ジャーナリズム業界への食い込みが狙い?
もはや世界征服を目指しているんじゃないかっていうくらい勢いのあるOpenAI(話題沸騰のチャットボットAI、ChatGPTの会社)。AI界ではトップを走っていますし、各国をまわって世界中の政治家とも仲良くすることにも成功。
そして次のターゲットは影響力を持つ領域ということで、ニュースメディアへの入り込みを狙ってるようです。
先週、OpenAIは全米の非営利ニュース団体に助成金を提供するベンチャー慈善団体「American Journalism Project」と提携したことを発表しました。
OpenAIによると提携の目的は、「AIツールがどのようにローカルニュースに役立てるかを探求するため」とのこと。
その提携、本当は何のため?
American Journalism Projectのほうはどんな目的なの? ってことですが、OpenAIは500万ドル(約70億6000万円)を提供する予定です。
とはいえ、OpenAIの現在の純資産を考えると、これはリムジンに乗ったお金持ちが窓を開けて「1ドル札を恵んであげるから、がんばりな!」って言っているようなもの。企業にとってはそんなに大きな額ではありません。
でもまあ、お金はお金です。しかもAmerican Journalism Project(AJP)は今回の提携をよろこんでいるようで
地方のジャーナリズムが主要な支柱として生き残るためには、新しいテクノロジーの可能性とその力を賢く使っていく必要があります。これはローカルのニュース機関やコミュニティがAIの初期段階の形成に関われる機会です。この提携で、AIがジャーナリズムを脅かすのではなく、一緒に向上させていくことを目指します。
とAJPのCEOであるSarabeth Berman氏はコメントしています。
この寄付でどう変わる?
さてこの500万ドルでジャーナリズムがどのように変わっていくのでしょうか?
APJのプレスリリースによると、この資金で「テクノロジーとAIスタジオ」を構築するとのこと。スタジオは地方のニュース部門のAIの導入評価をするチームによって運営され、チームはAJPと提携しているニュース団体にそれを共有し、活用方法などを教えていくそうです。
また、テクノロジーを活用したツールの構築と利用にも資金は使われ、AIの試運転プログラムを運用する提携団体などへの助成金にも使用する予定だとか。
簡単に要約すると、OpenAIはニュース編集にAIを導入してほしい、なのでその実験をするためにローカルのニュース局にお金を払うからやってみくれ、ってこと…ですね。
上手にニュースメディアに入ってくるOpenAI
AJPとの提携はOpenAIがニュースメディアを味方につけていく作戦の最初の一歩のようです。他のテック系の企業はニュースメディアに対して助成金を提供して、メディアの利益基盤の大部分をもらっていくやり方でやってきているので、OpenAIもそのやり方にならっているということですね。
AIがメディア界に混乱をもたらしているにもかかわらず、OpenAIのCEOサム・アルトマン氏は、ジャーナリズムの破壊者ではなく、救世主になりたいと思っているようです。OpenAIははCent実、ニュース記事によるAIトレーニングのためにアメリカの大手通信社AP通信と提携を結んでいます。グイグイ入り込んできてますね。
このAP通信との提携によって、OpenAIはAP通信の持つ膨大な量のテキストアーカイブの一部にアクセス可能となります。AP通信は「ニュースとサービスでのAIの潜在的な活用方法の検討」ができるとしているので、Win-Winなんでしょうか。
「悪魔の取引」みたい
先週、APの副社長であるクリスティン・ハイトマン氏が
OpenAIが、事実に基づいた公正なニュースコンテンツがOpenAIという進化するテクノロジーにとって重要であると認識してくれたこと、また私たちの知的財産の価値を尊重してくれたことに満足している。
とコメントしています。ハイトマン氏はこの提携を前向きにとらえているようですが、AP通信がOpenAIと提携というのは「悪魔の取引」みたいな印象で、あまり賢い決定だとは言えないかも。APにとってはあまりいいことがなさそうなんですよね
「OpenAIの技術と製品の専門知識を活用することができる」とAP通信は主張していますが、具体的にそれがなんなのかは説明していません。
逆にOpenAIは、前はウェブからデータをもらってコンテンツ生成のアルゴリズムを訓練していましたが、信頼性絶大のAP通信からデータをたくさん頂けるわけですから、もっともほしいものが手に入ったって感じですよね。
OpenAIは、メディア界の信頼性と影響力を同時にゲットできたわけです。本当にOpenAIが世界征服していきそうな感じ、ありますね。