インドのカースト差別問題の講演がGoogle社内の反対で中止。企画した社員は辞める

GIZMODO

モディ政権下で勢いを増す右翼ヒンドゥーナショナリズムがアメリカで場外乱闘⁉

各地の大学で、インドのカースト制度の研究イベントが脅迫や妨害に遭って教授たちが悲鳴を挙げているわけですが、まさかGoogle(グーグル)にまで火の手がおよぶとは…世界はひとつですね…。

カースト最下層に属するダリット出身者が渡米後も差別にさらされている実態を知り、偏りのないニュース配信に役立てようと、Google News人事マネジャーのTanuja Guptaさんが専門家によるトークを企画したら、「そんな差別はない」「むしろヒンドゥー差別ではないか」「分断を生むだけだ」と社内から猛反発が沸き起こって会社側が中止を決定。決定に抗議して会社を辞めてしまう事態となっていますよ。

辞任前に全社に配信した辞任理由のメールはこちらで読むことができます。

マイクロソフトやAdobeではOKだった講師が断られる

Washington Postによると、騒ぎが起こったのは今年4月のこと。イベントはダリット歴史月間にちなむもので、60人ぐらいの社員が参加を希望していました。講師に招かれたのは、近隣のオークランド市内に本部を持つダリット差別撲滅団体「Equality Labs」創設者兼事務局長のThenmozhi Soundararajanさんです。

GoogleはCEOのサンダー・ピチャイ氏がカースト最上位・バラモンの出身。同じくバラモン出身CEOをもつMicrosoftとAdobeはもちろん、NetflixやAirbnb、Salesforceにも講師に招かれたSoundararajanさんですが、こんなことになったのは今回が初めて。どういうことなんでしょうね?

いちおうGoogle広報の説明では「まとまりと啓蒙より、分断と憎悪を呼ぶ内容と判断」したことが中止を決めた理由ということらしいのですが、講演内容はそういう内容ではありません。昨年11月に招かれたとき話した内容を土台に、気象変動や選挙の報道でダリットの記者に目を向けることの重要性を伝える予定でした。

「人権を語り合う場を用意しても、考えの凝り固まった人たちのペースに巻き込まれてしまう。あってはならないことだ」とSoundararajanさんはWPにコメントしていますよ。

Google「社内にカースト制度などない」

会社を辞めたGuptaさんは、セクハラ長者に抗議して社員が同一時刻にストライキした2018年Googleウォークアウトを企画した7人の最後の生き残り(残りの6人はもう会社を去っている)だったので、その報復だったのかも…という見方をする人もいます。そうじゃないことを願うばかりですね。

イベントを企画したのは昨年9月に2人の社員から「社内でカースト差別を目にした」と聞いたからだったのですが、界隈の2日前になってGoogle社員7名から怒りのメールが届いて、「こんな風にカースト制度のことを話題にすることで、自分たちがいかに傷つき、命が狙われる不安に怯えているか」と訴えられため、上層部がひとまず延期を決めました。

もったいないと考えたGuptaさんが開催を求める署名運動を立ち上げて、南アジア出身者8,000人が集まるメーリングリストにリンクを投稿したんですが、そこから雲行きが怪しくなって…。冒頭紹介したようなコメントがわっと集まってしまったのです。

コメントのなかには「被差別民は学がなくて、ヒンズーの経典にカーストのことがどう書かれているかも実はよくわかっていない」といった目を疑うようなものも…。Googleレベルでこれなんだから、一般の大学レベルではもっとすごいこと言われるんだろうなあ…と思わずにはいられません(実際、教授や講師に向かって爆破、殺人、レイプすると脅してくるヒンズーナショナリストもいて警備が強化されたり、あまりの怖さに講師を辞退されるケースも頻発中です)。

Google広報は「社内にカースト制度などない」と断言していますが、Guptaさんに中止を伝えたエンジニア部門VPの話では、講師(ダリット出身者)の身元調査も通常では考えられない物々しさだったといい、それだって立派な差別。思った以上にバラモン強いんでしょうか。シリコンバレーの闇ですね…あ、すみません、カーストは存在しないんだった…。

Sources: Washington Post

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