宝の山なのに全廃棄?
地球環境に優しいクリーンなエネルギーへの転換。どんどん進む温暖化の現実に直面すると、もう待ったなしで進めなければならないことは、だれもが認識しているはずです。
意外なカギを握るのは、捨てられようとしている、古くなったパソコンやスマートフォンなどなどの電子廃棄物(E-Waste)ですよ。
電子廃棄物に秘められた可能性
このほどGlobal E-Waste Monitorは、2022年の世界の電子廃棄物の量が、実に6200万トンに上ったことを発表しました。
年々増えているのは百も承知。ただ単なる廃棄量を測定するのみならず、そのうちどれほどがリサイクルに回されたのか? あるいは、本当はリサイクルすれば有効活用できたのに、どれほど無駄に廃棄されるだけに終わってしまったのか? その詳細を明かす画期的な調査レポートになっています。
とりわけ再生可能エネルギーやEV(電気自動車)など、二酸化炭素排出量の削減に役立つ技術革新と、電子廃棄物の可能性に光が当てられました。結局、ソーラーパネルや風力タービン、EV向けのバッテリー製造には、さまざまなメタルパーツが必要になります。それを電子廃棄物からまかなうことができれば、リサイクルとゼロエミッションの一石二鳥になりますよね!
アルミや銅は頑張ってる…
大量の電子廃棄物はあるものの、リサイクルされて活用されているものもあります。その代表格はアルミニウムと銅。2022年に出た電子廃棄物のなかに、アルミニウムが約400万トン、銅が約200万トン含有されていたと考えられています。そのうち6割はきちんと取り出されてリサイクルされていたそうですよ。
もちろん、まだ4割もリサイクルされないまま、ただ廃棄されているというのはもったいないです。国際エネルギー機関(IEA)によると、再生可能エネルギーなどの産業分野で、2022年に必要とされた銅の量は約600万トン。本気でクリーンエネルギーへの転換を進めれば、この量は、世界で2030年までに3倍近くに跳ね上がるとされています。でも、もしその多くを電子廃棄物から調達できるとしたら…?
あるいは、アルミニウムの需要量についても、2050年までに80%増という予測が立てられています。ちなみに、イチからアルミニウムを製造するときの二酸化炭素排出量は、リサイクル品を使用するときの10倍以上。どれだけ電子廃棄物から取り出せるメタルパーツが貴重かわかりますよね。
多くのレアメタルは全廃棄状態?
ところで、電子廃棄物に含まれるレアメタルの存在は、以前から着目されていました。
今回の調査レポートでは、永久磁石などに使われているネオジムの可能性を指摘。2022年の電子廃棄物には、ネオジムが7248トンも含まれていたそうです。これは同年に風力発電ならびにEVの製造に使用された9768トンのネオジムに対し、4分の3ほどの量に相当。
しかしながら、電子廃棄物に含まれるレアメタルのリサイクル率は、わずか1%未満にすぎません。
レアメタルを(電子廃棄物から)リサイクルのために抽出するのは非常に手間がかかる。EVや風力発電分野において、急速にレアメタルの需要が高まっているものの、市場や政府などからリサイクルをプッシュする動きもほとんど見られていない。
今回の調査チームを率いたKees Balde氏は、こんなふうに問題提起しています。
欧州では、2030年までに、製品へ使用されるレアメタルの4分の1をリサイクルパーツでまかなう目標などが掲げられました。まだ目標のみで、法的な拘束力を有するリサイクル政策ではありませんが、少しずつ流れは変わるかもしれません。
米国内でも、輸入に頼らず、レアメタルなどを国内で電子廃棄物から抽出して調達しようという声が上がってきています。一例として、エネルギー省(DOE)が、その優秀なアイデアに最大400万ドルもの賞金を出すコンペを開催したり。
リサイクルパーツから魅力的な新商品が誕生するチャンスだって増えるかも? そういう流れが、これから日本にもやってきたりするでしょうかね。
Source: Global E-Waste Monitor