立民が維新以下にとどまる原因 – PRESIDENT Online

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野党第1党の立憲民主党の支持率が低迷している。政治ジャーナリストの鮫島浩さんは「自民党・経済界の対抗軸だったはずが、その理念を失って迷走している。最大の原因は、選挙を連合に頼っているからだ。連合への依存をやめられなければ、参院選で惨敗して、分裂・解党に追い込まれる可能性が高い」という――。

記者会見する立憲民主党の泉健太代表=2022年1搈28日、国会内記者会見する立憲民主党の泉健太代表=2022年1月28日、国会内 – 写真=時事通信フォト

野党共闘で鮮明になった連合の「野党離れ」

労働組合を束ねる最大組織・連合が立憲民主党を突き放し、政権与党に急接近している。

立憲民主党は連合に見捨てられないように懸命にしがみついている。野党第1党のメンツをかなぐり捨て、政権与党へにじり寄る連合の背中をなりふり構わず追いかける姿はもはや喜劇のようだ。

連合は二大政党政治において自民党と対抗する民主党をずっと支援してきた。民主党政権を誕生させた立役者の一人である。民主党分裂後もその流れを汲む立憲民主党と国民民主党を支援してきた。

ところが、昨年10月の衆院選で立憲民主党が共産党との「野党共闘」を進めたことに反発。衆院選目前に連合初の女性リーダーである芳野友子会長が就任した後、共産党との共闘への反発をいっそう強め、共産党と手を切らない限り選挙で支援することはないという姿勢を鮮明にした。

今年1月には今夏の参院選ではどの政党も支持せず「人物本位」で選ぶ基本方針案を決定。共産党を念頭に「目的が大きく異なる政党や団体等と連携・協力する候補者は推薦しない」こともあわせて示し、野党各議員に「共産党との決別」を迫ったのである。

芳野会長の「野党離れ」は徹底している。連合は年始に催した新年交歓会に岸田文雄首相を招待し、自民党の首相としては9年ぶりに出席した。岸田首相は賃上げに取り組む姿勢を表明し、連合に「連携」を呼びかけたのだ。

これに対し、立憲民主党の泉健太代表はあいさつの機会さえ与えられなかった。立憲民主党から自民党への鞍替えを目指す連合の姿勢は隠しようがない。

選挙の人手とノウハウ…立憲民主党が連合にしがみつく理由

立憲民主党は連合のご機嫌取りに躍起だ。泉代表は衆院選で共産党との間で合意した「野党共闘」は終了したと表明。連合との連携を最優先して参院選に臨む考えを鮮明にしている。

連合にとことん冷淡に扱われながらしがみついているのはなぜか。一言でいうと連合傘下の労働組合の力を借りなければ選挙活動ができないからだ。

連合(日本労働組合総連合会)・芳野友子 連合会長ROOM
連合(日本労働組合総連合会)・芳野友子 連合会長ROOMより

民主党幹事長経験者はこう打ち明ける。

「実は連合の票はさほどでもない。連合に依存しているのは選挙に必要な人手とノウハウ。選挙事務所の設置、ビラやチラシの作成・配布、ポスター貼り、選挙カーの手配、運動員の確保、選挙資金の管理……。公職選挙法を守りながら選挙活動をするには、多くのスタッフと選挙実務に精通した人材が不可欠。自民党は地方議員や業界団体がフル回転するが、立憲民主党は連合に依存している。連合なしに選挙活動が成り立つ国会議員はほんのひと握り。連合に見放されたら選挙期間中にポスターを貼り終えることさえできないかもしれない」

それでも小沢一郎、鳩山由紀夫、菅直人、岡田克也各氏ら大物議員が代表や幹事長を務めている時代は連合と対等以上な関係を維持してきた。彼ら党重鎮は選挙地盤が強く、連合にも強気に対峙(たいじ)できたからだ。

