驚きの電池持ち。Asusの携帯ゲームPC「ROG Ally X」は動きサクサク

携帯ゲーム機で800ドルは最高値。

でも、ケーブルつながないで、これだけ長時間遊べる製品は初めてかも。

去年のROG Allyから大進化のAsus ROG Ally Xは、あらゆる面で改善が図られていて、そのゲームエクスペリエンスは他社の携帯ゲーム機に引けをとりません。高くても買うなら新型のX一択でしょう。

ストレージが増えて、処理性能もやや向上。なによりバッテリー容量が一気に2倍になったのが大きな違いです。Steam Deck OLEDと並んで、携帯ゲーム機の可能性を感じる生きたサンプルになっています。

ほぼ満点なのですが、残念なのはOSがWindows 11なこと。小さな画面を想定したOSではないので、必要以上に使いづらく感じるのが玉に瑕です。あと、価格ももう少し下げてほしかったかな。いくら優秀なプロダクトでも、ハンドヘルドでこの価格は懐にズシッときますもんね…。

Asus ROG Ally X

◾️これは何?:Asus最新の携帯ゲーミングPC

◾️価格:800ドル(日本市場価格:13万9800円)

◾️好きなところ

・疲れないデザイン。スティックとトリガーが改善

・初代、他社のハンドヘルドを上回る処理性能

・バッテリ―持ち。高負荷ゲームも3時間近く遊べる

◾️好きじゃないところ

・競合ほど良くない画面

・ハンドヘルド向きじゃないWindows 11

・価格。携帯ゲーミングPCで一番高い

携帯ゲーム機は、Steam DeckLenovo Legion GoもROG Allyも「電源つなぎっ放しで使ってるよ~」ってよく言われますが、Nintendo Switchでも往年のGame Boy Colorでもケーブルは邪魔なもの。クルマや電車や機内でも移動中にいじれるのが携帯ゲーム機の良さなのに、電源ケーブルつなぎっ放しじゃ買う意味ないし、そんなことするくらいなら、安いゲーミングノートを買った方が安上がりだって話もあります。

ただ、携帯ゲーム機はバッテリーが弱点でありまして、『ハデス II』 みたいなゲームの負荷には耐えられても、グラフィックスが少しでも重かったりするとお手上げで、高フレームレートが要求されるゲームも×だったりしました。

その点、ROG Ally Xは初代の倍の80Whのバッテリーをどっかり積んだので、高負荷の『バルダーズ・ゲート III』も『サイバーパンク 2077』も、平気のへっちゃらで2時間から3時間近く連続で遊べます。

え?それだけなの?というゲーマーもいるかもしれないけど、それくらい遊んだら、いったん休憩を入れた方がいいので、ちょうどいいリマインダーにもなりますよね。米国内便の移動がだいたい3時間くらいだし、毎日の電車通勤もカバーできるので自分的には十分です。

シャーシとボタンはデザインが変わって、ValveのSteam Deck OLED以来のお気に入り携帯ゲームになりました。まあ、今でもおすすめはValveなことには変わりはないですけどね。OLED Deckはストレージ1TBでも650ドルで済みますが、Ally Xは800ドルしますから。

それにAlly XはOSがWindows 11なので、複数のランチャー経由じゃないとゲームに飛べないのが面倒。こればかりは実装したArmory Crate SE UIがいくら改善されても、変わらないんだろうなあ…。

でも、まあ、そういう面倒を承知でそつなく使いこなせる人には、Ally Xはビースト(怪物)です。前機種のAllyよりRAMとバッテリーが増えて、CPUも上なら、ゲームのベンチマークも上。一番高いゲーミングハンドヘルドではありますが、デザインの良さを余すところなく実現できているところは評価に値します。

僕の理想は、Nintendo Switch並みのポータビリティと、Game Boy並みのバッテリー持ちを備えたゲーミングPC。サムスティックとボタンが操作しやすいことも重要なポイントです。その基準でいうなら、やっぱりSteam Deck OLEDが一番で(予算厳しい人は特に)、Ally Xはぴったりつけてる二番手といったところでしょうか。

サイズも快適性も向上

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Photo: Artem Golub – Gizmodo US

Ally Xで変わったのはカラーだけじゃありません。厚みは数mmアップして、重量も約678gと少し重くなりました。サムスティック、トリガー、バックプレートはずっと快適なデザインになっています。

