トランプは終わったのか?繰り返される希望的観測

アゴラ 言論プラットフォーム

議会襲撃事件の全貌を明らかにするために米議会の下院が設置した特別委員会は、発足から約一年にわたり収拾した事実や証言をもとに、連日のように大々的に公聴会を実施している。

この公聴会の本丸は、ずばりトランプ前大統領である。委員会は合計7回にわたる公聴会を通じて議会襲撃事件が突発的な事件ではなく、トランプ大統領が深く関与している計画的なものであったことを実証しようと試みている。

トランプ氏 公式HPより

ハンチンソン証言の影響

公聴会をめぐる報道についてはトランプ政権の首席補佐官であったマーク・メドゥズ氏のアシスタントであったハンチンソン氏の証言が物議を醸している。彼女の証言によればトランプ氏は後に暴徒化した彼の支持者が武装化していることを示唆する発言をしており、自分自身も支持者とともに議会に向かう意志を示していた。それだけではなく、彼を議会に送迎することを拒否した警護担当に暴行を加えたとの発言も飛び出した。

これらのハンチンソン氏の発言はほとんど伝聞に基づくものであるため、信ぴょう性が乏しい感は否めないが、これまでの証人の中で議会襲撃の最中に最もトランプ氏の近くにいた人物の発言だけに、彼女の証言はメデイアでセンセーションを巻き起こしている。

しかし、彼女の発言が真実であっても、既に反トランプである層をさらに反トランプに追いやるだけで、既存のトランプ支持者への影響力は限定的だと考える。

メデイアはハンチソン氏の発言がトランプ氏を取り巻く状況を変えて、共和党内で反トランプの動きを強め、トランプ訴追が現実味を帯びてきたと息巻いている。だが、これまで公聴会に登場した証人たちの証言内容は既に2021年1月6日の時点で分かっていたことばかりだ。トランプ氏が暴徒化した支持者に同情的であったことは、彼が即座に暴徒を鎮圧しなかったことが示していた。また、自身も議会に向かおうとしていたことを議会襲撃直前の集会で言及していた。

しかし、それでも彼の支持基盤は揺るがずにいる。以前、筆者はこれまでトランプ氏が度重なる追求、スキャンダルから逃れてきたことを記しており、今回も同様の結果になるであろう。

トランプ支持層の内訳

不祥事から不死鳥のように蘇ってきたトランプ氏は二つのタイプの支持層に支えられている。ひとつは積極的な支持層であり、これらの人々はトランプ氏が自身が抱える不満や恐怖心の受け皿であろうと考える熱狂的な支持者たちである。この層はトランプ氏の共和党内での権力の源泉であり、予備選の得票数から党内の3割ほどがその層に区分されると考えられる。

3割は少ないと思うかもしれないが、接戦の予備選であれば彼らがどう投票するかで選挙の結果が事実上決まってしまう。それゆえ、共和党予備選の候補者たちのほとんどがトランプ氏の思想的、行動的な近さをアピールしている傾向にある。

一方、トランプ氏の人格は支持できないが、価値観の優先順位からトランプ支持に回らなければならない人々も存在する。近年、アメリカでは民主党と共和党間の思想的分断が悪化しており、互いへの敵対心が増長している。特に価値観に関する対立においてその傾向が顕著に出ている。

共和党は中絶を違法にし、銃規制をなるべく緩くしたい一方で、民主党は前者を認め、後者に関しては規制だけではなく、特定の銃の保持を禁止する域まで踏み込む勢いである。民主党と共和党はイシューによっては全く違う主義主張をしており、その場合の多くは妥協できないものであるため、自身の主張を代弁する党への忠誠心が高まる。

トランプ氏を消極的に支持する層も、トランプ氏自身は毛嫌いはしているものの、民主党が掲げる政策が絶対に受け入れることができないという点から、最終的にはトランプ一択になってしまう。トランプ氏を痛烈に批判する共和党内の有力者たちがトランプ氏が三度大統領候補になっても支持するとの言及から、反民主党の感情が反トランプの主張を超越していること読み取れる。

党派性の激化が禍して消極的支持者は露骨にトランプに反旗を翻し、民主党に漁夫の利を与えることを躊躇している。それがハンチントン氏の祝言に対し共和党が沈黙を貫くか証言に疑義を呈するといった対応に現れている。

2024年大統領選はどうなる?

2024年大統領選までトランプ氏の影響力が共和党内で維持されるかどうかは、上記の消極的支持層がいかに大きな塊を作れるか次第だ。2016年の共和党予備選のように候補者が乱立してしまえば、3割の岩盤支持層があるトランプ氏が相対的に大きい支持を獲得し、三度大統領候補になってしまう公算が高い。

現時点では反トランプ陣営はまとまれないでいる。既に多くの共和党政治家たちがトランプ氏を差し置いて大統領選への出馬を模索しているが、どの候補も個人的な支持に関してはトランプ氏に到底及ばない。それらの候補は実際にトランプ氏と対峙する際に、自分たちが礼賛してきた人物をどう批判するのか、どうトランプ氏との差別化を図って彼に勝利をするのかという問題に直面する。

共和党内の反トランプ勢力を結集させ、トランプ氏に反旗を翻す候補は出てくるのだろうか。

仮に出てきたとしても、2016年の予備選でトランプ氏が見せたような罵詈雑言を交えた討論スタイルに耐えうる人物でなければならない。だが、この5年間でそのような人材が出てこなかったことを考慮すれば、トランプ一強の状態が共和党内で続きそうな予感がする。

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