ずっと穴を掘っていけば、マンガみたいに地球の裏側まで到達できるの?

映画『ザ・コア』を思い出した。

The Conversationに元記事を寄せた、アイダホ州のボイシ州立大学地球科学科助教授であるアンドリュー・ゲイス氏は、子ども時代を過ごしたオハイオ州シンシナティの裏庭で穴を掘るのが好きだったといいます。彼の祖父は「そのまま掘り続けたら中国に出るぞ」とジョークを飛ばしていたのだとか。

実際のところはというと、もしもそのまま地球をまっすぐ掘り進めたとしたら、中国ではなく、彼の地元からみて地球の裏側にあたるオーストラリアの西約1,800km沖のインド洋に出ていたのだそう。じいちゃん…。

ゲイス氏は庭の表面をいじくり回すだけの鋤(すき)しか持っていなかったので、1mほど掘ったところで岩? 石? にぶつかって、それ以上は進めませんでした。

地球物理学者になったゲイス氏は、子どもの頃よりも地球の構造についてかなり多くの知識を得ました。

Layers of Earth
Image: Volcan26 / Wikimedia
  • まず、地球の外皮にあたる地殻はとても薄く、軽い岩の層になっています。地球の直径に対するその厚さは、リンゴの直径に対する皮の厚さに似ています。子どものころに穴を掘ったとき、地球のすごく薄い地殻の表面を引っかいていたに過ぎなかったんです。
  • 地殻の下にあるマントルは、リンゴの果肉のようにとても厚い層です。マントルは強固で重い岩石でできていて、年間数インチ約5〜10cmくらいの速度で流動しています。これは、地球の中心から高温の岩石が上昇し、冷えた岩石が中心に沈み込むことで生じる動きです。
  • 地球の中心にある核(コア)は、超高温の液体と固体の金属でできています。その2,500℃から5,200℃に達します。

地球の表層は、その下の層に圧力をかけています。そして、深くなるほどその圧力はどんどん増していきます。これは海の中でも同じで、水中で深く潜るほど耳にかかる圧力が強くなるのを想像してもらうとわかりやすいかもですね。

地球を掘り進める場合も同じです。シャベルなどで掘るにしても、ドリルなどで掘削するにしても、その穴の側面の壁は上部の岩盤から大きな圧力を受けます。また隣に空洞があるため、不安定な状態になります。より強固な岩盤は大きな力に耐えられますが、十分な圧力がかかれば、すべての岩盤が崩れる恐れがあります。

穴を掘るにあたって、圧力によって壁が内側に崩れるのを防ぐ方法の1つは、壁を急勾配にしないで、円すいの側面のように、外側に向かって傾斜させることです。経験則として、穴の深さに対して3倍の幅を確保するといいでしょう。

不安定な壁

地球上で最も深い露天掘りは、ユタ州にあるビンガム・キャニオン鉱山です。この鉱山は1900年代初頭に銅鉱石を採掘するために、掘削機や爆薬を使って掘られました。鉱山の坑は深さ1.2km、幅4kmです。

鉱山の幅は深さの3倍以上あって壁は傾斜しているため、坑道の壁は急勾配ではなく、セオリー上は安定しています。それでも2013年には一部の斜面が崩壊し、大規模な地滑りが二度発生、鉱山の底に1億4500万トンの砕石が崩れ落ちました。幸運なことに負傷者は出ませんでしたが、地滑りによる被害額は数億ドルに上ったといいます。

すべてが固体でできている地球を掘り進んでいくと仮定しましょう(これは最も単純なシナリオで、実際にはそんなわけありません)。そして、「幅は深さの3倍」を適用すると、地球の中心を反対側まで真っすぐ掘るので、穴の深さは地球の直径になりますね。この穴を安定させるには、深さの3倍の幅が必要です。つまり、必要な穴の幅は地球の直径の3倍になります。

まじめにコメントすると、これは明らかに地球の形状が完全に変わってしまうミッション・インポッシブルな話です。

ザクザク掘るか、ドリルで掘るか

幅が必要な掘削方法(digging)よりも、ボーリング(drilling)は移動させる物質が少なく、ボーリング孔の表面積が小さいほどより大きな力に耐えられるため、短時間で深く掘ることができます。エネルギー企業は石油・ガス掘削のために、地表から5kmほどのボーリングを日常的に行なっています。

地球で最も深い穴は、ロシア北西部にあるコラ半島超深度掘削坑で、その深さは12.2kmに達します。このような深いボーリング孔は、地球内部について多くのことを科学者に教えてくれます。しかし、このプロジェクトは掘削が困難になったため、最終的に打ち切られました。高温すぎて掘削機が機能しなかったり、掘削機が故障したり、コストが高くなりすぎたりと、問題が多かったのが原因でした。

ボーリングは退屈な作業です。泥水の入った空洞のパイプの先に付けられた鋭いドリルの先端が回転して岩盤を削ります。非常に硬い岩でも1分間に数インチ(5~10cm)ずつ掘り進んでいきます。順調にこのペースで掘削が進むと仮定すると、地球の反対側にたどり着くのに何百年もかかる計算になります。

深く掘り進むにつれ、破損した部品の交換に時間がかかるようになります。また、何kmもの長さになるドリルはとても重くなるため、ねじったリ穴から引き抜いたりできなくなることもあります。

圧力も問題です。とてつもなく大きな圧力がかかるボーリング孔の壁は崩れやすくなります。また、地球のマントルがゆっくりと移動することでボーリング孔がゆがみ、最終的に崩壊する可能性があります。地球内部の奥深くで非常に大きな圧力を受けているマグマやガス、液体金属が、ボーリング孔を通って地表に向かって噴き出す可能性もあります。

現在の掘削技術は、地球のマントルや核を貫くほどの速さや耐久性を備えていません。しかし、私たちはコラ半島超深度掘削坑やビンガム・キャニオン鉱山のような功績に依然として畏敬の念を持ち、さらに深い場所から岩石を掘り起こすという夢を抱くことができます。

Reference: Paramount Movies / YouTube

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