デジタル民主主義で注目の「クアドラティック・ボーティング」とは?

GIGAZINE
2022年08月05日 06時00分
メモ



日本の国会議員選挙を始めとする多くの投票は1人1票なので、「基本的にはこの立候補者を支持してるけどあの立候補者も少し応援したい」といった投票はできません。こうしたシンプルな投票システムとは異なり、自分の関心に応じて重み付けした票を複数の選択肢に入れることが可能な「クアドラティック・ボーティング」、日本語で「二次投票」とも呼ばれる投票システムについて、ニューヨークにあるニュースクール大学で講師を務めているオースティン・ロビー氏が解説しました。

A Simple Guide to Quadratic Voting | by Austin Robey | Aug, 2022 | Tally
https://blog.tally.xyz/a-simple-guide-to-quadratic-voting-327b52addde1

クアドラティック・ボーティングは大きく分けて2つの段階で行われます。最初は「クレジットの割り当て」で、各投票者には予算として「クレジット」が与えられます。例えば1人に与えられるのが100クレジットだとすると、その投票者は100クレジットを1つの選択肢に全てつぎ込むことも、複数の選択肢にクレジットを割り振ることも可能です。

次は、「票の集計」です。集計の際、票は各選択肢に割り振られたクレジットの平方根から算出されます。例えば、100クレジットを全て1つの選択肢に入れた人の票は「10票」で、25クレジットだった場合は5票、4クレジットの場合は2票という具合です。


ロビー氏によると、クアドラティック・ボーティングは少数派を擁護し、多数派との間にある力関係のバランスを取るのに役立つとのこと。なぜなら、少数派が自分の関心事に多くの票を入れることができるようになっている一方で、1つの選択肢にかければかけるほどコストが高くなるので、アンバランスな結果になりにくくなっているからです。また、普通の投票方法に比べてよりコミュニティの感情をくみ取りやすい場合もあります。

一方で、選択肢が2つしかないような場合は重み付けをする意味があまりないので、単純な多数決の方が向いています。また、クアドラティック・ボーティングはあまり広く知られているとは言いがたいので、シンプルなことが好まれるような投票には適しません。

クアドラティック・ボーティングの実際の使用例としては、2019年4月にコロラド州議会の下院が実験的に行った投票が有名です。この投票では各議員に100のトークンが付与され、107の法案に今後2年間に立法する法案の優先順位をつける投票が行われました。なお、1つの法案に自分のトークンを全て入れた議員はいなかったそうです。

by Greg O’Beirne

また、クアドラティック・ボーティングは特にDAO(自律分散組織)などのブロックチェーン関連のコミュニティで熱心に研究されており、イーサリアムの創設者であるヴィタリック・ブテリン氏もブログやインタビューの中でたびたび話題にしています。

ロビー氏は末尾で、「クアドラティック・ボーティングが全てのコミュニティのニーズを満たす唯一無二の投票方式となることはないでしょう。しかし、DAOガバナンスの研究が進むにつれ、場合によってはクアドラティック・ボーティングを採用することが民主的にリソースを分配し、コミュニティの感情を捉え、少数派に大きな力を与える上で有効な方法となることもあるのではないでしょうか」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

Source

タイトルとURLをコピーしました