さまざまな領域のテックにおけるトップクラスの研究開発者、経営者たちが集まるテックカンファレンス「TOA(Tech Open Air)」が、今年も7月4〜7日にベルリンにて開催されました。
ベルリンはヨーロッパでも多くのスタートアップが集まる都市で、TOAにはヨーロッパ全土はもちろん、アメリカ、中東、アジア圏の関係者が集結します。期間中は講演会や会議だけでなく、音楽イベントなども開催。「欧州のSXSW」と呼ばれるような、エッジの効いたイベントです。
TOA日本公式パートナーを務めるインフォバーン代表取締役会長 小林弘人氏と、今年のTOAツアーに参加した各位による報告会が、7月30日に共催となるSHIBUYA QWSにて開催されています。
最新AI開発者たちのトークの中身
今年の焦点はやはり生成AI。両巨頭ともいえるOpen AIとGoogle Geminiそれぞれの開発者が登壇したこともあり、ビッグテックによる次のステップを多くの人が気にしていることが伺えました。
もちろん両陣営とも現時点で公表できることは限られているわけですが、テキスト・画像・音声・動画などの複合データを一気処理するマルチモーダル化と、複数AIによってより高度な処理を行なうエージェント化に向けて進んでいることは明白。会場の熱気も想像以上のものがあり、入場しきれないほど聴衆を集めていました。
欧州では2026年から「欧州AI規制法」が施行され、AIの倫理的活用やリスク回避を目指しています。TOAではこういった話題にもフォーカスして、アメリカのビッグテックとは違った方向性を探る動きが垣間見えました。日本がAIに対してどう対応していくのかを考えるためにも、この視点は重要でしょう。
テック界のVIPと友達に
AI以外にも、クライメート(気候)、医療、フード、モビリティ、宇宙など、TOAでは幅広いテックを扱っています。
欧州初の民間ロケット企業、キノコ培養でタンパク質生成を目論むスタートアップ、地球外知的生命体を研究するハーバード大教授など、多岐にわたるスピーカーが登壇し、いずれも大いに関心を集めていたそうです。
しかもTOAの素晴らしい点は、こうしたテックの最先端にいる人物たちと気軽にコミュニケートできること。スピーチが終わっても会場をふらふら歩いていて、質問をぶつけると気軽に答えてくれるなんてことはザラ。隣にいる人物に適当に話しかけてみたら、その人が超有名企業のトップ開発者だったりして、そこから数時間話し込んで友達になったり、具体的なビジネスの話にまで進展するようなことが当たり前だそうです。
アメリカのテックカンファレンスと比べると規模も程よく、人とコミュニケートしやすいフレンドリーな雰囲気が漂っている点がTOAの特徴です。難しい講演だけでなく、夜になるとクラブイベントも頻繁に開催されていますし、そういった場でテック界のVIPたちとコミュニケートできるだけでも、足を運ぶ価値があるかもしれません。
また、ドイツのテック企業へのアテンドもあります。今年はゲノム研究の最先端をいく「ベルリン ヘルス イノベーション研究所」や、クルマだけでなくあらゆる移動手段を研究するモビリティ研究施設「The Derivery」、バイエルのヘルス&農業研究所「Leaps of Bayer」などに足を運び、その研究の実情を体感できたそうです。
日本が目指すべき方向は?
ツアーに参加した日本のテック関係者からは、以下のような感想が挙がっていました。
「自分の専門分野と専門外分野がつながっていくきっかけになった」
「世界のテックの加速度的な変化を感じた。実装化スピードが確実にアップしている」
「かつてはのんびりしていたスタートアップも、今はグッとシリアスになっていて、ビジネスのスピード感が上がっていることを感じた」
「日本の企業は次の一歩を模索している状況。うまく世界とつながる方法を見つけたい」
「世界中からいろいろな考え方を持った人が集まるTOAのような場所は重要」
「生成AIも3年目以降に突入して落ち着きを見せてきた。これからは初期の熱狂だけでなく、倫理や信頼性を確保していくことが重視される」
講演を聞くだけでなく、参加時間のすべてに価値があるTOA。
テックの未来形を知りたければ、来年の開催にはぜひ足を運びたいところ。