エジプト発、超重量級カップ麺を食べる

デイリーポータルZ

エジプトを代表する料理の一つに、コシャリというのがある。コメ、パスタ、豆類などを一緒くたに混ぜ合わせて、トマトソースとスパイスなどで味つけし、フライドオニオンを散らした庶民料理。炭水化物が盛り盛りで、聞くだけで少し腹が満たされそうな。それでいて悪魔的に食欲を刺激してくるようなジャンクフード。このご時世、エジプトまで食べにいくのは叶わないけど、現地発の「インスタントコシャリ」が日本上陸したそうなので挑戦してみたい。

エジプト直輸入の”手触り”

コメ、唐辛子、たまねぎなどが悪い夢みたいに舞っている

Amazonで注文したエジプト産のインスタントコシャリは、12個セットで4000円。決して安くはない。こういうのを大人買いするのは勇気がいるなと思いながらもバラ売りは見つけることができず、やむなくダースで購入である。しかしこの外箱は猛烈にかわいいな!色使いとか底抜けなポップさとか、国産食品にはないセンスで、これだけで少し元がとれた気がした。

早速、箱からひとつ取り出してみる。手にとってみてまず気が付くのは異様なサイズ感だ。思わず「えっ」と声が漏れた。

想像の3割増にでかかった

カップ麺業界の大先輩と背くらべする。身長はほぼ同じだが、体のぶ厚さが全然違う。

カップ麺界の大砂嵐関と呼ぼう(エジプト出身の元大相撲力士)

見た目にたがわず、重さのほうも相当ずっしりくる。パッケージによれば重量は155g。”大盛り”や”特盛り”をうたう日本のカップ麺でも130g~140g程度なので、そのスケール感が知れる。

ひとつ余談ながら、made in エジプトのこいつは、アルミのふたの溶着がどうも甘い。しかもときにカップの中心から微妙にずれて貼りつけられているせいで、隙間から粉っぽいものが漏れ出ている個体もあった。日本ではあまりお目にかからないこの小さなほころびが、近ごろ懐かしい”外国の手触り”のように感じられて、なんとなく得した気分になった。

あんた遠いところから、ようおいでなすったなあ
カップを開けてみると、細かい粒々がぎっしりと敷き詰められている
粒々は4種類に分類できる。上から時計回りに、バーミセリパスタ、レンズ豆、コメ、マカロニ。漢方ではないよ

埋没していた小袋も、発掘しておこう。

左からフライドオニオン、チリペッパー、粉状のトマトソース

味つけの基本は右端の小袋、トマトソース。これは先にカップの中に振り入れておく。立ち上る香りから、すっぱくて香辛料のきいた味がはっきりと想起され、ぎゅーっと唾液腺が刺激される。粒子が異常にこまかくて、袋を破ると空中にもわもわとソースの砂埃が舞っていた。

そしてむせた

あとは熱湯をたっぷり注いで5分待てばOKである。 

大きさも形もばらばらの粒々が、ぜんぶ同時にきちんと食べごろになるというのは、意外とすごいことなのかもしれないと、ふと思った
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コシャリには一皮剥けてほしいと思っているんだ、勝手ながら

冒頭からコシャリとは初対面のような体で話を進めてきたけど、コシャリの存在をはじめて知ったのは4,5年前だったと思う。当時はちまたでチーズタッカルビとかスパイスカレーといったグルメが流行りはじめたころだったかも。そんな折に”次のブレイク枠”として耳にしたのがコシャリだった。話を聞けば、ボリュームがあって味が濃く、異国情緒が感じられて。確かに若者好きする、流行の要素を備えているメシだなと思った。

一度、人に連れられて東京にあるコシャリ専門店に行ったことがある。はっきりと味は思い出せないけど、なるほどこれはいいものだ、ブーム到来で気軽に食べられるようになるのは大歓迎だと思ったことを覚えている。

写真を見返すと、トッピングがかなりわんぱく

しかしである。以来、それとなく日本におけるコシャリの動向に気を配っていたのだが、その後は待てど暮らせどコシャリ界隈からの続報は飛んでこなかった。同じ異国飯のブレイク枠に入っていたルーロー飯やビリヤニがどんどん出世していくなか、エジプト方面からはとんと音沙汰がない。

そんな中でついに届いたのが、このインスタントコシャリ上陸のニュースなのである。一度食べただけで古参ファン面するのは憚られるが、一応5年前からコシャリにやきもきさせられた身としては、この機にガツンとメジャーデビューを果たしてほしい。そういう応援の気持ちをひそかに込めながら、今この記事を書いている。がんばれがんばれコシャリ。つぎはお前の番だぞ。

