45億年前、地球と金星がこの広いひろい宇宙に誕生しました。地球と金星は宇宙ではご近所(銀河系)にあり、大きさも重さも同じくらい。金星は地球にとてもよく似た星だと言われています。なにせ誕生したときには、星に存在する水の量もほぼ同程度だったそうですから。
…金星の水はどこにいった?
灼熱の星、金星
金星は表面温度が460度もある、アッツアツの星。とても人が住める環境ではなく、もちろんその熱によって水もほぼありません。
誕生時には地球とほぼ同じだけ水分があったという金星が、なぜ干上がった灼熱の星となったのか。水分はどこに消えてしまったのか。
コロラド大学ボルダー校の惑星科学者チームが、この謎に取り組みました。コンピュータモデルを使い、金星の大気の化学反応を探り、HCO+という分子を発見。どうやらこれが、金星が不毛の地となったことに関連しているようです。
研究論文の共同執筆者でありコロラド大学大気宇宙物理学研究所のEryn Cangi氏が米Gizmodoの取材に応えてくれました。いわく
金星の表面はピザオーブンくらい熱いんです。居住可能惑星の対局にあるのが金星と火星。ご存知の通り地球は居住可能です。対して、金星は暑すぎる、火星は寒すぎる。そして、どちらも水を失っています。
とのこと。
長年かけて散逸していった水
金星は、その歴史の初期段階において、大気散逸で多くの水を失ってしまった可能性があります。太陽から常に太陽風が吹き、太陽系全体に荷電粒子の流れが起きます。幸運なことに、地球には磁場が存在するので太陽風から守られています。
一方で、金星は太陽風を真っ向から受けます。その結果、大気上部が太陽風にさらされ、水分子は長い時をかけて大気から散逸し、金星という星から水がなくなってしまったのだと科学的には考えられています。
大気散逸でかなりの量の水が失われますが、一体どれほど失われたのかは、今日までわかっていませんでした。
もし、水筒を落として水をこぼしてしまっても、水筒の中の水がすべてなくなってしまうとはかぎりません。中にはまだ少し残っているかもしれません。
というCangi氏。金星にも同じことが言えて、現在の金星にもほんの少し水が残っている可能性があります。
問題は、大気散逸で失われたとしても、今残っている水の量はあまりに少なく想定と合わないということ。
あるはずの水
金星に(あるはずの)水はいったいいつどこにいってしまったのか。そして現在微量に残っている水はどれほどもつのか。科学者はこの謎を解くのに長年頭を悩ませてきました。今回の研究は、その答えを出す1つのパズル。
研究が示唆しているのは、解離性再結合というメカニズムを通して水が失われたのではないかということ。これによって、HCO+の陽イオンが水分と混ざり、正電荷をもつ分子を形成。真逆の性質が惹かれ合うことから、この分子は負電荷電子に惹かれ結合。で、こうなるとエネルギー量が多すぎて、分子がくっついていられなくなって発散。惑星の大気の外に飛び出していってしまいます。
Cangi氏は、これが化学の基本現象であることから
金星誕生初期から今日までずっとこのプロセスが行われており、金星にある水の最後の最後まで発散してしまうでしょう。
と語ります。
ちなみに、今回の研究だけで直接的にHCO+と結びつけたわけではなく、一連の研究や金星ミッションのデータから明らかになったことです。
研究チームは、今後計画されている金星探査ミッションVERITASやDAVINCIを通じて、金星大気上部の分子を測定していきたい考え。
研究論文はNature誌にて公開されています。