターのポイントとは?
ここで、「ゲーミングルーター」であるTUF-AX3000の特徴を簡単に紹介しよう。
TUF-AX3000は、Wi-Fi 6対応のゲーマー向けWi-Fiルータ-だ。ASUSでは「ROG」シリーズと「TUF」シリーズという2つのゲーミングブランドがあるが、TUFは快適なゲーミング環境を実現する耐久性や性能を確保しつつコストパフォーマンスに優れるシリーズとなる。
5GHz帯域の通信速度は2ストリームで最大2402Mbps。また、2.4GHz帯域の通信速度は最大574Mbpsとなる。最新のWi-Fi規格であるWi-Fi 6対応により、高速な通信が行えるのはもちろん、多数の端末を同時接続した場合でも安定かつ高速な通信速度が確保できる点も大きな魅力だ。
もちろん、ゲーム向け機能も充実。有線LANはWAN×1、LAN×4を備え、全ポート1000BASE-T対応となるが、4つあるLANポートのうち1つが「Gaming Port」として用意されており、最優先で通信を行うよう設定されている。そのため、Gaming PortにゲーミングPCや家庭用ゲーム機を接続すれば、特に面倒な設定不要で最優先でデータ通信が行える。
また、P2P接続でネットワークゲームをプレイする場合に設定が必要となる、ポートの開放やポートフォワードといった設定を、登録されているゲームタイトルを選択するだけで簡単に行える「Open NAT」という機能も搭載。
こういったゲーミング関連機能が充実していることで、高度なネットワーク関連の知識不要でネットワークゲームを楽しめる点も大きな魅力だ。
なお、TUF-AX3000の詳細については、清水理史氏のこちらの記事『「タフ」なWi-Fi 6ルーターがASUSから登場、テレワークに便利な機能も多数搭載』で詳しく紹介されているので、そちらも参照してもらいたい。
速度をチェック、混雑する時間も低遅延かつ高速に
では、最後に、TUF-AX3000でPPPoE接続とv6プラス接続において通信速度や遅延にどれだけ違いがあるかチェックしていこう。
今回の検証は、筆者の自宅で利用しているフレッツ光回線を利用。フレッツ光回線の契約は「フレッツ 光ネクスト ファミリー・ギガラインタイプ」で、契約ISPはSo-net。この環境で、PPPoE接続時とv6プラス接続時での通信速度を、googleが提供しているインターネット速度計測サービス「インターネット速度テスト」と「fast.com」を利用して計測した。
また、PINGコマンドを利用して人気オンラインゲーム「フォートナイト」のアジアサーバーへのレスポンスタイムを計測した。計測に利用したPCはCore i5-11400とSSDを利用したWindows 10 Proマシンで、TUF-AX3000と有線LANで接続し計測を行っている。
掲載した結果は、3回計測した中で下り速度が中間の結果を採用している。計測した時間帯は、金曜日の21時から22時にかけてと、混雑が予想される時間帯を選択している。
なお、通信速度は回線の収容局や時間帯によって大きく変わるため、この結果はあくまで参考として見てもらいたい。
まず、googleのインターネット速度テストの結果だ。以下の結果を見ると一目瞭然だが、PPPoE接続の場合には下りが57.9Mbps、上りが17.3Mbpsだったのに対し、v6プラス接続の場合には下りが581.5Mbps、上りが346.3Mbpsと、PPPoE接続時と比べ下り、上りとも10倍以上の速度が記録された。また、レイテンシもPPPoE接続が69msだったのに対しv6プラス接続は3msと、こちらもv6プラスが圧倒した。
続いてfast.comの結果だ。こちらも結果を見てもらうと分かるが、googleのインターネット速度テスト同様に、下り、上りの速度とレイテンシともにv6プラス接続が圧倒となった。
これら2種類のテスト結果から、v6プラスの優位性がよく分かってもらえると思う。
最後に、フォートナイトのゲームサーバーへのレスポンスタイム計測の結果だ。今回は、コマンドプロンプトから「ping [アジアサーバーのアドレス] -n 50」と入力し、50回のレスポンスタイムの平均を計測している。
結果は、PPPoE接続時が平均10msだったのに対し、v6プラス接続時は平均5msだった。PPPoE接続でも特別悪いレスポンスタイムではないものの、それでもv6プラスの方が半分のレスポンスタイムとなっている。また、レスポインスタイムの最大値を見ると、PPPoEが23msだったのに対しv6プラスは8m。このことから、混雑している時間帯でもv6プラス接続の方がより遅延が少なく有利にプレイできると言える。
「ゲーミングルータとv6プラス」は好相性!
ここまで見てきたように、v6プラス接続では混雑時でも安定して高速な通信速度が確保できるのはもちろん、レイテンシも有利になることが分かってもらえたと思う。
v6プラスでは、IPv4で利用できるポートに制限がある関係で、自分がゲーム用の接続サーバーを公開して、ホストとしてプレイする場合などで問題が発生する場合がある(前回記事参照のこと)。
ただ、現在のオンラインゲームはそのほとんどがパブリックサーバーに接続してプレイするようになっており、そういったオンラインゲームはv6プラスでも全く問題なくプレイ可能。そのため、ほとんどのプレーヤーにとって、v6プラスでゲームプレイに問題が発生することはなく、逆に混雑時でも快適にプレイできることになる。
そして、TUF-AX3000は、オンラインゲームに有利となる機能も豊富に用意するとともに、安定した性能を発揮し、しかも比較的安価に購入できる。そのため、v6プラス対応でコストパフォーマンスに優れるゲーミングルーターを探しているなら、TUF-AX3000は最適な選択肢であり、広くおすすめしたい。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)