メモ
飲み過ぎた翌朝に生じる吐き気や胸やけ、頭痛などの「二日酔い」は、お酒を飲む人の大半が経験する通過儀礼です。二日酔いとして一般的な体の不調にくわえて一部の人が経験するという「不安」について、イギリス・ブリストル大学で心理学について教えるクレイグ・ガン氏が解説しています。
‘Hangxiety’: why some people experience anxiety during a hangover
https://theconversation.com/hangxiety-why-some-people-experience-anxiety-during-a-hangover-176285
ガン氏によると、二日酔いから体が回復する過程では、病気やケガなど体に負荷が掛かっている時と似たような「生理学的なストレス」が生じるとのこと。この生理学的なストレスによって免疫系に変化が生じるだけでなく、ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールの分泌が促進され、血圧や心拍数が上昇します。この「コルチゾールが分泌されて血圧や心拍数が上昇する」という現象は、不安を感じている際にも生じるとされています。
二日酔いの際には脳にも変化が生じており、不安を抑制する効果があるドーパミンに関係のある脳機能が低下するという研究結果が存在します。二日酔いはストレスと睡眠不足のコンボで気分を落ち込ませる上に認知機能を低下させるので疲労やストレスを感じやすくなるわけですが、不安抑制効果のあるドーパミン関連の脳機能が低下することによって、疲労やストレスが生み出す不安に立ち向かうのが困難になっている可能性があるとのこと。
ガン氏自身が2021年に発表した研究によると、二日酔いを経験している被験者の多くが「気分がネガティブになった」「感情のコントロールが困難だった」と回答したほか、実際にポジティブな感情やネガティブな感情を誘発する画像を表情を殺しながら見てもらうというタスクを行ってもらったところ、二日酔いの場合は感情のコントロールにより多くの労力が必要なことが示されました。
また、ガン氏の2020年の研究では、二日酔いの被験者は「記憶した文字を思い出す」といったワーキングメモリや思考の柔軟性などを必要とする課題において、パフォーマンスが低下することが確認されています。こうしたワーキングメモリなどには不安を抑制する働きもあるため、ガン氏は「二日酔いになると気分が悪くなる上、立ち直ることも難しくなる」と主張しています。
しかし、2019年の研究によると、「二日酔いになると不安を感じる」と回答した人は12%と、割合的にはわずかです。既存の研究の中には、痛みを誇張したり痛みから最悪の事態を想像したりといった痛みを「大げさ」に扱う人は不安を感じる傾向が強く、二日酔いにもなりやすいという研究結果が存在するため、このことが二日酔いで不安を感じる人と不安を感じない人を分けているのかもしれない、とガン氏は推測しています。
また、普段から不安な気持ちに駆られることが多い人も二日酔いで不安になる可能性が高いとのことで、ガン氏は瞑想やマインドフルネスのような不安に対処するためのテクニックや、飲みに行く前に翌日の計画をちゃんと立ててストレス要因をあらかじめ排除しておいたり、二日酔いになったらなったで友人と二日酔いについて語り合って絆を深めたりといった対策について推奨しつつ、「飲酒を完全にやめるか、ほどほどのところで抑えておくことが二日酔い対策としてベストです」とコメントしています。
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