BLOGOS編集部
立憲民主党の枝野幸男代表は21日、ぶら下がり会見で、安倍前首相が掲げた経済政策「アベノミクス」について党内に今月設置した検証委員会の報告内容を発表した。
枝野代表は、「アベノミクスはお金持ちをさらに大金持ちにしたが、格差や貧困問題の改善につながっていなかったと改めて確認した」と述べた。さらに、「実質賃金が下がり続け、2度にわたる消費増税で消費の低迷が続き、日本経済が低迷から抜け出せない最大の要因になっている」と批判した。
質疑応答では、記者からアベノミクスは失敗だったという認識なのかと問われ、「失敗でした。間違いなく」と断言した。
検証結果を踏まえ、近く「政権政策としての経済政策」を発表するとしている。
【発言全文】
枝野:アベノミクスの検証委員会を設置して、江田(憲司)代表代行を中心に、落合(貴之)事務局長をはじめみなさんに短い期間で鋭意検討いただきました。もちろん、我が党の経済政策を作り上げていく中で、これまでも検証をつみかさねてきた、そのことを改めて今の時点でアップデートして再整理していただいたものでありますが、先ほど正式に私のところに報告いただきました。
改めていうまでもなく、アベノミクスはお金持ちをさらに大金持ちにした、強い者をさらに強くした。しかし、いわゆるトリクルダウン、それが普通の暮らしをしている人、厳しい生活をしている人たちのところに滴り落ちるというようなことはまったく起きず、格差や貧困問題の改善にはつながっていなかったと改めて確認をいただきました。一方で実質賃金は下がり続け、2度にわたる消費増税が追い討ちをかけて、GDPの半分以上を占める消費の低迷が続いている。このことが日本経済が低迷から抜け出せない最大の要因であるというふうに認識をいたします。
いわゆる3本の矢は大胆な金融緩和、確かに円安誘導やゼロ金利、あるいはマイナス金利によって輸出産業を中心に収益増となり株価は上昇しましたが、インフレ期待に働きかけての消費増にはまったくつながらず、物価安定目標の2%も達成できていません。そもそもこうした異次元緩和はいわゆるカンフル剤であり、打てば打つほど効果が減殺され副作用も起きています。地方銀行の経営悪化や、官製相場の形成といったところに現れている。何よりもいつまで続けるのか、出口戦略がまったくなく、その見通しも立っていないという大変深刻な問題をもたらしています。
機動的な財政政策についても、消費を喚起させなければならないにもかかわらず、裏側で行われた2度にわたる消費増税でGDPの半分以上を占める消費を腰折れさせて、そして必要な投資や税制改革が進まず、インフラ投資も従来型のものが中心で経済波及効果はあまり得られず、何しろ消化不良で使い残しも目立っています。類似の経済対策、補正予算と称する中で設立された約200にわたる基金も、需要の見通しの甘さから大幅な使い残しが目立っております。それらの国庫返納も十分になされていないなど、問題ばかりであります。
3番目の成長戦略は金融緩和などのカンフル剤が効いている間に進めるべき体質改善でありますが、製造業の労働生産性はOECD37か国中16位にまで落ちて、潜在成長率は0%まで低下をしております。
行きすぎた株主資本主義が労働分配率の低下や、設備投資の減少につながっており、結果として企業の内部留保を膨らませ、戦後最高の475兆円となっておりますが、企業の成長につながるようなところにむしろ回っていないことの裏返しとなっております。原発輸出やカジノ、オリンピックなど目玉政策もいずれも失敗し、あるいは功を奏していないという状況でございます。こうした状況を改めてデータに基づき確認をさせていただき、これを抜本的に変えない限り日本経済の低迷を抜け出すことはできないと改めて確信をいたしました。
こうした最新のアップデートされたアベノミクスに対する検証結果を踏まえて、そう遠くなく政権政策としての経済政策についても発表させていだきます。
まとめていただいた江田委員長から(配布資料の)後ろに付けております参考データ、みなさんにとっても非常に役に立つデータだと思いますので、若干ご説明をいただければと思います。
