アニメ『サイバーパンク エッジランナーズ』の大ヒットに、大規模なコンテンツ拡張パック『仮初めの自由』や続編の発表など、話題に事欠かなかったアクションRPG『サイバーパンク2077』。今月で発売から記念すべき2周年を迎えたわけですが、改めて今その魅力を紹介しておきたい!
正直なところ、発売当初は深刻なバグだらけでそのポテンシャルが完全には発揮できていなかったのですが、それも大部分が修正され次世代機向けのグラフィックアップデートが行われ、ベストコンディションとなりました。
だからこそ、まだ遊んでいない人も、もう遊んだけど途中でやめちゃったという人も、この年末年始に改めて『サイバーパンク2077』に触れてみて欲しい!
凄まじいグラフィックで描かれるナイトシティ
なんといっても『サイバーパンク2077』の最大の魅力はその世界にあると思います。
テクノロジーは発展しながらも世界は戦争を繰り返し退廃の一途を辿っている…1980年代に想像された未来像をベースとしたディストピアであり、その物語の中心となるのは政府が崩壊し多国籍企業による支配が進んだ未来のアメリカの西海岸の街「ナイトシティ」。この設定は、まさに”サイバーパンク”と言われて想像するような世界ですよね。
ただ「ナイトシティ」は、いわゆるサイバーパンク作品でおなじみの高層ビルがそびえ立ちネオンがギラギラと輝くごちゃごちゃした風景だけじゃなく、少しばかり落ち着いた住宅街や、開発に失敗し廃墟と化した地域、外縁に広がる荒野など、一つの街にいろんな風景が広がるテーマパークのようになっていて飽きない。
ディテールの作り込みも素晴らしく、未来のディストピアらしい広告、服屋に飯屋、酒場、道を行き交う多くの人や車だけじゃなく、地面に転がっているゴミなんかからも生活感が出ていてリアルな街っぽさがたまらないのです。
また、街にあるもののデザインが超カッコよく、それぞれをじっくり眺めたくなるものとなっています。キャラクターやその装備がカッコいいゲーム(もちろん『サイバーパンク2077』もそのあたりは最高)はたくさんありますが、街自体がここまで魅力的なオープンワールドのゲームはそう多くないでしょう。
そしてグラフィックは半端なく美しく、発売から2年経っていますが今でもPCではハイエンドグラフィックのベンチマークの1つとして使われているほど。このゲームのために最新のPCパーツや次世代ゲーム機を買ったという人も少なくないでしょう。実際、その価値は大いにあるはず。
ちなみにまだ正式な配信日は発表となっていませんが、レイトレーシングモードの最上位設定「Overdrive」(とパフォーマンス向上が期待できるDLSS3対応)が導入予定で、まだまだグラフィック方面は伸びしろがあります。
ナイトシティはそんな風にカッコよくて美しいわけですが、治安は最悪であちこちで銃撃戦が起き、救急車だって武装しているようなイカれた街なので正直住みたくはない。住みたくはないんだけれど、とにかく歩き回ってるだけで楽しい。
劇中でもナイトシティは離れたいけど離れられない街として語られるのですが、それが非常によくわかるんですよね。特にストーリーを進めるでもなく、ただゲームを起動して街を訪れたくなる。そんな街の魅力を堪能させてもらえるゲームになっています。
TRPGやアニメで深まる世界観
プレイヤーは、そんなナイトシティに生きる傭兵「V」として、その体にメタル(サイバーウェア)を埋め込み、ストリートの伝説となることを目指します。あんまり細かい話をするとネタバレになっちゃうのでここでは割愛しますが、とにかくナイトシティで本当に多種多様な人々と出会い、彼らと忘れられない時間を過ごすこととなります。
その中で「V」は今まで知らなかったナイトシティの裏側や伝説に深く関わっていくのですが、このあたりを改めて考えてみると、『サイバーパンク2077』の世界はVのストーリーを体験させるためにあるのではなく、その世界を体験させるためにVのストーリーがあったのだとさえ感じられます。
そして、その世界観はストーリーやキャラクターとの会話の中だけでなく、街中で拾う本の抜粋やメッセージのやり取りのログが入ったチップ、アイテムの説明文などで語られ、プレイヤーをよりナイトシティの深みに誘い込んでいきます。
実は『サイバーパンク2077』は、1990年にリリースされたテーブルトークRPG(TRPG)『サイバーパンク2.0.2.0.』を原作にしたゲーム。TRPGは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』などに代表される、基本的には紙とペンで遊ぶゲームで、複数のプレイヤーが同じテーブルを囲みながら、会話をしながらキャラクターを作り、ストーリーを進め、様々な行動の成否をダイス(サイコロ)を振って判定しながら遊んでいくというもの。
TRPG『サイバーパンク』シリーズはその歴史も長く、ナイトシティを中心にがっつり世界観が作り込まれており、『2077』はそれを基礎に作られています。だからこそ、厚みのある世界観を築くことができているのです。
しかし、『2077』は原作を引用するだけではなく、ジョニー・シルバーハンドやローグなどTRPG版の主要なキャラクターをストーリーに絡めたり、TRPG版から約50年後ということを活かした時代の変化などを取り入れたりと、世界観の見せ方がとにかく上手い。そして何度も言いますがカッコいい。自分はTRPG版のファンでしたが、2077のおかげでより一層ナイトシティと『サイバーパンク』が好きになりました。
ちなみにTRPG『サイバーパンク』の最新版である『サイバーパンクRED』はその日本語版が現在発売中。『サイバーパンク2077』を含めた設定資料集としても抜群に面白い本になっているので、『2077』のファンにはぜひチェックしてもらいたいもの。体験ゲームが遊べる無料版も公開されていますよ!
