反政府武装勢力・タリバンがアフガニスタンの政権を掌握したことで、カブール国際空港はアフガンを脱出しようとする人々が殺到し、2021年8月16日から17日にかけて大混乱に陥った。
その際、離陸した飛行機から人々が落下する動画や、輸送機に多くの人々が「すし詰め」になっている画像が配信され、世界に衝撃を与えた。ただ、その中には、過去の写真にうその説明をつけて拡散した「フェイク」もある。出典を確認するなどして、SNSで安易に拡散しないように注意が必要だ。
2013年のフィリピンの写真がタミル語で…
タリバンの政権掌握後、民間機としてはターキッシュ・エアラインズ便がカブール空港を8月16日午後に出発できたのを最後に、現時点では主に軍用機による脱出作戦が続いている。輸送の要を担うのが、米空軍のC-17輸送機。8月15日夜に約640人を載せてカブールを出発し、カタールまで輸送した。この様子は防衛専門サイト「ディフェンス・ワン」が8月17日に機内の写真つきで報じ、反響が広がった。同サイトは、この情報と写真を「米軍当局者」から入手したとしていた。18日には米軍の準機関紙「星条旗新聞」が同じ写真を「17日に航空機動軍団が公開した」として掲載。ほぼ同じタイミングに、米空軍のツイッターにも機内写真が投稿された。こういった経緯を踏まえると、掲載された写真が偽物の可能性は低いとみて良さそうだ。
これとは別に8月17日、似たような「すし詰め」写真が拡散された。フェイスブックで、
「インド軍機が、死を恐れるインド人800人を一度に輸送した」
という説明つきで拡散された。元々は、インド南部やスリランカで話されているタミル語で投稿された内容だが、画像は一人歩きし、日本人の中にも画像をシェアする人が出ている。
インドのファクトチェック団体「ニュースチェッカー」の検証によると、拡散された写真は、13年11月に台風がフィリピンを襲った際、レイテ島北部の都市・タクロバンから住民をC-17輸送機で脱出させた際のものだ。拡散された写真と同じ写真が、米国防総省のウェブサイトに掲載されている。
今では、この写真をアフガンのものとして説明した投稿には、「虚偽の情報 独立した第三者ファクトチェッカーがチェック済み」という警告が出るようになっている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)