食べても減らない魔法の食事

タイマーがピーピー鳴いたのでふたを取る。

おお、粒々はふっくらと戻っている様子

マカロニやショートパスタがたっぷり入っているので”カップ麺”と強弁してきたけど、コシャリにスープはない。見た目だけでいえば、色味の少ないチャーハンみたいな感じかな。あるいはしっとりと水分を残しているので、リゾットのほうが近いだろうか。”あといれ”の小袋も全部入れて、かき混ぜてゆくと、少しこもったようなスパイシーな香りが部屋を支配する。

コシャリとは現地の言葉で”混ぜる”の意味らしいので、それはもうしっかりとかき混ぜるのがいい。いただきまーす

 あー、うんうん。なるほど。

 

記憶の中の味とは違う気もするけど、確かにうまい。第一に、味のベースはトマトだから安心できる美味しさだ。そこにすっぱ辛い風味が非日常感を演出し、フライドオニオンのざくざくした食感も面白い。総じて、インスタント食品としては十分すぎるくらいおいしいと思った。物珍しさも加点対象とすれば、万人に一度は買ってみてとおすすめできる。

わっさわっさわっさー

ただ正直なところ食事体験として印象的なのは、味よりもやっぱり量のほうだ。マカロニが柔らかくつるつるしているので、案外すいすい食べられるのだけど、途中で「食べても食べてもなかなか減らない」ことに気が付く。

着実に一口ずつ食べ進めるのに、カサが全然減っているように見えない。カップの底のほうで残った水分をマカロニたちが吸い上げて膨張しているのだろうか。おかしい。可笑しくて自然と笑いがこみあげてくる。

よし食ってやったぞーと、食後にちょっとした達成感が味わえるくらいには量が多い
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コシャリにあうトッピングは紅生姜

誤解のないよう再度強調しておくと、コシャリの味はいいのだ。ただこってりしていて量が多いだけに、後半にちょっと飽きが来るのは否定できない。これはあれだ。このボリュームで、しかもスープの処理がいらないから登山とか海遊びとか、カロリーをつかうアウトドアのアクティビティなんかとは相性がいいのではなかろうか。

暖色系のパッケージも青空に映えることだし

ではふだん家で飽きずにおいしく食べようと思えば、どうするか。それはもう、トッピングによるアレンジということになる。東京の専門店でたべたときもトッピングがふんだんに乗せられていたし、たしかメニューブックにもずいぶんいろんなバリエーションのトッピングが用意されていたはずだ。

家庭の冷蔵庫にあるものでいくつか試してみたが、基本的にコシャリの味がこってりしているので、例えば清涼感のある紅生姜は結構あう。

くせのある食べ物に、くせのあるトッピング

 もともとトマトの酸味がはっきりしているので紅生姜の強い風味も違和感がなく、うまい具合にくどさを和らげてくれるので、半分くらい食べたところでトッピングするとさっぱりして味変として非常に効果的だ。

さっぱりという意味では、大葉を刻んだやつもおいしい。

色身もいいですね

大葉はたっぷり入れれば入れるほどフレッシュでうまい。逆に言うと少々の大葉ではコシャリの強烈な味にかき消されてしまうため、思い切って20枚くらい刻むのがおすすめだ。

合わせ技で、大葉とともに小葱もいい

 勢いに乗って、冷蔵庫につくりおきしてあったトマトとオクラのマリネもいってみよう。

角切りトマトとゆでオクラにバルサミコ酢とオリーブオイルをあえたもの

生トマトが合うのは当然として、オクラの青いえぐさがスパイスの風味によくマッチしている。これもなかなかいける。

グリルチキンは完全に見た目通りのうまさだ。

とりむね肉を極弱火にかけてほったらかしにする、通称30分チキン。味付けは薄く塩するだけ
味の面でも栄養価の面でも、これが標準スタイルと言っていいくらいだ

そしてトッピング界のプリンス、たまごも当然のようによく合う。

試したのは温泉卵だけど、生卵とか、ゆで卵もありだと思う

濃い味に飽きた頃に卵のまろやかさが加わると、途端にスプーンが進むようになる。

妻がコシャリに興味を示していたのでシェア。おかげで、コシャリは1カップを半分こするのが個人的にベストでジャストな適量であることがわかった

お弁当にもどうぞ

その後、いろんなトッピングをちょっとずつ試していくうちに、軽めの副菜をいくつか並べて一緒に食べるというスタイルが一番いいという結論に行き着いた。これなら最後までおいしくコシャリを食べ切れるし、栄養バランスもとれるからだ。

 

それをさらに応用するとこうなる。

会社でコシャリ弁当

まだしばらくコシャリの在庫が持ちそうなので、暑い夏をパワー満点のコシャリ弁当で乗り切っていく所存である

 

 

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