秋篠宮家の長女 眞子様が結婚に際して皇室を離れる際に支給される一時金の受け取りを辞退する意向を示されていると伝えられている。政府では、法的に辞退が可能かどうか政府内で議論される見通しだ。
この問題について、私は、 2020年11月16日 に「眞子様に支払われる1億数千万円の論点を整理」という記事をアゴラに書いている。
さらに、この婚約への疑問が最初に批判され始めたころ、一時金を払うことに伴う問題点を関係者に指摘し、支払いを当然と考えるべきでないといったのは、私である。もちろん、ほかにも同じことを考えた人はいるかもしれないが、少なくとも世間一般でこの話が話題になったのは私の指摘からだ。
ただし、払わないということは、懲罰的な意味ではもちろんないわけで、皇室のためにも眞子様のためにもそのほうがいいのではないかということだった。
ここでは、昨年のアゴラ記事の内容を、少し現状に合わせて変えたものを紹介し、これからの課題についても論じたい。
明治になってから終戦までは、内親王の結婚相手は、全員が宮様だったから、現在のような形の一時金はなかったし、皇室自体が財産を十分にもっていたから、どうとでもなった。困窮華族がケースバイケースでかなりの金額を皇室からいただくことだってあった。
しかし、戦後は旧華族も含めて民間人と結婚されるようになり、また、財産税で皇室財産はほとんどなくなり、国庫による手当が必要になった。そうしたなかで、皇室経済法第7条で、皇族の給与のようなものである皇族費の10倍を限度として一時金が払われるようになっている。
皇族費は、たとえば高円宮妃のような宮家の長だと3000万円ほど、独身だが独立の家計を持っていると1500万円余りだから、1億数千万円が限度となるのである。
もちろん、結婚したとしても、両親の個人財産の続権を失うわけでないのであるが、さほどの財産が秋篠宮家にあるわけでない。年に6700万円ほどの皇族費から貯蓄されたものが主体だし、殿下ご夫妻が受け取られる相続財産もそれほど大きなものにはならないと予想される。
どちらにせよ、国や皇室との関係では、一時金を出すから、あとは自分で責任を持って元内親王としての品格を維持したり、皇室との親戚づきあいで、庶民では考えにくい出費に充ててくださいという体系だ。これまで、それでよかったのは、それなりに経済力のある相手としか結婚されなかったし、離婚されることもなかったからである。
しかし、眞子様の相手が小室氏でなくとも、経済力がない相手との結婚を否定できまいし、元内親王は離婚すべきでないとも言えない。だから、私は問題が起きてから考えるのでなく、普通に起こりうる程度の問題には対処できるように制度改正をしておくべきだと言ってきたが、それができていないのは残念なことだ。
それでもそれは、たとえば、結婚相手が中流以上の家庭出身のそこそこ安定したサラリーマンといったイメージでどうしたらいいかということだった。
ところが、小室氏についていえば、横浜市職員で若くして自殺した父親の残したマンション、遺族年金、祖父からの相続で慎ましやかな生活をしておれば大丈夫だったのだろうが、かなり非常識な生活をしてきた。
たとえば、氏の学歴だけ見ても、インターナショナルスクール、たいへん学費が高い大学として知られるICU、いったん就職をしたメガバンクを辞めての一橋大学大学院、そしてフォーダム大学ロースクール、短期だが私費での語学留学、アナウンサー学校と並外れた贅沢を繰り返してきた。その結果として、問題になっている不規則な借金も生じたわけである。
そして、いまのところは無収入であり、留学から生じた相当多額の借金を抱えている(元の勤め先から借りているともされるが)、将来の見通しもまったく立っていない。さしたる財産もない。こういう状況をみれば、一億数千万円の一時金を受け取られても借金返済や生活費に短期間で消えてしまうことは、杞憂とはいえないわけである。
また制度的には、一時金制度から、年金制度のようなものに転換した方がいいのでないかと私は提案してきた。全額でなく、たとえば、2割程度は先払いにするのがいいかもしれない。
一方、皇族が離婚したらどうなるかというのも制度があまりよく考えられていないのだが、かつての内親王や女王が離婚したらどうなるかも大問題だ。
とくに、今回の場合は、普通のケース以上にその確率は大きいと危惧される。
その場合に、皇族に戻れないのは当然だ(戻れるようにするという考え方もあるが、その場合は一時金制度と両立しない)。
たとえば、名字はどうなるのか? 今回の場合だと、小室の名字をそのまま名乗り続けるなら問題ないが、それは嫌だとすればどうするか。家庭裁判所の許可で新たな名字にするしかないが、その場合に、「秋篠宮」のうち「宮」をとって「秋篠」とすることになるのかもしれない。
また、元女性皇族が子供の親権を取り、その養育費を相手が払わなかったらどうするのかも難問だ。普通の富裕な家庭なら、女性側の祖父母が出すということになるかもしれないが、現在の皇室でそれは難しい。
しかし、そんなことより、小室氏と眞子様が、きちんとした生活設計ができることが結婚の前提だという社会人として当たり前の意識で行動していただければいいのであるが、これまでの小室佳代・圭母子が分不相応な生活を繰り返し、そのたびにイレギュラーな方法で補填してきたことを考えるなら、一億数千万円などすぐになくならないか心配だ。
そうした場合には、たとえば、眞子様が困窮されたとしても、一億数千万円の一時金を受け取ってしまわれたら、さらに国から何かするのは困難であろう。
一方、さしあたっての生活資金は、本当にそうなるか分からないが、小室氏が弁護士として高い給与が取れるそうだし、眞子様ご自身がそれなりの財産をお持ちのはずである。成人以来、年に1500万円ほどの皇族費を眞子様はもらわれ、そんな贅沢されているように見えないので、それなりに貯金になっているはずだ。
そして、小室氏が独力でお子様の生活や教育費を支えられるようになれば、それはご同慶であるが、もし、将来において、眞子様がどうしても皇室の援助を必要とされるようなことがあれば、一時金を受け取っておられないのだし、ということで、配慮することは可能だと思う。
過去に、昭和天皇の次女である鷹司和子さまが、未亡人になったあと、強盗に入られた事件があった。昭和天皇が大変心配されたので、お住まいとして警備がやりやすいように赤坂御用地にある公務員住宅をあてがったと行った前例もある。