薬指を置く後ろの出っ張りがなくなって、トリガーはサイドに。だいぶ持ちやすくなってます。

8方向のDパッドも新しくできましたが、一番大きな変化はサムスティックです。前のスティックは薄っぺらい印象でしたが、新型では割と頑丈で頼りない感じがしないんです。何か問題があれば、スティックは簡単に交換できるとAsusの弁。唯一の不満は、ボタンのRGBバックライトがないことぐらいです(競合の「MSI Claw A1M」のレビューでは「RGBが唯一のアドバンテージ」と紹介しましたが、それがAllyにはない)。

背面の通気口の配置は前機種と同じなのですが、前のAllyを一度でも使ったことのある人は、上部のボタンの位置が入れ替わってることに気づくはず。XG Mobile用のポートが消えて、代わりに加わったのがUSB-Cポート2つ。充電もここでできます(ただしThunderbolt 4に対応しているのは左のポートだけ)。Steam Deckのドック(Gulikitのテストユニットなど)はポートに挿しにくい気もしますが、それでも大きな改善といえそう。

SDカード用スロットは右上に移動しました。これは、The Vergeや一部のユーザーから挙がっていたSDカードリーダーの不具合の報告に対応した結果と思われます。

ディスプレイは前と同じ7インチ、1,080p対応。リフレッシュレートは120Hzだし、全然悪くないのですが、Steam Deck OLEDやひと昔前のNintendo Switch有機ELモデルと比べても、やや見劣りがしするのが残念。なお、購入可能なオプションは1TBのバージョン一択です。

負荷の高いゲームセッションもいける

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Photo: Artem Golub – Gizmodo US

うちはときどき兄弟で『バルダーズ・ゲート III 』をやるんですけど、あっちはパソコンで、こっちはミード(はちみつ酒)飲みながら、カウチでダラダラ遊ぶのがお決まりのパターン。Steam Deck OLEDを使った場合、数時間もプレイすると、ゲームを中断して充電器を探さなくてはならない羽目になります。

でも、Ally Xならバッテリー残量が20%切るまで2時間半から3時間も時間があるので、ほんとに寝るまで遊べちゃうんです。

Ally XとAllyを並べて置いて、どちらも同じ「コントロール」モードにして、TDPもグラフィックスの設定も揃えて測ったら、旧モデルは2時間かからずにバッテリーが空になったのに対し、新しいAlly Xの方はまだ60%も残ってました。高パフォーマンスの設定にして、低負荷のゲームをやれば4時間近く持ちます。グラフィックスとスピードの設定を下げればさらに伸びるけど、そこまでやるゲーマーはさすがにいないかもね。

Asusの開発サイドによれば、「熱を抑える工夫もいろいろ施した」とのことですが、人差し指がUSB-Cポートのすぐそばにくるせいか、夏だと夕方でも左手が熱く感じます。コードを挿し込んで、ゲームを起動しないで充電ユニットの辺りの温度を測ってみたら、40℃くらいありました。ほかの部位は、画面も含めてもっと温度は低めでしたけどね。

前機種よりもバッテリー放熱が多いにも関わらず、フレームレートはケーブル差しっぱなしで何時間かゲームした後でも落ちていませんでした。ROGといえば、ZephyrusのノートPCでも熱対策はバッチリだったし、Ally Xでも受け継がれているのはうれしいですね!

もちろんハンドヘルドなので、やっぱりケーブルは挿し込まないで使うのが一番おすすめだけど。

処理性能は若干向上

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Photo: Artem Golub – Gizmodo US

Asus ROG Ally Xには、昨年のAllyの最上位構成のCPUと同じ「AMD Ryzen Z1 Extreme」が入っています。Legion Goなどと同じもので、ほかのAMD製チップやIntel Meteor Lakeと比べても処理性能は一番高い部類です。

さらにメモリも去年の16GBから今年は24GB(LPDDR5)に増え、処理は高速になりました。でも、使用電力最適化のおかげで、バッテリーが激減りするようなこともありません。去年のAllyと今年のAlly Xの処理性能を比べると、ただただ驚くばかりです。

3DMark Time SpyのテストではAlly XがAllyより200ポイントぐらい高スコアでした。大差ないけど、同じプロセッサーだと考えると大進歩。

基本的なCPUのベンチマーク(PCMark10、Cinebench、Geekbench 6など)でも数百ポイントの差がつきましたし、ゲームではもっと差は広がります。Forza Horizonsを同じ設定(AMD FSRを「パフォーマンス」モードにするなど)でテストしてみたら、旧Allyより15FPSも上がってました。ほかのゲームでは(『サイバーパンク 2077』など)そこまで大きな差はなくて、21.52FPSが25.86FPSになるぐらいでしたけどね(中~高設定、FSR「自動」を選んで計測)。

