未来を大きく変えるかも。空間コンピューティングの本格的ビジネス利用に挑むラボ

今年2月にApple Vision Proがアメリカで発売されて、空間コンピューティングによるXRの可能性が注目されるようになりました。日本ではApple Vision Proが未発売なので、まだ体験していない方も多いかもしれません。

しかし、スマホがインターネットをどこにでも持ち運べるようにして、エンタメ、ビジネス、クリエイティブを大きく変革したように、今のところ曖昧模糊としているXRも、今後はわれわれの生活を大きく変えるようなポテンシャルを秘めています。Apple Vision Proなどのハードが今後普及していけば、2030年くらいにはさまざまな分野でXRが活用されていくことが期待されます。

XR技術の具体的な利用を研究開発

本日4月24日に、業界に先駆けてXRプラットフォームを開発してきたほか、XRクリエイターの育成も行なってきたSTYLYが、KDDI、J.フロント リテイリング、「WIRED」日本版と共同で、共創型オープンイノベーションラボ「STYLY Spatial Computing Lab」を立ち上げました。

STYLYのXRプラットフォームを活用し、XRでのビジネス創出を目指す研究機関です。

STYLY Spatial Computing Lab 所長 渡邊遼平氏

大手キャリアの中でもXRに最も積極的で、メタバースやWeb3.0への技術開発にも果敢に挑んでいるKDDI。PARCOやGINZA SIXなど自社の商業施設でXRイベントを頻繁に開催し、新たな商業施設のあり方を模索しているJ.フロント リテイリング。いずれもSTYLYとの縁が深い企業です。

さらに戦略パートナーとして、未来を実装するテックカルチャーメディア、「WIRED」日本版も参画を発表しています。国内外のテック市場リサーチや、編集者視点でのユースケースの発想などで、このラボをサポートしていきます。

左からJ.フロント リテイリング株式会社 林 直孝氏、KDDI株式会社 佐野学氏、株式会社STYLY/STYLY Spatial Computing Lab 所長 渡邊遼平氏、合同会社コンデナスト・ジャパン「WIRED」日本版 小谷知也氏

STYLY Spatial Computing Labで行なわれるのは、以下。

(1)空間コンピューティング市場に関するリサーチレポートの提供

「WIRED」日本版編集部による空間コンピューティング市場のリサーチレポートを展開。テック市場動向を読み解く上で重要なインサイトを提供。

(2)コンテンツ詳細化ワークショップ

ユースケース創出に向けたデスクトップリサーチから、ワークショップの実施、方針策定、企画立案までをサポート。

(3)プロトタイピング

コンテンツ詳細化ワークショップにて立案された企画に対して、STYLYを活用したプロトタイピングを提供。社内外のユーザーに対する体験会を通じて得られた意見を参考にブラッシュアップを進め、空間コンピューティング時代のユースケースを具体化。

(4)Apple Vision Proの体験機会の創出

Apple Vision Proを使った顧客向けの体験会や実証実験での利用をサポート。

(5)参画企業同士のコミュニティ

定期的なイベントの開催を通じて、参画企業同士の交流の場を提供。

(6)「WIRED」日本版を軸とした情報発出

「WIRED」日本版にてSTYLY Spatial Computing Labの活動内容を紹介予定。

リアルとバーチャルの境目をクローズアップしていくことで、日常生活を大きく変えるようなワクワク感を生み出していくことの助けとなるような施策を考えているとのこと。

ラボ設立発表会では、STYLYの執行役員CMOでこのラボの所長を務める渡邉遼平氏がこう語っていました。

キラーアプリ的なものを作ることを目指すよりは、もっとライフスタイルに寄り添ったXRのあり方を提案していきたい。ふだんの一日の生活の中で、XRが新しい生活の形を創出するのが理想。

また各参画企業は、以下のようにコメントしています。

我々はこのラボで、ノイズを生み出し、バイアスをなくして可能性を広げるという役割を担っていきたい。また、空間コンピューティングやXRは弱者にとっても意味のあるものになるはず。今まで救えなかったひとたちに対してのユースケースアイデアも出していければ。 (「WIRED」日本版 エディター・アット・ラージ 小谷氏)

STYLYとは過去に『バーチャル渋谷』『MIRAI HANABI』など、さまざまなXRイベントを開催してきた。今回のラボはその体験をさらに次の段階に進めるチャンスとなるはず。6Gなどさらに高品位な通信環境も含めて将来を見据えていきたい。(KDDI株式会社 パーソナル事業本部 サービス・商品本部 auスマートパス戦略部 ビジネス開発G グループリーダー 佐野学氏)

江戸時代に呉服店として創業した座売りの時代から、百貨店を経て、われわれが目指すべき新たな商業施設は、体験の拡張を提案する共創空間でありたい。XRによって、その場所に行かないと体験できない価値(=LBX(Location Based Experience))を高めていくことがより重要になってくる。(J.フロント リテイリング株式会社 執行役常務 デジタル戦略統括部長 兼 株式会社 大丸松坂屋百貨店取締役 林 直孝氏)

アメリカで6月に開催される世界最大のXR見本市「AWE(Augmented World Expo)」に出展を予定しており、年末には日本でもエンドユーザー向けイベントを開催する予定とのこと。

日本のXR分野のパイオニアとして、未来を見据えた活動が楽しみです。ギズモードも今後のラボの活動をレポートしていきます。