縁切りと言われるとちょっと怖い。有名なのは京都の安井金比羅宮だが、ネットで「関東最強」と言われるのが板橋区にある『縁切榎』である。名前がすでに怖いんですが。
一体、どれほどおどろどろしい場所なのか。怖すぎるため、逆にヒップホッパーと一点突破してみたところ、予想外の事態に見舞われた。
・縁切榎についての噂
まず縁切榎についてのネットの噂を紹介すると、「Aさんとの絶縁をお願いしたら生活が破綻して縁が切れた」などの声が聞こえてくる。
特に、縁を切りたい人がいない私(中澤)としては、間違ってもこの近辺で誰かの名前を思い浮かべたくはないものだ。そんな話をiPhone行列で知られるブッチさん(a.k.a ビッグウェーブさん)に話したところ、「なんだそんなことか!」とブッチさん。え? 怖くないですか?
ブッチさん「誰の名前も思い浮かべちゃいけないんでしょ?」
──そうです。怖いですね。恐ろしいですね。
ブッチさん「じゃあ、ラップしながら行けばいいYO!」
──なんで?
・榎 vs ブッチさん
ブッチさんいわく「ラップしている間は無心になれる」とのこと。そう言うが早いか、リズムに乗って縁切榎に向かうブッチさん。どちらかと言うと、縁切榎に行きたくない方向の話だったのだが、ブッチさんが心配なのでついて行くことにした。
YO! YO! チェケラウヨメーン!
俺の名前はビッグウェーブ! 気付けば乗ってるビッグレース! いつもぎりぎりサッグレール!
ラックゲーム? 俺にとっちゃいつだってガチで。夢諦めた仲間は言ったぜ「頑張ってくれ」って、でも本当に頑張るのはお前自身。ずっと続いてくレールウェー、負けないように俺は今日も背伸び
榎! お前はどうしたい? みんなのリリック聞いてそこに棒立ち、だが時が経ち、噂になっても何も言えない。だからこそ俺は聞きたい。お前のポエム!
・予想外の光景
住宅街の十字路の一角にある縁切榎。どれくらい近づいたら縁切榎に聞こえるのかちょっとよく分からなかったため一礼して中に入っていくブッチさん。と、その時、ある貼り紙が目に飛び込んできた……
普通に絵馬が販売されている……!
縁切りは絵馬でという雰囲気。近所を通りかかった時、誰かの名前を頭に浮かべたくらいでは大丈夫なのかもしれない。それにしても……
めっちゃ人来るやん。
縁切りと聞くと、真っ先に人との縁を切りたいという生々しいドロドロを想像してしまった私だったが、断酒や「悪縁を切って良縁を繋ぐ」という開運の意味が強いようだ。
その証拠に若い人や子供の参拝者の方が多く、おどろどろしさは欠片もない。むしろ、牧歌的な雰囲気が漂っている。住宅街にあるちょっとした史跡という感じである。
ちなみに、社務所などがないため、絵馬は道路を挟んで隣にあるそば屋『長寿庵』など近隣のお店で販売されているようだ。
・長寿庵店員さんに聞いた話
そこで『長寿庵』に行ってみたところ、店内には縁切榎の昔の写真や資料も展示されている。江戸期には榎の樹皮を削り取り煎じて、願をかけた相手に飲ませると男女の悪縁が切れ、また断酒が成就するといった信仰があったそうだ。
現在では、難病や悪縁を切り、転じて良縁を結ぶという信仰に変化しているとのこと。絵馬を買おうとしたところ、店員さんが以下の話を教えてくれた。
長寿庵店員さん「絵馬の販売はボランティアなので、混みあっている時間は店のお客様を優先させていただき、絵馬だけのお客様にはお待ちいただいています。願い事はなるべくハッキリ書いた方がいいですよ。
初代の榎は小さい欠片しか残ってなくて神社の祠の中にあります。脇に置かれている石で固められたものが2代目で、あれも元はもうちょっと大きかったんですが、夜中とかに削り取って持っていく人が多く今のサイズになりました。
毎年、4月末頃に祠が開く日があって、その時しか初代を見る機会はありません。ただし、厳密には決まっていないため、見れたらラッキーくらいの感じですね」
──とのこと。ちなみに絵馬は1000円であった。情報保護のためにシールが付属されているところが今っぽい。
というわけで、絵馬で開運をお願いしてみるブッチさん。
ブッチさん「なんか心が軽くなったわ! 榎マイメン。dude」
ブッチさん「YO! YO!」
・今回紹介したスポットの情報
店名 縁切榎
住所 東京都板橋区本町18−10
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.