「AIに規制は必要」OpenAIのCEOが米公聴会で発言

GIZMODO

ただし都合のいいものに限る。

OpenAIのサム・アルトマンCEOが、米国上院議会司法委員会の公聴会に召喚され、議会デビューを果たしました。

彼はChatGPTを含めたAIがいかに世のため人のために貢献するかとバラ色の言葉を並べつつ、「AIへのゆるやかな規制を」と議員たちに呼びかけました。

一方この公聴会には、AIに対して懐疑的な専門家も呼ばれていて、差別の助長などAIの負の面を指摘する意見も出されました。

アルトマン氏はChatGPTやテキスト生成AIの捉え方について、Photoshopと似たようなものだと発言しました。

「しばらくは皆、Photoshopにだまされていました。でも、すぐに編集された画像がどんなものか、理解するようになりましたよね。これ(生成AI)も同じようなものですが、ただもっと強力なのです」

アルトマン氏に質問した議員は、今は非常に重要な局面にあるのだと言いました。

ミズーリ州のジョシュ・ホーリー議員は、AIが行く道は2つに1つ、新たなる印刷機になるか、原子力爆弾になるかだと迫ったのです。

「我々は人類史上最も重要な技術革新を目の当たりにしているのかもしれません。少なくともインターネットの発明が、大規模に行なわれているようなものなのです」

ちなみに公聴会の様子は、こちらからストリーミングで見られます。

(都合のいい)規制なら支持

テック企業幹部たちは、長年かけて規制にただ反対するだけだと墓穴を掘ることを学んできました。

今流行りのプレイスタイルは、アルトマン氏のように自分たちにとって都合のいい法整備を推奨することです。公聴会でアルトマン氏は、「AIの規制は必須」としつつ、安全性と技術普及のバランスが重要だと説きました。去年11月に公開されたChatGPTは、OpenAIによればすでに1億ユーザーを集めています。

アルトマン氏は、製品リリース前のテストを企業への安全要件として求めることを提案しました。AI開発者に対してテストや免許といった要件を求めることで、競争条件が公平になるという主張です。

それに対しリチャード・ブルメンタル議員などは、AIのメリットはリスクを上回るとしながらも、「AIの成分表示」のような透明性向上策を提案しました。またアルトマン氏は、安全基準を作るとしたら、未知の技術の進化にも耐える柔軟性が必要だと言いました。

ともあれアルトマン氏は「政府の規制による介入は不可欠と考えます」と言い切りました。

他の専門家、例えばニューヨーク大学のゲイリー・マーカス教授は、規制に対しさらに積極的な姿勢で、「AIの過剰評価」の危険性を警告しています。マーカス氏は、AIの安全性には深い危機感を持ってアプローチすべきだとし、ソーシャルメディア規制失敗の轍を踏んではならないと言いました。

一方IBMのCPO/CTrO、クリスティーナ・モンゴメリー氏は、AIの技術そのものを規制するのではなく、特に有害なユースケースを規制すべきではないかと指摘しました。

AIは仕事を奪うけどどれくらい?

公聴会の証人となった3人は、AIが仕事の現場を破壊し、変化させるだろうという意見で一致しましたが、その度合いと時期に関しては見解が分かれました

アルトマン氏は、ChatGPTや他のAIサービスは「雇用に重大な影響を与える」としましたが、それが具体的にどのような経緯をたどるかはわからないと言います。

さしあたり、OpenAI最新の大規模言語モデル・GTP-4にしろ他のAIシステムにしろ、個々のタスクをこなすことはできるけれども、1つの仕事を完全に全うすることはうまくできません。アルトマン氏は「今の状態を超えた向こう側には、より多くの雇用があると考えている」と楽観的です。

マーカス教授はアルトマン氏より暗めの将来像を見ていて、AGI(汎用AI)がほぼすべての雇用を脅かすのではないかと言いました。ただそのタイミングは50年後かもしれないとの見方で、OpenAIの現行モデルは、AGI実現にはほど遠いと彼は言いました。

AI監視組織創設への支持

アルトマン氏とマーカス教授は、公聴会の中でも時に対立意見を交わしましたが、「AI専門家による新たな政府組織が必要」という考えでは一致しました。

彼らのいうAI専門組織は、技術開発の状況を監視し、利用に関して基準を設ける権限を持ちます。リンゼイ・グラム議員の質問に対しアルトマン氏は、その政府組織がAI企業に運営免許を与えたり、基準に違反した企業からは免許を剥奪したりといった権限を持つことを支持すると言いました。

