在宅勤務で生産性低下 日本だけ? – 非国民通信

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「テレワークで生産性低下」は日本だけ? 通勤との”ハイブリッド”で重要な施策とは(ビジネス+IT)

 総務省は2021年6月1日、「令和2年通信利用動向調査」の結果を公表した。同調査では、2020(令和2)年8月末時点における世帯・企業での情報通信サービスの利用状況が取りまとめられている。

 その結果によると「在宅勤務を中心とするテレワークを導入する企業の割合は、前年比で倍以上の47.5%に達した」(2019年は20.2%)という。産業別では「情報通信業」が9割以上導入し、導入目的としては「非常時(感染症の流行など)の事業継続」が7割近くと最も高かった。

 この数字から何が読み取れるのか。レノボ・ジャパンでワークスタイル・エバンジェリストを務める元嶋 亮太氏は「緊急事態対策としてテレワークが浸透したものの、その場しのぎだった企業は少なくない。政府の感染症対策が少しでも緩和すれば、オフィスに出勤する従業員は増える傾向にある」との見解を示す。

 その理由について、同氏は「テレワークが生産性を低下させている」ことを挙げる。レノボが2020年に世界各国で実施した調査によると「テレワークでは、オフィス勤務時よりも生産性が下がる」という回答結果が得られたからだ。他の主要国がすべて10%台なのに対して、日本だけが「40%」と異様に高い。

 さて新型コロナウィルスの感染者数が急増する昨今ですが、日本は諸外国と比べ突出してテレワークに否定的な傾向を示す調査結果が発表されています。テレワークで生産性が下がるという回答は普通の国ですと概ね10%台で少数派に止まる一方、我らが日本は40%と一国だけ全く別の価値観を持っていることが分かりますね。

 効率的なものよりも非効率的なスタイルに道徳的な正しさを見いだす文化もあるとは思います。楽な働き方と苦しい働き方であれば、前者に何かしらの「ズルをしている」かのような印象を抱く人も日本には多いのではないでしょうか。テレワークで諸々の負担が軽減されるからこそ、それをネガティブに捉えている人も多いはずです。

 なお引用元のレノボ調査によると回答者の46%が「同僚との対面コミュニケーションがなくなったことで、ストレスや不安を感じる」とのことでした。詰まるところ日本の職場は諸外国と比べ突出して、対面コミュニケーションとやらに依存した働き方を続けてきた、と言うことなのかも知れません。

 時代や状況によって、求められる能力は異なります。棍棒での戦闘能力が重視される時代もあれば、弓馬に巧みであることを求められる時代もある、そこから鉄砲の扱い方を問われるようになれば、家柄や学歴、技術力や容姿に若さ等々と評価されるものは時代とともに変遷し、そして「コミュニケーション能力」に至上の価値を置くに至ったわけです。

 業務遂行能力よりもコミュニケーション能力が優先される中で、社会的に強い立場にあった人たちは対面コミュニケーションによる問題解決に長けていたであろうことは容易に推測されます。ところがテレワークで得意技が使えなくなってしまい焦りを感じている、コロナ前のような成果を上げられなくなっている人も多いのではないでしょうか。

 反対に、これまでのコミュニケーション能力至上主義の中で評価されてこなかった人々、対面コミュニケーションに依存しない問題解決能力を持った人々が、代わりに台頭している職場もあるように思います。コミュニケーション能力一本足打法で幅をきかせてきた従来の主流派が、傍流に追いやられて行ったとしても不思議ではありません。

 例えばサッカーでも、戦術が変わることで選手の序列が変わることがあります。4バックが3バックに変わっただけで、ファーストチョイスだった選手が構想外のトレード要員になり、干されていたと言われる選手が絶対のレギュラーに君臨したりと、状況が変わって求められる能力が変われば、そういうことも普通にあるわけです。

 全員がオフィスに出勤する業務形態とテレワークとでも、同じように求められる能力が変わってくるのではないでしょうか。そして働き方が大きく変わっていく中で、対面コミュニケーション能力に依存した人間はテレワークへの対応が難しく、生産性を実際に落としてしまっている人も少なくないと思われます。

 60歳未満のワクチン接種に関しては絶望的な状況が続きますが、いずれは新型コロナウィルスの感染拡大も止まることでしょう。そうなったときに、テレワークを継続できるか従来型の出社勤務に回帰するか、問われるものがあるはずです。

 世界の潮流に沿って日本も先進的な働き方を導入できるか、アンシャン・レジームの復権を許すか、ですね。コミュニケーション能力至上主義でのさばってきた人が働きやすい環境を選べば、日本は今以上に進歩から取り残されることでしょう。

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