MLBのモバイル注文 座席に配達も – 後藤文俊

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■日本ではスターバックスやマクドナルドなど大手外食チェーンの一部で事前注文・事前支払いが拡大しつつある。一方でアメリカでは生活のあらゆる局面にモバイルオーダーが浸透しつつある。

モバイル・オーダーはレジ待ち行列を緩和し、注文の聞き取りミスや勘違いによるヒューマンエラーを回避できることでクレームが減少、顧客ロイヤリティが高まる。

スタッフもより調理に集中できることで、店内オペレーションの合理化も図れるメリットがある。

コンタクトフリーとなるモバイルオーダーはお客とレジ係りの物理的な接点がなくなることで感染リスクも最小化できる利点も注目されている。

モバイルオーダーはマクドナルドや3大宅配ピザチェーン(ドミノピザ、ピザハット、パパジョンズ)など大手の外食チェーンですでに一般化している。

スターバックスでは4人に一人がモバイルオーダーで注文し、日本でも人気のハンバーガーチェーンのシェイクシャックも売上の47%がデジタル経由の注文となっているのだ。

コロナ禍でイートインが閉鎖され店内のレジ注文も制限されたことで、大手飲食チェーンの大半の売上がドライブスルーやモバイルオーダーとなっている。

モバイルオーダーが急速に拡大しているのがスタジアムなどの巨大競技場だ。

NBA(プロバスケットボールリーグ)、MLB(メジャーリーグベースボール)、MLS(メジャーリーグサッカー)などのスポーツ観戦のアリーナやスタジアムでもコロナの影響でモバイルオーダーが拡大しているのだ。

カリフォルニア州ロサンゼルスにある収容人数5.6万人の野球場、ドジャー・スタジアムでもモバイルオーダーが利用されている。

ドジャー・スタジアムではオンデマンド・デリバリー&ピックアップサービスのポストメイツと提携。ファンは売店のレジ行列に並ばずビールやホットドッグを購入できるのだ。

使い方は専用のアプリをダウンロードしクレジットカードなどの情報登録を済ませておく。スタジアムではメニューを選んで注文し決済すると、スマートフォンにピックアップ時間が通知されるのだ。

用意ができればピックアップカウンターでメニューを受け取るだけとなる。手数料は無料。

モバイルオーダーにより、レジ行列にならんでいる間に試合の大事な場面をミスするということがなくなるというわけだ。

モバイルオーダー以外にも球場内に注文端末があり現金支払にも対応している。

ドジョー・スタジアムの他、ニューヨーク州ニューヨーク・ブロンクス区にある野球場のヤンキー・スタジアムやサンフランシスコにある収容数6.5万人のリーバイス・スタジアム、テキサス州サンアントニオにある屋内競技場のAT&Tセンターなどモバイルオーダーが拡大中だ。

手数料がかかるものの注文した食べ物や飲み物、グッズまで座席に届けるインシート・サービスも普及しつつある。

コロナ禍で非接触の課題もあるが、一瞬たりともゲームを見逃したくない熱心なファンに向けてのシートサイド・デリバリーが今後も拡大すると見られている。

行列に並ばせず、お客の時間を節約するだけがモバイルオーダーのメリットではない。スタジアムなどの売店でアプリを介しての事前注文が急拡大している要因に、客単価と利益率のアップがある。

レジで注文するのに比べてモバイルオーダーでは10~20%も客単価がアップするのだ。モバイルオーダーアプリを開発するアペタイズ(Appetize)によると、レジ売りに比べて平均で22%も伸びるという。

ビールなどのアルコールを含んだ注文がモバイル注文の80%にもなる。粗利益率の高いアルコール類がレジ注文より増えることで利益率がアップするのだ。

運営側にとってモバイルオーダーを導入しない理由がないのだ。

 至るところでモバイルオーダーが拡大すれば食品スーパーのデリ注文でも導入される。ウェグマンズなど一部のスーパーがすでに始めているが、モバイルオーダーもネットスーパーのように急激に増えることになる。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。オンライン・コンサルティングの勉強会で後藤が事例として上げるのは大手チェーンストアのケーススタディだけではありません。ディズニーランドのモバイルアプリは小売のケーススタディとして秀逸です。モバイルアプリを介してホテル・チェックインし、ホテルの部屋のドアもアプリで解錠します。入園チケットもアプリを介して購入し、人気アトラクションも行列に並ばずアプリ予約。絶叫マシンでの写真から、園内の記念撮影まですべてアプリで管理するのです。

飲食はモバイルオーダーで注文し、ショップで購入するディズニーグッズもアプリでスキャンして決済とレジ行列に並ばず会計します。これがDXです。日本では抽象論でしかDXが語られません。日本より5年~10年進んでいるアメリカではDXも具体的な事例の宝庫となっているのです。ただ残念ながら多くが「ウチは小売店だから」「ウチは食品スーパーだから」「お客さんはジイさんバアさんが大半だから」と参考にならないとおもっているのです。

 こういったバイアスに陥らないために、ちょっと想像力を働かせて考えてみてください。例えばビールの売り子が戻ってきた際、球場がモバイルオーダーによる受注を始めたら、以前とどこがどう変わるでしょうか?

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