Lenovo Legion Go(16GB、7500Mhz LPDDR5X RAM、Z1 Extreme)との比較テストでも、Ally Xが上でした。25 TDPに画面を設定して『フォルツァ ホライゾン』をやって出る差は30FPS、『サイバーパンク 2077』では20.64FPS。Legion Goの大画面をもっと低い解像度に設定すると差は縮まりますが、それでも同じレベルとは呼べないくらいの差がついていました。

OEMの大手が出すゲーミングハンドヘルドだけに、操作環境はPCそのもの。あまり妥協もありません。それでももっと長くプレイしたい場合は、負荷控え目なゲームを選ばなきゃいけません。

新しいAllyでは、サイレントモードでは最大13W、パフォーマンスモードでは17WにTDPが改善しているとのこと。『ハデス II 』みたいなトップダウンゲームなら、Steam DeckでもAllyでもほかのハンドヘルドでも、まったく問題なくできるわけですが、使用電力が増えたのにバッテリー持ちがそこそこいいのは、知って損のない情報かと。

MSはWindows 11のハンドヘルドに注力して!

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Photo: Artem Golub – Gizmodo US

Armoury Crate SEの最新アップデートで、Windowsのアラはだいぶ消えました。

たまにバグで画面がフリーズしたりする問題は、最新バージョン1.5.11のパッチで対応できるようですし、このUIのおかげで、ゲームやランチャーを選ぶ操作は前よりだいぶ楽になっています。各ゲームのコントロールやグラフィックスの設定も、Armoury Crateや Command Center経由で簡単にできるのですが、最後の最後まで完了できないので、ここはMicrosoft(マイクロソフト)に頑張ってもらって、Windowsのハンドヘルド対応版を出してもらわないと。それまではSteam Deckの王座は覆せない気がします。

Armoury CrateからSteamを読み込むと、Big Pictureモードでアプリが開いてコントローラーでうまく操作できるんですが、Epic Games StoreやGOGではそうはいかなくて、Microsoftが昨年アップデートしたXBoxアプリですらそうなんですよね…。

コントローラーに何か入力しても、ゲームランチャーに認識されないこともまだ多々あるし、Windows 11はポップアップが出まくるので、手動で閉じることはできますが、マウスやキーボードが簡単に取りつけられない状況では煩わしかったりします。

MicrosoftとXboxは、まだ「XBoxポータブル」の野望を捨てきれていない状況です。同社Xbox部門トップのフィル・スペンサー氏は「出先で使うのはROG Ally」だと発言したこともあるので、こういうちっこい端末で使ってWindows 11がどうなのかは本人が一番よく知っているはず。

Ally Xに触ったら、その勢いで社内に号令をかけて、「モバイルファーストなWindows」づくりに邁進…してくれたらいいのにな~。

高いけど有能なゲームの相棒

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Photo: Artem Golub – Gizmodo US

Ally Xは昨年モデルより全面的に良くなっています。

Steam Deck OLEDが美しさと使いやすさで一番なら、Ally Xはオプション全搭載とバッテリー持ち(と価格)で一番。ストレージは1TB一択で、それより少ないオプションはあえて設けていません(普通は最小構成を設けることで、最低価格を低く設定するものだけど)。

同じ1TBで比べると、Steam Deck OLEDや旧Allyより150ドル高くて、Lenovo Legion Goより100ドル高いお値段。 MSI Claw最上位モデルと同一価格ですが、Ally Xの場合、値段なりの価値があります(Clawはない)。

これを買うと、Steam Deckには戻れても(画面とUIがAlly Xよりずっといいので)、前のAllyには後戻りなしです。価格以外、初代AllyにあってXにないメリットなんて思いつきません(日本ではX発売記念キャンペーンで、Allyが1万円OFFの7万9800円になっちゃってるので心揺れますけどね)。

7インチの画面でWindows 11を開くのが苦にならない人で、たまたま机の引き出しに1セント硬貨が8,000枚ジャラジャラ眠ってる、そんな人にはAsus ROG Ally X。最高の相棒になること間違いなしでしょう。

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