マーカス教授はアルトマン氏の考え方を進めて、AIの危険性に世界レベルで対応できるような閣僚レベルの組織を提案しました。AIは世界中で使われ、強い関心が持たれてるのだから、世界共通基準を作れるような国際機関が必要だという考えです。

米中間など世界各所の緊張関係がある中で、そんな国際機関がどう立ち回れるのか謎ですが、それについてマーカス教授は「私の収入レベルを超えた問題」とはぐらかしました。

一方でIBMのモンゴメリー氏は新組織創設を支持せず、政府によるAIシステムの監督は、既存のFTC(連邦取引委員会)やFCC(連邦通信委員会)といった組織に任されるべきだとしました。

「今あるリスクに対処すべきなので、規制の動きを遅らせたくはありません。我々には今すでに規制当局があり、彼らはそれぞれの分野で規制する能力をきちんと発揮してきました」

AIコンテンツの責任の取り方

アルトマン氏も他の専門家も、まだ存在してない監督組織の権限について前のめりで議論してたわりに、現状でAI企業の責任を問うとしたら何ができるかはあやふやでした。

ホーリー議員やエイミー・クロブシャー議員は、AIが生成するコンテンツに通信品位法の230条があてはまるかどうかと質問しました。通信品位法230条とは、ソーシャルメディアなどのサービス上でユーザーが投稿したコンテンツに関し、サービス提供企業の責任を免除する条項です。

アルトマン氏はこう答えました。

「まだわかりません、ここで正しい答えが何なのか。230条が適切な枠組みだとも思いません」

AIの作ったコンテンツが原因で、誰かが何らかの不利益を被る事例はこれからどんどん出てくるはずです。でも、アルトマン氏は、そんなときにAI企業がどういう法的根拠なりフレームワークで責任を取らされるのか、そもそも使える枠組みがあるのかも、本当にわからないといった感じでした。

「皆さん、我々を訴えるんじゃないですか?」

アルトマン氏はホーリー氏に心もとなく聞き返してました。

いつか広告モデルもあるかも

アルトマン氏は、OpenAIはFacebookやInstagramのようなソーシャルメディア企業とは違うという姿勢を強調してました。広告収入ドリブンなソーシャルメディアは、より多くの人により長時間使われることが重視され、それが規制当局からは批判されてきたからでしょう。

アルトマン氏は、OpenAIは今のところ広告モデルではないし、むしろエンゲージメントを最大化しないようなモデルを目指していると主張しました。

アルトマン氏は冗談めかしました。

「我々はGPUが足りないので、ユーザーが少ないほうがいいのです。広告モデルではないので、それ(GPT-4)をより多く使わせようとはしていないのです」

アルトマン氏としては、OpenAIとは研究組織であり、利益よりも人間の反映を優先している…というイメージを持たせたかったのでしょう。

でも、コリー・ブッカー議員が広告モデルを絶対に採用しないのかと聞いたところ、「絶対にないとは言いません」とアルトマン氏は答えました。

「サービス提供したい相手がいて、他の方法では不可能だということもあるかもしれませんので」

議員たちの意気込み

テック系の公聴会あるあるですが、議員の中にはOpenAIの技術がわかってないような人もいました。

でも、一方で、今まさに世の中的に注目が集まるChatGPTの開発元が来る!ってことで、ちゃんとリサーチして臨んだ議員もいました。政治的に左右どちらの立場でも、暗号通貨やソーシャルメディアに関しては議会が役割を果たせなかった感があるので、同じ失敗は繰り返したくないんでしょうね。

AIに関しては半ダースくらいの新法案や立法措置が、マイケル・ベネット議員やテッド・リュー議員の主導で浮上しています。

規制関係ではFTCが、既存法を使ってAI企業を取り締まる意向を示しています。FTCのリナ・カーン委員長はこの5月、New York Timesに「AIを規制すべきだ」と直球タイトルの記事を寄稿し、アグレッシブな姿勢を明らかにしました。

ちなみにホワイトハウスはというと、今までのところ規制関係では中間点を探ってるようです。AI研究に投資して、大手テック幹部と仲良くしながら、悪用の可能性のある部分には懸念を表するといった感じです。

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