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江田:参考でお配りしたグラフ、ひとことずつご説明させていただきます。
まず冒頭の物価、名目賃金、実質賃金、消費指数の推移でございますが、ここで見ていただきたいのは、まさに実質賃金が2012年を100として、下がり続けて95.6、5%近く減っていると、アベノミクスの期間中ですね。それに伴いまして、世帯消費が全然伸びていないどころかどんどん低下をして、10ポイント近く2012年に比べて減っているということでございます。
2枚目でございますが、この格差というか、1つの象徴的な指標として年代別の貯蓄ゼロ世帯の割合、特に若い世帯、20代、30代、2012年と比べまして、1.5倍から2倍近く貯蓄ゼロ世帯が増えていると。これが如実に格差の広がりみたいなものを象徴しているんじゃないかと思います。
一方でお金持ちをさらに大金持ちにしたと、今代表が申し上げたその証左が次の純金融資産保有額が1億円以上の世帯数と資産額の推移という表がございまして、なんとこれ2011年くらいから加えますと世帯数で1.64倍、試算額で1.77倍まで増えているということで、これがまさにお金持ちをさらに大金持ちにしたという証左でございますし、ミリオネア、億万長者の人数も2012年、13609人が、ほぼ1万人増えて23550人になっております。
次にこのアベノミクスの成長戦略が本当に見事に失敗した証左として、数字が語っていると思います。次のページで、2019年度の潜在成長率がゼロ近くまでに落ち込み、書いておりませんが、2020年にはもうリーマンショック以降10年ぶりにマイナスになったと。いくら安倍総理が色々言い訳されても、結局潜在成長率っていうのは中長期的な日本経済成長の実力を示すものですから。これがゼロだと。成長しないんだということが、日銀の統計ですので証明されていると思います。
それから格差の問題で「ジニ係数」※というものがございますが、このジニ係数の改善、すなわち分配による格差是正がどのくらい進んだかという国際比較を見ましても、ご覧のように欧米と比べまして、日本は極端に低いと、改善率ですね。OECD諸国平均で見ても、3/4~2/3低いということで格差是正が全然進んでいないということでございます。
※イタリアの統計学者であるコッラド・ジニ氏が考案した、所得などの分布の均等度を示す指標。
それから成長戦略の中でよくいわれる研究開発力、特に国立大学が担う役割が大きいわけですけど、左側に書いてあるように、運営費交付金というものがどんどん減らされてきて、結果的にいうと運営費交付金、国立大学の、これは共通経費を除いた分が研究開発に充てられるんですが、この研究開発に充てられる金額はどんどん減っていると。
一方で競争的資金が伸びていまして、競争的資金を申請して競争で取ると。そこに研究者のみなさんの手間暇が取られていると。研究時間も減っているということなので、これでは日本の研究開発力がどんどん諸外国に比べて遅れていると。先駆的な論文の論文数にしろ、それを引用していただく引用数にしろ、どんどん下がっているというのはみなさんもご承知の通りだと思います。
そしてこの株主資本主義、我々は公益資本主義っていうものを訴えようと思っているんですが、株主偏重、米国流ですね、これをどんどんガバナンス改革と称して導入してきた結果、ご覧のように明らかに配当がグッと上がっている、株主配当がグッと上がっているにもかかわらず、従業員の給与は横ばいというか、増えていない。結果、内部留保、ここでは297億円、2018年の数字が出ていますけど、ご承知のように直近では475兆円、戦後最大の内部留保を抱えているということでございます。
そして最後に株主偏重の資本主義ガバナンス改革の結果、労働分配率、まさに賃金を反映させる労働分配率がご覧のように、大企業ほど分配率が低いということです。大企業ほど将来を見込んだ設備投資もせず、従業員の給料も上げず、貯め込んでいると。そしてさっき申し上げたように配当はどんどん増やしている。こういうことを是正していくのも、我々立憲民主党の責任だと思っております。
以上がグラフの説明でございます。
枝野:私どもの方から以上でございます。