トランプ元大統領がツィッターで発信し続けた理由は何だったか覚えていますか?メディアを通すと自分の意図したことにフィルターが入る、だから生の声を直接国民に伝えるということでした。トランプ氏の発信力効果は抜群でツィッターのそのメッセージをメディアが逆に解説するという逆ルートが生まれました。
ただ、トランプ氏はただ、漠然と発信していたわけではなく、自分の信念に基づき、戦略的でかつ、自分で行動に移すことを踏まえていました。つまり、発信力には行動力が伴っていたとも言えます。
禁煙をする際に自分の周りの人に「俺、たばこ止めたから」と公言する人が時々いたと思います。(最近タバコを吸う人に出会わないので聞かなくなったかもしれませんね。)なぜ、公言するかといえば自分の意思を他人に言うことによってその気持ちをより確固たるものにするというわけです。心がくじけそうになったら「俺、みんなに言っちゃったし。3日ぐらいは禁煙しないとな。」になるのでしょう。
発信力を身につけよう、と言われますが、それは単に好き勝手放言をSNSを通じていうことではなく、自身の信念に基づいた行動を発信することで揺るぎないものにする、これが本当の発信力です。発信力についてネット記事の説明には「一方的に押し付けるのではなく、周りの意見も聞きながら、自分の意見を伝え、しっかりと理解してもらうことが発信力」(Edit)とありますが、理解してもらうためには行動で示さなくてはいけないのです。
例えばインスタを通じて発信する場合、写真を撮るという行動が必要です。インスタ映えする写真となるとそのあたりに転がっているわけではなく、自分で発掘するために探しに行く探求心がなくてはできません。もっと若い世代はTikTokの動画配信だと思いますが、これはもっと難しいでしょう。ユーチューバーになりたいという子供が非常に多いのは手軽に金儲けできると思っているからかもしれませんが、ユーチューブで飯を食えるだけ稼げる人は不動産屋の格言、「千三つ商売」(1000人に3人しか成約しないの意)程度だし、それを3年続けてやっている人となればどれだけいるのか、と思います。
「発信力を磨く」というのはそもそも順番が違うのです。行動をみせ、それを発信していく、これが正しい形です。
マーケティングの打ち合わせをやっているとマーケティングの手法ばかりいろいろ意見が上がります。マーケティングという意味合いを十分に理解していないのですね。もともとは商品開発という観点あり、顧客がどんなものを欲しているか、それを自社でどう製造し、販売するか、という大きな一連の流れ全体を言います。ところが多くの議論はその一番最後の「どう販売するか」の中の更に一部分である「顧客に商品の存在をどのように伝達するか」になってしまっているのです。
私は集合住宅販売のマーケティングをやっていた中で最も時間を費やして研究したのが「我々の顧客は誰なのか?」であります。立地や諸条件、全体プランの中で無から有を生み出すにあたり、購入層を作り出すには「若い年層」「プロフェッショナルカップル」「子育て終了組」「リタイア層」「投資家層」のどこの層を狙うか、これでプロダクトから顧客とのつながる手法まで大枠が決まってきます。
つまり発信力は最終手段であり、その結果、それに「おっ!」と共鳴してもらえないと発信そのものが無為になったり時として炎上してしまうのです。
ではSNSが強いマーケティング力をもつか、といえばそれは確かにあります。飲食店などでは発信力があると顧客が圧倒的に増える傾向はあります。ただし、店がそれに見合うサービスを提供しないと「なーんだ!」になってしまいます。つまり発信力が逆進してクレームになって跳ね返ってくるわけです。私の感覚としては飲食店などが強いSNSマーケティングを施すと1-2割程度がリピーターとなりますが、あとは「一元様」になります。クーポンビジネスが廃れたのはターゲットマーケティングとならず、誰彼構わず値引きすることで急激な売り上げ増にサービスなどが対応できず、全般のクオリティが落ちて逆効果になったケースが続出したからです。
発信力はビジネスに限らず、個人でもたやすくできる時代になりました。しかし、結局人気がある発信者は発信内容にリアリティがあり、安定的に発信していることが大事だと思っています。発信を継続することで個人の才能を開花させることも可能です。「へぇ、〇〇さん、そんなことできるのね?」と言われれば嬉しいものです。発信して褒められることで人間やっていてよかったと思うときですね。
発信力はビジネスも個人ベースでも有益なツールで、それをうまく使いこなせば会社や人の才能が開花しやすくなることは間違いなさそうです。
では今日はこのぐらいで。