菅首相退陣の引き金はコロナ失策 – 舛添要一

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9月3日、菅首相が突然退陣を表明し、マスコミの関心は自民党総裁選に集中しているが、新型コロナウイルスの感染も忘れてはならない。そもそも菅首相退陣の引き金を引いたのは、コロナ対策の失敗である。ワクチン接種の遅れにも、国民は不安と不満を感じ、それが菅内閣の支持率低下につながったのである。

東京では新型コロナウイルスの新規感染者が減り続けているようで、おそらくピークアウトしていると思われる。しかし、全国的に見ると、まだ感染が続いている。

 とくに病床不足は酷く、全国で13万5千人を超える人が入院できずに、自宅放棄されている。世界有数の医療資源を誇る国としては恥ずべきことである。

 日本政府は、デルタ株の脅威を過小評価していたと言わざるをえない。従来のコロナウイルス株の1000倍の量があり、感染力が強いこの変異株については、欧米など他国で先に蔓延しており、きちんと情報を入手していれば、事前に対策を講じることができたはずである。

 2009年の新型インフルエンザ流行のときに、私は厚労大臣として対応したが、その当時はWHOや諸外国との情報交換はもっと頻繁であった。外国の保健大臣が直接私に電話してきて、情報を交換し、協力体制を構築したものである。

 この感染力の強さを考えると、全く新たな病原体が出現したくらいの認識で対応する必要がある。水疱瘡と同じくらいの感染力だと言うが、そうならば他人との接触を極力断つことが有効な対応策となる。

今は国家非常時であり、感染拡大を招くような個人の行動は「公共の福祉」に反する.従って、これを法的に規制しても憲法には違反しない。

 新形コロナ対策については、政府の無策は言わずもがなであるが、国会の怠慢もまた厳しく問われねばならない。他の先進民主主義国では、必要な法律を作ろうとする議員が出てくるはずであるが、日本の国会議員は冬眠したままである。国会の怠慢もまた指摘されねばならない。

 東京都ではコロナ病床に余裕が無くなっており、自宅療養中の患者が、症状が急変して死亡するケースも相次いでいる。コロナの場合、肺炎が重症化すれば命に関わる。従って、医師や看護師が常駐し、体調を常にモニターできる設備の整った医療施設で治療をする必要がある。軽症者が急に重症化する可能性があることが問題なのである。

 こういう状況に対して、政府や東京都は十分な対応を行っていない。たとえば、国立病院機構(NHO)、地域医療機能推進機構(JCHO)の病床は十分に活用されていない。後者の理事長は、政府のアドバイザーである尾身茂会長である。

1昨年末に武漢で新型コロナウイルスが流行し始めたときに、中国はプレハブの大型仮設病院を作って対応した。東京でもそれは可能なはずである。

 政府や小池都知事は酸素ステーションの設置を提案しているが、病院で酸素吸入をするのが本来の医療であり、酸素ステーションは場当たり的な弥縫策にすぎない。

 どうして、日本では対策が後手後手、細切れ、たこ足的なものになるのだろうか。体系的、長期的な政策を立案するグランドデザインを描く能力のない政治家やリーダーが多すぎる。これでは、日本国民の生命と財産を守ることはできない。

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