これからはDTMも”空間”化する時代になるかも…。
今年2月2日にアメリカで発売になったばかりのAppleの空間コンピューティングデバイス「Vision Pro」。現在、話題沸騰中のこのデバイスにロンドン拠点のソフトウェアデベロッパー・Hit’n’Mixが開発・販売するDAW「RipX DAW」が近日対応することが発表されました。
RipX DAWは、昨年11月に世界初のAI DAWとしてリニューアルされたDAW。AIによる音源分離機能やピッチ補正などのオーディオ編集機能を搭載していますが、注目すべきはStable AudioやMusicLMなど音楽生成AIによって作成された音源をDAW内で独自にカスタマイズできるという点です。
RipX DAWは、音楽生成AIが作成したトラックを読み込むとそのトラックを構成する音をパートごとにノート(音符)に変換します。これによりユーザーは、MIDIのようにAI生成トラックの任意のパートを自由に編集しながら作り変えることが可能。また、この機能はAI生成トラックに限らず、すべてのオーディオファイルに適用されるため、たとえば、既存の音源からギターパートを抜き出して独自にアレンジを加えながらリミックスを作成することも可能です。
今回発表されたVision Pro版のRipX DAWは、先述した従来のRipX DAWの機能を引き継ぎながら、3D空間でのDTMを可能にしたもの。Vision Pro版のRipX DAWでは、従来のDTMで必須だったMIDIキーボードやコントローラー、マウスなどを使用せずに自分の手のジェスチャーだけで音楽制作を行なえます。
また、Vision Pro版のRipX DAWでも、通常のRipX DAWと同じく波形は表示されず、読み込んだオーディオファイルは全てノート(音符)として、3D空間内に表示されます。Hit’n’Mixは、Vision Pro版「RipX DAW」での新感覚の音楽制作体験について、”まるでそこにメロディがあるかのように、歩き回ってメロディと対話することができる”と説明しています。
ちなみに空間DTMならではの機能として、3D空間の背景画像のインポート機能も搭載しているとのこと。まだこの機能の詳細は明らかになっていませんが、おそらくZoomの背景画像インポート機能と同じように自分好みの空間を演出できるものだと推測されます。
もし、そうであれば、世界の有名レコーディングスタジオの背景をインポートすれば、プロのアーティストと同じスタジオ環境を自宅で仮想体験できるようになるかも。
Vision Proリリース時には、人気DJソフト/アプリの「Djay」の対応が話題になったのは記憶に新しいところ。その時に近いうちに”空間DAW”がリリースされることを予想したのですが、まさかこんなにもすぐに発表されることになるとは…。こうなると次はApple純正DAW「Logic Pro」のVision Pro対応にも期待せずにはいられません。
近年、DAW自体もクラウド連動やAI機能の搭載など多機能化が目覚ましい限りですが、今後は空間DAW化がこの分野におけるマイルストーンのひとつになっていくかもなー。
Source: Hit’n’Mix