サイバーパンクの病を描いた『エッジランナーズ』
ともかくそんな具合で『サイバーパンク2077』は本当にTRPG『サイバーパンク』という素材を活かしに活かしてその世界観の魅力を存分に発揮していたのですが、1つだけ物足りないと感じていたのが「サイバーサイコシス」の描写。
サイバーサイコシスは『サイバーパンク』世界固有の病で、人体の機械化を進めることで他人への共感力や人間性が失われていき、暴力衝動に駆られるというもの。症状が進むと、最終的には無差別な殺人を繰り返すようになってしまいます。
その病気の存在は広く知られているものの、この世界では身体の機械化はある種のステータスでもあり、また機械化による自身の成長や強化には強い中毒性があるため、無理にでも行なおうとする者たちがあとを絶ちません。
退廃的な未来の世界観を実に見事に体現したものであり、TRPG版ではプレイヤーキャラクターが強化されていくことへの一種のリミッターでもあるようなものともなっている重要な要素でした。
『2077』でも病を発症した「サイバーサイコ」たちが登場し、その危険性も随所で語られるのですが、プレイヤーキャラクターである「V」は機械化し放題。『2077』で最初に公開された映像がサイバーサイコとソレに立ち向かうサイバーサイコ対策部隊のMaxTacが登場するものだったにも関わらず…!(ちなみに、この映像に登場したキャラクターもゲーム内に再登場しています)。
ゲーム的に、プレイヤーが楽しめる形で再現するのが難しかったというのはわかるのですけどね。
ただそれでは終わらなかった。なんと『2077』を原作とするNetflixのアニメ『サイバーパンク: エッジランナーズ』が見事にその要素を描ききってくれたのでした。お話としては、とある事故をきっかけにすべてを失った少年が、ナイトシティで生き残るために傭兵=エッジランナーになっていくというもの。
ナイトシティを舞台にしたボーイ・ミーツ・ガール的な非常にシンプルなストーリーではあるのですが、主人公が身体を機械化することで得るものと失ったものをサイバーサイコシスに絡めたものとなっていたのが、個人的にはだいぶ熱いところでした。
原作TRPGでは「人間性」はステータス上で数値化されており、別のステータスである「共感」(社交性に関連し人の感情を理解し、読み取る能力)が高いキャラクターは人間性が高くなり、改造への耐性を持つが、人間性を失っていくたびに共感も下がっていき、サイバーサイコに向かっていくというルールになっており、そこの再現がバッチリなアニメだったのです。
主人公のデイビッドは物語のスタート時点では、心優しい感受性豊かな少年=共感が高そうなキャラクターだったんですが、物語が進むに連れて人間性を失い、共感がしっかり下がっていくのです。他にもいろんな魅力があるアニメではありましたが、『2077』の足りないところを補完しているという点でもファンにはぜひ見てもらいたい作品。
そしてまたナイトシティの魅力を見せるという点でも、きっかけとしてイケてる作品なので、もしまだアニメも見てないしゲームもやってないという人は、先にアニメから触れてみるというのもいいかもしれませんね。
年末年始は『サイバーパンク2077』
と、長くなっちゃいましたがとにかくもう遊んだという人もそうでない人もこの機会に改めて『サイバーパンク2077』に触れ、「ナイトシティ」の魅力を存分に楽しんでほしい。
ちなみに、執筆現在Playstation StoreやSteam、EpicStoreといったプラットフォームでそれぞれセール中ですよ!