2023年3月24~26日の3日間、東京ビッグサイトにて国内最大のバイクの祭典『第50回東京モーターサイクルショー』が開催された。
現在、日本は「第12世代」と呼ばれるバイクブームの真っただ中。
会場には昨年比112.7%にあたる13万9100人が訪れ、アツい盛り上がりを見せた。現地の熱狂をそのまま、レポートにてお届けしよう!!
・第12世代バイクブームの特徴
第12世代バイクブームには、過去のバイクブームと大きく違う点がある。それは、バイクそのものではなく、ライフスタイルが中心となったブームということ。
どういうことかというと、これまでは憧れのバイクに乗ることがブームの中心になっていた。バイクが先、どこでなにをするかは後。
つまりビッグスクーターやスポーツバイクなど、バイクの種類が流行していたイメージだ。
しかし第12世代では、やりたいことを実現するためにバイクに乗ることがブームの中心になった。つまりまずは自分がやりたいことを決めて、用途に合わせてバイクを選ぶ人が増えているっていうことなのだ。
今回の東京モーターサイクルショーでの展示は、第12世代バイクブームの影響がかなり出ていたように感じる。具体的にはこんな感じだ!
・新型車が続々お披露目
会期中は多くの新型車が発表・展示された。いちライダー視点ではあるが、車両のスタイルが多岐にわたる上、それぞれがしっかり力を込めて開発されているように見えた。
まずはホンダの『CL250』は「EXPRESS YOURSELF」つまり「自分を表現しよう」がコンセプト。
2017年の発売以降 飛ぶ鳥を落とす勢いでヒットしている『レブル250』をベースに開発された、スクランブラースタイル(オフロードテイストでありながら、都会的でおしゃれなスタイル)のバイクだ。
純正オプションのナックルガード、ヘッドライトバイザー、アップフェンダーなどを装着することで、よりワイルドな雰囲気に変化する。
『XL750トランザルプ』は過去の人気車両のリバイバル。オン・オフ問わずに走れるマルチパーパスタイプのバイクだ。
当時の面影を残しつつも現代的・都会的なデザインで、車両重量も208㎏と車格にしては軽量。どんな場所でも様になる心強い相棒になりそうだ!(ただしシート高850mmとかなり足つきが悪く、筆者は乗ることすらできそうにないのが残念……)
続いてヤマハは、125ccクラスに3車両を投入。ネオレトロなスタイルの『XSR125』
ストリートファイター(スポーツバイクからカウルを取り外してストリート仕様にしたことから始まったスタイル)の『MT-125』
スポーツスタイルの『R125』。
125ccクラスの中で、自分のライフスタイルに合わせて3車種から選べるのだ。ここまで方向性が違う車両が一気に発売されるのは、ブームならではの勢いじゃないかな。
他にもヤマハブースでは、XSR900用の純正カスタム・カウルキットも人気を集めていたよ。
続いてスズキでは、(モデルチェンジではなく)完全新型の『GSX-8S』が注目を集めていた。
扱いやすくて疲れにくい設計で、足つきもシート高810mmと悪くはない。なにより直線的でメカメカしいデザインには独自性があり、多くのファンが「いいじゃん!」と大興奮。
GSX-8Sと同型のエンジンを積んだ『Vストローム800DE』は、大人気のアドベンチャーバイク、Vストロームシリーズに新投入されたミドルクラス車両。
イタリアでの先行試乗会の情報によると、ダート性能が強化されてオン・オフ問わずアクティブに走れる仕上がりとのこと。筆者の体格ではとてもオフロードに挑戦することはできそうにないが、自信のある方はトライしてみてほしい!
排気量違いのVストローム3兄弟。少年心をくすぐるロボットのようなデザインがかっこいいね!
国内メーカーでは最後。カワサキの目玉は、先週の大阪モーターサイクルショーにて世界初公開されたばかりの『エリミネーター』。
過去の車両のリバイバルで、アメリカンスタイルながらも現代チックにバージョンアップされていてカッコいい! もちろん足つきは抜群なので、男女問わず人気を集めそうだ。
発売日未定のため参考出展されていた『Ninja ZX-4RR』は、4気筒400ccエンジンを積んだガチスポーツバイク。
一時は絶滅しかけた4気筒バイクを 新車で買える時代が再来するなんて……! バイクブームの波に乗り、メーカーが勢いと力を取り戻していることを実感させてくれた。
海外メーカーでもBMWが日本初公開となる新型『M 1000 RR』と『M 1000 R』を展示するなど、各社でお披露目が相次いでいた印象。
第12世代バイクブームの自分がやりたいことに合わせてバイクを選ぶという “ライフスタイル型” 的な盛り上がりになったのではないだろうか。本当に幸せなことだと思うし、今後もできるだけ長くブームが続くことを強く祈っている!!
