今回の干し蕎麦の製造者「池田食品工業」は、当連載初登場。福島県にある会社で、主力商品はすべて「麺」。うどんにひやむぎ、そして蕎麦。乾麺も茹めんもやっている、いわば麺のスペシャリストだ。
そんな池田食品工業の『会津檜枝岐そば 奥羽山脈の伏流水練り込み』は、パッケージを眺めた段階では、とりわけ特筆すべきことがない。
強いていうなら「茹で時間3分は早いな」というくらいか。ということで、完全に期待はしていなかった。
ところが──。
デカい鍋にタップリのお湯を沸かし……
強火で約3分ゆでて……
完成。
して、そのお味は──
完全に油断してた。価格の面でも油断してた。だって一食65円。だいたいこのランクになると、奇跡が起きないかぎり「外判定」は出にくい。
ところがこれ、なんなの? どういうこと? 最初に書いちゃうけども、「家そば」か「外そば」かなら、圧倒的に「外」でしょう。
まずね、口当たりから「え」となる。インパクト系ではなく、しなやかな。宮本武蔵ではなく佐々木小次郎的な。スラムダンクで言うなら桜木花道ではなく流川楓みたいな。「技」が垣間見えるというか。
そんでもって、まじうま。なんなんだろう、この味。「会津檜枝岐そば」だからこうなるのか……? 香ばしさと甘みの絶妙さ。まさに「じわじわ出てくるそばの風味」。正直、ちょっとビックリしてしまった。
なお、これは「冷」でも「温」でも両方イケる万能選手。年俸安いのにスゴい選手を獲得してしまった感さえある。
ちなみに、ついつい「海苔(のり)」をかけたくなった。この「海苔をかけたくなる感情」は、この連載を始めてからおそらく初。で、「ざる」にしたら予想通りTHE・最高。すごいな、池田食品工業。要チェックや!
執筆:干し蕎麦評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24