今年5月、クラフトビールの街とも言われる横浜にクラフトビールブランド「Yellow Monkey Brewing(イエローモンキーブリューイング)」(以下YMB)のタップルーム(醸造所に併設されたクラフトビールを提供するバー)がオープンしました。
クラフトビール屋の店内にシャワールーム
YMBのタップルームでは、オリジナルのクラフトビールはもちろん、各地から厳選したクラフトビールが楽しめます。ユニークなのは、タップルームにシャワールームが併設されているところ。どうしてシャワールームがあるのか。それはYMBが「ビールとスポーツを通じて人と人を繋ぎ、笑顔を広める。」ことをミッションとしているからです。
YMBのFounder&CEOを務めるのは、駒田博紀さん。ランナーやトライアスリートの間では、スイス発のスポーツブランド、Onの日本法人「オン・ジャパン」を立ち上げた人としてもよく知られています。
「オン・ジャパンの代表として仕事してきた中で、私の大きな目標はOnを日本に根付かせること、自分が死んでも残るブランドに育てることでした。それが自分の人生の目的なのだと思い込んでいた時期もあったのですが、2019年に全国の8都市を巡って各地のランナーたちと走って乾杯をするというイベントをしていく過程で、私の人生の目的は“人と人を繋いで、笑顔を広める”ことなのだと気がついたのです」(駒田さん)
YMBのHead Brewerを務める齋藤健吾さんと出会ったのは、2023年1月のこと。
「知人に紹介してもらって、飲みに行ったのが出会いですね。彼はちょうど独立を考えているタイミングでした。彼にどんなビールを作りたいのかと尋ねると“僕のゴールはビールそれ自体じゃなくて、飲んだ人の笑顔”という答えが返ってきたのです。ビールを作る職人は美味しいビール、完璧なビールを作ることがゴールになりがちだと思うのですが、彼はそうじゃなかった。彼が独立するのであれば出資しよう、最初はそう思っていました」(駒田さん)
1,700kmを走ってあらためて気づいたこと
2023年はOnが日本上陸10周年となる年。Onが日本に根付き、自分がいなくてもオン・ジャパンももう大丈夫だろう、そう感じていた駒田さんは集大成として、「Meet OnFriends Tour 2023」というツアーに出ます。東京ビッグサイトから福岡まで、1700kmの道のりをOnFriendsと呼ばれるOnのファンたちと走るイベントです。
ランニングを終えた人たちが、ハイタッチをして笑顔で乾杯をする。そんなシーンをツアー中に何度となく目にしているうち、 齋藤健吾さんの独立に 出資をするのではなく、YMBをともに立ち上げようと決意したのだそうです。
「ビールをビジネスにしたいと考えたわけではないのですが、ランニングシューズをクラフトビールに変えても、これまでと同じように生きられるのではないか、自分自身の人生の目的を達成できるのではないかと思えたんです。Meet OnFriends Tour 2023を終える頃には、人と人とを繋ぎ、笑顔を広めることを追求するゲームを健吾と一緒に楽しんでみようという気持ちになっていました」(駒田さん)
クラフトビールは、人と人とを繋ぎ、笑顔を広めるための潤滑油。スポーツは、人をより健康に、人間関係をより明るく、そして乾杯を最高の瞬間にしてくれるもの。オン・ジャパン時代、ビールとスポーツが人と人を自然と繋ぎ、笑顔が広まっていく光景を数えきれないほど目にしてきたからこそ、その力を信じているそうです。そして、それが冒頭で紹介したシャワールーム併設のタップルームに繋がります。
YMBのタップルームがあるのは、神奈川県の横浜市都筑区。横浜市営地下鉄・中川駅からすぐの場所。周囲には公園が多く、それを繋ぐように都筑緑道という緑道が整備されています。都筑緑道でジョギングをし、YMBのシャワールームでリフレッシュして、クラフトビールで喉を潤す。そんな贅沢なビールの楽しみ方ができてしまうわけです。
この10月についにオリジナルのクラフトビールが完成。タップルームを拠点としたイベントを開催するのはもちろんのこと、全国の卸先のレストランやバーに赴き、そこに集まった人たちと一緒に走り、乾杯をしたいと駒田さんは言います。
「Onのときと同じようにコミュニティとの距離が近いブランドでありたいと思っています。オン・ジャパン時代に、“お店にランニングシューズを買いに行ったときに他のブランドを買おうとしたら駒田さんの顔がよぎって買えなかった”と言われたことがあったんです。私は“Onのシューズ以外は買わないでね”などと言ったことはないのですが、そう思ってもらえるのは嬉しいですよね。
会社の代表の私やビールを作っている健吾と一緒に走ってYMBのビールで乾杯をする。その経験があると、また別の日に走って誰かと乾杯をしようとしたときに、YMBのビールのことを思い出してくれると思うんです」(駒田さん)
ともに走り、乾杯し、そこでもらったフィードバックを反映した商品開発も進める予定とのこと。あなたもYMBのビール開発に参加してみる?
Photo: 佐山順丸