レム睡眠は「脳を温める」ために存在する可能性

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睡眠にはレム睡眠ノンレム睡眠があり、レム睡眠は睡眠中でありながら脳が覚醒状態にあり眼球の急速運動も生じます。そんなレム睡眠には「記憶や学習を強化する」という役割があるとされていますが、新たに「レム睡眠は脳を温めるために存在する」という仮説が提唱されました。

Sleep function: an evolutionary perspective – The Lancet Neurology
https://doi.org/10.1016/S1474-4422(22)00210-1

REM Sleep May Exist to Heat Your Brain Up From The Inside : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/rem-sleep-may-exist-to-heat-your-brain-up-from-the-inside

レム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返す睡眠パターンは主に鳥類や哺乳類でみられますが、近年では魚類は虫類でも類似した睡眠パターンがあるという研究結果が報告されています。また、かつては「夢を見るのはレム睡眠の時だけ」といわれていたものの、実際はノンレム睡眠の最中もレム睡眠の時とは異なるパターンの夢を見ていることがわかっています。

一般に、ノンレム睡眠は脳から毒素を取り除く役割を持っており、レム睡眠は記憶を整理して学習したことを定着させる役割があるという仮説が優勢です。ところが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の睡眠科学者であるジェローム・シーゲル氏は、「レム睡眠は脳を温めるために存在する」という仮説を提唱しています。


シーゲル氏は自然界では「体温の低い恒温動物ほどレム睡眠の時間が長く、体温の高い鳥類などでは全体的にレム睡眠が少ない」と指摘。また、北極に生息するトナカイは夏よりも冬の方が43%も睡眠時間が長く、狩猟採集社会の人々も寒い季節は1時間ほど長く眠るとのこと。

この体温とレム睡眠の関連性に着目したシーゲル氏は、レム睡眠は「脳を震えさせるようなもの」であり、ノンレム睡眠中に下がりすぎた脳を温めるために存在するのではないかと主張しています。実際、レム睡眠の間は脳が活発になり温度が上がるそうです。

シーゲル氏は、「レム睡眠は、ノンレム睡眠時の代謝低下やエネルギー消費の減少に伴う体温低下によって引き起こされる、サーモスタットのように制御された脳を温めるメカニズムと考えられるかもしれません」「そしてレム睡眠は、脳温を覚醒時の体温近くまで上昇させた後で終了するのです」と述べています。


また、シーゲル氏は「レム睡眠は記憶や学習を定着させる役割を持つ」という従来の仮説について疑問点があると指摘。ノンレム睡眠で毒素を流した後にレム睡眠で脳を活動させることはやや不合理と言えるかもしれず、レム睡眠と認知能力の間に明白な関係はないと主張しています。

レム睡眠と認知能力の関係性に疑念を投げかける事例として、シーゲル氏は「カモノハシのレム睡眠は人間を含むどの動物よりも長く、1日の睡眠で最大8時間に及ぶ」という事実を挙げています。確かに、「カモノハシが記憶や学習のために最大8時間ものレム睡眠を必要とする」という主張はやや苦しいかもしれません。しかし、カモノハシが属する単孔目は哺乳類とは虫類の特性を併せ持っており、不完全な恒温性で体温調節能力が低いことを考えると、「カモノハシは睡眠中に脳温を維持するためにより多くのレム睡眠を必要とする」という仮説には説得力が生まれるとのこと。

一方、レム睡眠の兆候を示さない哺乳類にはイルカが挙げられます。イルカは脳の半分だけが交互に眠る半球睡眠を行っていることから、シーゲル氏は一方の脳が「ヒーター」の役割を果たしているため、レム睡眠で脳温を上げる必要がないのではと推測しています。


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2022年09月21日 23時00分00秒 in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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