自首を生配信 YouTuberの末路 – 阿曽山大噴火

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裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回傍聴したのは、7月14日に東京地裁で行われた近藤佑星被告人(27)の「大麻取締法違反」の初公判。大麻を持って交番に自首するところを自撮りしながらYouTubeで生配信していたと報じられた事件です。

個人的には未だにYouTubeをしっかりと視聴する習慣がないので被告人のことを知らなかったのですが、被告人は「ゆうせい荘」という名前で活動するYouTuberだそうです。

2019年活動を開始して大麻使用や自己啓発に関する動画を投稿。半年間でチャンネル登録者は4万人にも及び、有料のオンラインサロンにも数百人が集まったり、小説を出版したり多才な人物のようです。恥ずかしながら全く存在を知らなかったので、自首する様子をYouTube配信というニュースを聞いた時には「そうやって耳目を集めて話題になろうとするパターンの人かな?」と思っていました。

YouTubeはそうした人が多そうじゃないですか、知らない世界なのでイメージだけど。果たして真相は……。

息子の大麻吸引をYouTubeで知った父親

起訴されたのは、今年5月8日に被告人が東急東横線自由が丘駅改札前の歩道上で乾燥大麻を含む植物片0.31gを所持したという内容。罪状認否で被告人は罪を認めていました。

検察官の冒頭陳述によると、被告人は大学を卒業後にシステムエンジニアとして働き、犯行当時はアルバイトなどをしていたといいます。前科は無く今回が初めての逮捕になります。

大麻は2017年に使用を開始して、犯行当時は毎日大麻を使っていたとのこと。兼ねてから被告人は「大麻合法推進活動家」と名乗ってネットで動画配信をしていたらしいです。

調べに対し被告人は「今年の4月半ばに売人から1g5000円で4gを購入し、持っていたのはその残り。大麻は月に1〜2度購入して毎日使用していた。1年半前から大麻合法推進活動をしていたがムリがあると思い、自首して活動の最後にしよう思っていた」と述べているそう。

自首するところを配信していたのは、大麻合法推進活動家として最後の活動にしようというのが動機だったのです。どういう事なの?と言いたくなりますが、それは後ほど。

法廷には名古屋の実家からやって来たお父さんが情状証人として出廷です。まずは弁護人からの質問。

弁護人「息子さんが大麻を使っているのは知っていましたか?」
父親「2年前に息子がアメリカに行った時に大麻を吸っているのをYouTubeで見て、日本では使ってないと思っていました」

もちろん大麻が合法の土地での吸引動画らしいですが、YouTubeで知るというのが現代風。

弁護人「息子さんが帰国したのは?」
父親「今年の1月半ばです」
弁護人「どんな様子でした?」
父親「疲れて憔悴しきっていました」
弁護人「実家にいて、東京に出たのはいつですか?」
父親「3月頃です」
弁護人「今は実家ですよね。外出などはしているんですか?」
父親「図書館行ったり、土日は喫茶店行ったりジム行ったり」
弁護人「病院の方は?」
父親「2週に1回通院しています」

薬物依存の治療で病院に通院しているそうです。冒頭陳述によれば犯行当時は毎日使っていたという話ですから、使うことが当たり前になっていたのでしょうね。

そして被告人質問。まずは弁護人から。

弁護人「大麻はいつから吸っていたんですか?」
被告人「6年前です」

検察官の冒頭陳述だと4年前という話でしたが、正直に答える被告人。

弁護人「売人とはどうやって知り合ったのですか?」
被告人「治安の悪そうな所で不良の人に沢山声を掛けてですね」
弁護人「その方法はどうやって考えたんですか?」
被告人「持っている人がいるんじゃないかと」
弁護人「いつもその方法だったんですか?」
被告人「逮捕の2ヶ月前が初めてで、3〜4回です」

悪そうな人に声を掛けるのは効率的なのでしょうか…。大麻の所持は犯罪なので声掛けの最中に通報されそうな気も。

弁護人「使った理由は何ですか?」
被告人「バイトで疲れて、リラックスするためです」
弁護人「そんなに疲れていたのはなぜですか?」
被告人「飲食店のバイトは自分が最年長で、みんな二十歳くらいで。帰国して、入った時から変なオッサン入ってきたと思われている気がしたのと、学習塾の方は勉強しない子に教えるのがストレスになって」

