影を読む技術。
あるとき、なんだか沈黙が気まずくなって白い壁をただ見つめたくなったことがある…という人からすればそんなの嘘だ!と思うかもしれませんが、どうやら何もないはずの壁にはたくさんの情報が詰まっていることもあるみたいです。
MITの研究によれば…
一体なんの話をしているのかというと、スタンフォード大学のComputational Imaging Labが新たな研究で、壁に開けた小さな穴にレーザービームを通す技術を使うと、部屋に何があるのかわかると示唆したのですが、さらにそのわずか1カ月後に、MITの研究チームがこの技術を使えば部屋のなかが見えない状態でも何が起きているのかわかると発表したのです。
真っ暗な部屋に一筋でも光が入れば、肉眼であっても、暗闇のなかで何かが動いている・静止している、何かは丸い・角があるといったことがわかりますが、光の場所によってはほぼ暗くて何も見えなくなるものです。ところがニューラルネットワークを使った新たな研究では、ただ壁を撮影しただけの映像から、何人の人たちがいて、どんな動作をしているかがわかるというのです。
鍵となるのは影の動き
MITの研究では、まず低光性能に優れた高解像度のカメラを使って白い壁(実際にはドアがあっても、装飾があっても関係なし)を撮影。その動画から人の動きの影を消して、家具など静止しているものを特定。こうして誰もいない部屋の状態を想定します。
同じことを別の部屋の別の壁でも行うのですが、今度は特定の人数の人たちが特定の動作をするという状況を設定。こうした情報(部屋にどのくらいの人数いて、どんな動作がどんな影を作るか)をニューラルネットワークに学習させると、部屋にいる人数は94.4%、特定の動きは97.3%の精度で明らかにできたといいます。
何もかもわかるというわけではない
影からいろいろな情報がわかるならば、いますぐカーテンと雨戸を閉めなくては…と思う人もいるかもしれませんが、特段慌てる必要はないとか。というのも、ニューラルネットワークが利用するほぼすべてのアプローチでは、人間のあらゆる動作をシステムに学習させるのはほぼ不可能なのだといいます。特定の違法行為について特定するよう学習させることは可能である一方で、たとえば誰かが手渡したアタッシュケースに入っているのが賄賂の札束であるかどうかを見分けられるかは別問題なのだそう。
さらにキャンドルやテレビなど光がちらついた状態では、人の動きによってできた影と光のちらつきによって動く影が区別しづらくなるため、完全に機能しなくなるといいます。また、薄暗い部屋でもカメラの性能の限界で精度が落ちるとか。ということは、部屋中のライトをキャンドルに置き換えれば、絶っ対にプライベートを読み取られることはないのかも…? なーんてちょっと極端すぎますかね。