ニュージーランドの山岳地帯に生息するカワゲラが前例のないスピードで羽を失っているという研究結果が発表されました。研究チームはこの現象が、生息域における「森林破壊」が原因だと主張しています。
Anthropogenic evolution in an insect wing polymorphism following widespread deforestation | Biology Letters
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2021.0069
Deforestation Can Cause Rapid Evolutionary Changes in Insects, New Zealand Case Shows
https://www.sciencealert.com/deforestation-may-be-causing-some-island-insects-to-lose-their-wings
ニュージーランドに生息するZelandoperla fenestrataという固有種のカワゲラは、羽のあるタイプと羽のないタイプの2種類の表現型が存在する種。樹木が少ない高地においては飛行すると強風にあおられて墜落するため羽のないタイプが多くなり、樹木が立体的な地形を生み出す森林においては行動範囲を増やすために羽のあるタイプが多くなるとされてきました。
しかし、新たな研究によって、これまでは羽のあるタイプの生息数が多かった「高山地帯の森林」において、人間による伐採が進んだ箇所では羽のないタイプが増加していることが明らかになりました。
ニュージーランド南部では1200年頃から人類による原生林の焼却が始まったと言われており、現代では森林の40%が草原やシダ植物地帯に変わっているとのこと。羽のないタイプのカワゲラは行動範囲が狭くなるため、交尾相手が限定されることから、Zelandoperla fenestrataという種の中で遺伝的多様性が低下すると研究チームは指摘し、「絶滅のリスクにも関わってくる」という見解を示しています。
近年は昆虫の個体数が激減していると報じられており、2019年には「30年で捕獲される昆虫の総数が76%減少した」という報告も提出されています。
「昆虫は絶滅の危機に瀕している」ことがアマチュアグループの長期的調査のデータから明らかに – GIGAZINE
人類からの影響を受けているのは昆虫だけではありません。オーストラリア・ディーキン大学の生物学者サラ・ライディング氏が発表した論文によると、地球温暖化によって温暖気候に適応した動物は放熱を有利にするため手足や体の付属器官が大型化するという「アレンの法則」が加速しているとのこと。アカサカオウムとビセイインコについては1871年からくちばしのサイズが4~10%増加しており、シネレウストガリネズミは1950年以降に尾と脚の長さが大幅に増加。ヒマラヤリーフノーズコウモリは1950年以降翼長が1.64%長くなったそうです。
New research reveals animals are changing their body shapes to cope with climate change
https://theconversation.com/new-research-reveals-animals-are-changing-their-body-shapes-to-cope-with-climate-change-166267
ライディング氏は鳥類のくちばしのサイズについて「くちばしが小さい鳥は猛暑を乗り切る可能性が低くなることを示す明確な証拠が見つかった」と特記しており、温暖化が付属肢の大型化を促していると主張。人類由来の気温変化に適応する動物もいる一方、適応できない生物も多数いると語りました。
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