掛け持ちで働いていた2つともストレスの原因になっていたみたいです。

弁護人「自首をしたのはなぜですか?」
被告人「大麻をやめるためです」
弁護人「やめるのは自由ですけど、自首するのを撮影したのはなぜですか?」
被告人「他の動画を配信している時、日本では吸わないと約束していたのに視聴者を裏切った罪悪感です」
弁護人「それで配信するというのはどう繋がるんですか?」
被告人「視聴者に対して……YouTubeを引退するというのを納得して欲しかったです」
弁護人「納得って?」
被告人「合法化推進活動の時、僕が大麻について引っ張って行く発言をしていたと思うんですけど、もう日本では活動はムリなので最後に」

この事件が実名報道されるまで被告人の名前は知らなかったけど「ゆうせい荘」というYouTubeチャンネルには数万人の登録者がいて、知っている人にとっては有名人だった訳ですよね。いつも見てくれるファンや視聴者への謝罪が自首の生配信であり、引退の瞬間を見せて気持ちを分かってもらおうとしていたようです。

そのため自首配信で話題になって視聴回数を伸ばそうとか登録者が増えるかもという考えは無かったのです。ニュースを聞いた時に抱いた迷惑系YouTuberなのかな?という印象とは全く違っていましたね。

弁護人「法を犯しているって罪意識はあったんですか?」
被告人「ありました」
弁護人「今後、大麻との関わりはどうしますか?」
被告人「関わるつもりはないです」
弁護人「大麻なしで生活できますか?」
被告人「吸っていない期間の方が長いし、今は通院しているので大丈夫だと思います」

2度と手を出さないと約束をして質問終了です。

YouTubeの視聴者に納得してもらうための生配信だった

続いて検察官から。

検察官「警察官に自分から声を掛けた理由っていろいろあったのかなと思うんだけど、一番の理由は何?」
被告人「自首する方法がそれだと…」
検察官「それをケータイで自撮りしていたのはなぜ?」
被告人「活動をしていた中で、こんな僕にも応援してくれる方がいて、僕の活動を楽しみにしてくれていて。でもそれには応えられないと思っていて。ただ、何も無く消えるのは失礼というか納得してもらえないと思って配信しました」

日本国内で大麻を吸っていた罪悪感だけではなく、動画を楽しみにしていた人のプレッシャーに潰される感覚もあったのかなと受け取りましたけどね。真面目な性格が垣間見えると言うか。

検察官「撮影しながら自首するって今振り返ってどう思います?」
被告人「(大麻所持の)犯罪行為自体は良くなかったと思っています。けど、犯罪をして発覚してない、自首してない人に対して、自首を促す面を考えていたんですけど……それが結果的に迷惑を掛けてしまいました」

動画を上げれば数万回見られる立場の被告人ですよ。それなりの影響力を持つ人物なのです。大麻を使い視聴者にウソをついているという罪悪感もあって、引退は決意していた訳です。せめて視聴者の中に大麻を使っている人がいたら自首しましょう…というメッセージを込めた生配信だったのですね。

そんな言い分を聞いて、

検察官「自首が真の反省と言うなら、反省しているなら自撮りしないんじゃないですか?」
被告人「すいません…ちょっと分からないです」

普通に考えればカメラを回しながらの自首だと、反省していないふざけたヤツという結論になるけど、この被告人に関しては大麻推進活動のラストを配信しているからこその反省とも言えそうですけどね。検察官という立場上それを認める訳にはいかないのかも知れないけど。

検察官「で、今も大麻は合法化にすべきだと思っているんですか?議論をするつもりはないけど」
被告人「ん〜、合法化した方が全体の利益になるとは思います」
検察官「今後大麻は使うんですか?」
被告人「使いません」

大麻にはもう手を出さないけど、合法化した方が全体の利益になるという考えは変わらないようです。

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