連合依存を続ければ立憲民主党は埋没する

だが、衆院選惨敗で枝野幸男代表が引責辞任し、47歳の泉氏が新代表に就任。党執行部経験のない西村智奈美氏を幹事長に、小川淳也氏を政調会長に起用し、世代交代が一気に進んだ結果、連合との交渉力は大幅に低下。尻に敷かれるどころか、縁を切られそうなのに付き従うという無残な姿をさらけ出している。

NHKの世論調査によると、立憲民主党の支持率は低迷し、ついに衆院選で躍進した日本維新の会に追い抜かれた。最新の結果では若干回復したものの、各社の世論調査を見ると下落トレンドは変わらない。維新は「打倒・立憲」を鮮明に掲げ、自民党を倒すよりも立憲民主党から野党第1党の座を奪い取ることを優先している。

野党共闘を支持してきたリベラル層からも連合べったりの立憲民主党に愛想を尽かす声がネットに広がり、共産党やれいわ新選組への期待感が高まっている。このまま連合依存を続ければ立憲民主党は埋没し、参院選で惨敗して分裂・解党に追い込まれる可能性が高い。

立憲民主党は連合依存から脱却し、新しい政党像をつくらなければならない。その道を探るため、まずは野党第1党と連合の歴史を振り返ってみよう。

「野党・労働界の結集」と「政権交代」が目標だったが…

連合は1989年、旧社会党系や旧民社党系の労働団体が寄り集まって発足した。自民党単独政権に対抗し、野党が結集して政権交代を実現することを目指したのである。

自民党を飛び出した小沢氏らと連携して1993年には8会派による非自民連立政権(細川護煕政権)を誕生させた。以来、自民党と対抗する新進党や民主党など野党第1党を支持する立場を貫いてきた。

自民党は大企業を中心とする経済界と結びつきが強い。これに対し連合は「労働者の代表」を標榜(ひょうぼう)し、自民党・経済界と対抗する「野党・労働界」の勢力結集を第一の政治目標としてきた。

旧社会党を支持してきた公務員や教職員などの労働組合と、旧民社党を支持してきた自動車や電機など大企業の労働組合には外交・安保政策で温度差があったものの、「労働者の賃上げ」という究極の目標で足並みをそろえてきたのだ。

この状況は2000年代に入って変遷していく。小泉純一郎政権で竹中平蔵経済財政担当大臣が旗を振った「小泉・竹中構造改革」により労働市場の規制緩和が急速に進み、大企業は正社員の新規採用を抑制して派遣など非正規労働を急増させた。

製鋼所工員が資材をクレーンにかけている※写真はイメージです – 写真=iStock.com/Mlenny

連合は「労働者の代表」とは言えない

旧民社党系の大企業系労組は組合員である正社員の待遇維持を優先し、非正規労働を増やす経営陣に接近。「非正規」よりも「正社員」の雇用や給与を守る姿勢を強めたのである。これによって非正規労働者の声が政治の現場へ届きにくくなった。

小泉・竹中構造改革は、公務員や教職員の削減も加速させた。これにより旧社会党系労組の組合員は減少し、連合内部での発言力も大幅に低下。連合執行部は経済界に近い旧民社党系労組の出身者で固められるようになり、経済界と連合の一体化が進んだのである。

発足時は800万人を超えた連合の組合員数は700万人を切り、この国で働く全労働者の1割そこそこでしかない。しかも連合は大企業の正社員の待遇維持に傾き、もはや「労働者の代表」とは言えないのが実態だ。

にもかかわらず、政権与党は政府の審議会のメンバーに連合幹部を加えて「労働者の意見を聞いた」とし、経済政策や労働政策を決定している。政権与党が大企業に有利な政策を進める「アリバイづくり」に連合は利用されてきたのだ。

連合執行部は「労働貴族」と呼ばれ、全国の労組から上納させた組合費を使って派手な社交を重ねているとも批判されてきた。芳野会長をはじめ現執行部が労働者の声を代弁しているとはとても思えない。

その連合執行部の言いなりになっているのが現在の立憲民主党である。労働者の支持が離れていくのは当然だ。

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