メモ
あるプロジェクトにチームで取り組む際、リーダーがチーム内の団結力を強めようとして「陽気で前向きな性格の人員」だけを集めたり、チーム内の感情を一つにまとめようと試みたりする場合があります。しかし、アメリカやオーストラリアの研究チームが行った実験では、ポジティブな人だけで構成されたチームよりも、ポジティブな人とネガティブな人が混ざったチームの方が創造性が高いことが判明しました。
Feeling differently, creating together: Affect heterogeneity and creativity in project teams – To – – Journal of Organizational Behavior – Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/job.2535
Rice U. study: Use your team’s emotions to boost creativity
https://news.rice.edu/2021/08/17/rice-u-study-use-your-teams-emotions-to-boost-creativity/
チームの創造性を高めようとするリーダーの中には、「チーム内の多様性」を向上させることに効果があると考えて、さまざまなバックグラウンドを持つ人員を採用する人もいます。しかし、この場合に重視されるのは文化的背景や経歴がほとんどであり、「感情的な多様性」が重視されることは多くありません。
西オーストラリア大学やライス大学などの研究チームは、ポジティブまたはネガティブな精神状態が個人レベルの創造性に影響するとの研究結果が存在するにもかかわらず、チームを構成するメンバーの感情の多様性がチーム全体の創造性に与える影響については、先行研究がほとんど存在しないことに気がつきました。
研究チームによると、「ポジティブな感情」を持つ人は広く柔軟な思考で、広い範囲の情報における創造的なつながりを理解するのに役立つ一方、「ネガティブな感情」を持つ人は批判的で永続的な思考を示し、狭い範囲の情報を批判的に評価して解決すべき問題を特定するのに役立つそうです。「感情の状態が異なるメンバーはそれぞれ別の視点でプロジェクトについて考え、結果としてチームの創造性が高まるのではないか?」と考えた研究チームは、この仮説を検証することにしました。
研究チームは香港の大学で、長期にわたるチームプロジェクトに従事する59のチームを対象にした実験を行いました。59のチームは321人の学部生で構成されており、1チーム当たりの人数は4~7人で、全体の51%が女性だったそうです。
各プロジェクトチームは実験の中で「市場にある代替品と差別化可能な新製品を設計する」ことを含むビジネスプランの作成に従事し、学期を通して毎週会議を実施しました。初期の段階ではチームは新規性と実用性を満たすプロジェクトを計画し、中間段階では実際にフィードバックを受ける提案を発表し、最終段階ではフィードバックに基づいてアイデアを洗練させ、さらに詳細なプロジェクトを作成したとのこと。
研究チームは被験者らに複数回アンケートを行い、感情の状態やどれほどチームが創造的な成果を上げられたのかを報告してもらいました。収集したデータを分析したところ、チーム内における「感情の多様性」が高いほど、チーム全体の創造性が高くなる傾向が確認できたとのこと。
論文の共著者であるライス大学のJing Zhou氏は、「どの時点においても、喜びやインスピレーションといったプラスの感情を経験するメンバーもいれば、欲求不満や心配といったネガティブな感情を経験するメンバーもいます。チームメンバーの感情を均質化しようとするのではなく、感情的な異質性を受け入れるべきです」と述べました。
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