私が当連載【家そば放浪記】のための蕎麦を実食する時は、ぜんぶ食べない。だいたい多くて半分くらいまで食べてから、その時に感じた印象を忘れないように即ジャッジ(即メモ)をするようにしている。
そして残り半分は、事前に用意した「大根おろし(&かつおぶし&ゆず)」などと共に「おろしそば」にして食べるのが常であり、一仕事終えたあとの楽しみでもある。
しかし、時に例外もある。半分残すどころか、“美味すぎて止まらなくなり全部食べちゃった” というパターンだ。今回の蕎麦が、それにあたる。
正直言おう。ナメていた。製造者「おびなた」をナメ切っていた。私の中での「おびなた」は “コラボ職人” というか、単体というより「コラボ作品」を生み出す方が多い印象。
プロレスに例えるなら「タッグ屋」であり、野球に例えるなら「ホームランは絶対に無いが、まあ一二塁打くらいは打つ」中堅選手みたいな。
今回のコラボ相手は「eatime(イータイム)」。なんでも、「ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(株)」のオリジナルブランドだそうで。まぁ、今回も、無難な二八そばなんだろうな……なんて。
ところが、である……
デカい鍋にタップリのお湯を沸かし……
4分ゆでて……
って……
なんじゃこりゃ〜〜〜〜〜!
アワアワになることはよくあるけども、ここまで、まるで間違えて洗剤を入れてしまったかのようなアワアワ具合は連載初ではなかろうか。大丈夫なのかこれは! 溢れそうだぞ!!
ともあれ……
完成。
して、そのお味は──
ちょっとこれは……ヤラれました。完全に油断しておりました。なにせ、言っちゃ悪いけど、「おびなた」だから。まぁ平均的な蕎麦に仕上げてくるのかと思いきや、かなり尖った、音楽で言うならパンクな蕎麦!
まず、わりと細麺。となるとツルツル系かなと思いきや、ゴシゴシとした口当たりで、けっこう強めに「蕎麦み」を感じる。これがなかなかクセになる。
香りも良しで味も良し。単に つゆ につけるだけのもりそばで、ここまで「おおっ!」となるのは実力者の証。はっきり言えば、めちゃウマい。
「家そば」か、「外そば」か。そりゃもう「外」でしょう。けっこうトンガリ系の店ですよここ。ワンオペの店主の圧と緊張感がスゴすぎて店内が静まりかえっている店ですよ。
ちょっと「おびなた」をナメすぎていたかもしれない。あるいはコラボを組んだ「eatime」がすごいのか。ともあれ、まいりました。蕎麦湯もすごいし、これはもうランキング入り決定です。ごちそうさまでした!
執筆:干し蕎麦評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24