・バイクにも電動化の波
カーボンニュートラル、電動化の流れはバイク業界にもやってきている。むしろ作りが単純な分、自動車よりも多くのメーカーが参戦しているんじゃないかな。
特に目立っていたのは、スウェーデン発のブランド cake。ライフスタイルに合わせてカスタムできるプレミアム電動バイクのニューウェーブだ。
北欧らしい超おしゃれな展示スペースは、通りすがるほぼ全員がじっくり観察していたといっても過言ではない。
なによりブースだけでなく、車両自体のデザインが最高なのだ。50ccクラス相当の『Makka(マッカ)』は、自転車のように気軽に乗ることができそう。
『Osa(オッサ)』は125ccクラス相当。大型のキャリアのおかげで積載力と拡張性が半端ない。
また「電動バイクといえば中国」というほどに中国メーカーの勢いは凄まじい。
cakeと同様にスマートなデザインでありながら本格オフロード走行ができるのが、Gowow(ゴーワオ)からデビューした『ORI(オーリ)』
従来のオフロードバイクっぽい雰囲気を残し、マウンテンバイクのように気軽に遊べるのがSur-ron(サーロン)社製の『Ultra Bee(ウルトラビー)』
SNSでも大きな話題になっているFELOテクノロジーの『M壱』は、日本初公開の折り畳み式電動バイク。
かつてホンダから発売され、今でも根強いファンが残る折り畳み式バイク『モトコンポ』を彷彿とさせるシルエット。よりアウトドアチックな印象だ。
FELOテクノロジーでは、他にも電動スクーター『FW-06』などを展示。全体的に未来を感じさせるようなスタイリッシュな車両が多かった。
スタッフの方曰く、
「中国ではすでに電動バイクが当たり前のように使われていて、街中にバッテリーを交換できるスポットがあるんです」
とのこと。
日本でも、都内を中心にバッテリーシェアサービスが普及し始めている。環境さえ整えば、今後は一気に電動バイクの利用が増える可能性もあるだろう。
エンジンバイクが好きな筆者としては寂しい気もするが、避けられない世の中の流れなんだろうなぁ。
・洗練されたバイクウェア
ぶっちゃけた話、ひと昔前のバイク用ウェアは街中で着るのが恥ずかしいデザインが多かった。
──というのも かつてのバイクウェアは皮つなぎの延長線上にあり、ウエストの裾が短かったり、レーシーなデザインのものがほとんど。プロテクターもぶ厚くゴツゴツとした印象だったのだ。
対して現在は、パーカーやアウトドアウェアのようなカジュアルなものが登場し、人気を集めている。
例えば用品メーカのKOMINEやRSタイチのブースには、もはや普段着といってもよいほどのウェアも。
用品メーカーだけでなく、バイクメーカーが提供するオリジナルウェアもかなり洗練されている。例えば、ホンダはアーバンな雰囲気。
ハーレーダビッドソンは上質なカジュアルウェア。
また、昔はコテコテのデザインしかなかったライディングブーツも、今ではカジュアルに。
用品メーカーラフアンドロードでは、コンバースのようなスニーカー的デザイン
アルパインスターでは、イマドキっぽいゴツめのスニーカー的なライディングブーツが並んでいた。
すべてライディングに耐えうる足の保護性能と丈夫さを兼ね備えているというのだから驚きだ。
ヘルメットも同様。クラシックバイクにも似合うようなレトロやアーバンなデザインが増えている。
まさに、ライダーのやりたいことに合わせてバイクや用品を選べる環境が整っているのだ。こんな時代、これまであっただろうか? ……いや、なかった!
・やりたいことをバイクで叶えよう!
街でも山でも海でも、好きな場所へ好きなバイクで、ファッショナブルに出かけられる環境が整いつつある。東京モーターサイクルショーは、それを実感させてくれる3日間となった。
ありきたりな言葉ではあるが「いい時代になったなぁ」と感じるばかり。
個人的に気になったのはヤマハの125cc 3台とcakesの電動バイクかな。なにかのタイミングで試乗できればなぁ、なんてワクワクしているが……俄然(がぜん)バイク欲が高まったので、とりあえず今週末はパーッとツーリングに行ってきますね!
参考リンク:東京モーターサイクルショー
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.