どうしてエルモはいつまでも3歳半なの?『セサミストリート』最大の謎に挑んでみた

44周年を迎えてもなお永遠の3歳半のエルモを科学的に考える。

テレビ番組『セサミストリート』にエルモが初登場したのは1980年。今年も2月3日に元気に誕生日を迎えています。番組放送開始から数えると、エルモは今年で最低でも44歳ってことになりますので、立派な中年です。でも不思議なことにエルモは今でも3歳半で、毎年2月3日迎える誕生日に3歳半になるのです。

毎年3歳半になるエルモの謎

つい最近エルモが出演したテレビ番組「Today show」で、司会者がエルモの年齢に触れた時の話です。司会者のホーダ・コトビがエルモに「もうすぐ誕生日だね。また3歳半になるんだね!」と言うとエルモは「そうです!エルモは3歳半になるよ。去年とその前の年、その前の前の年と同じだよ」と答えています。

その後、出演者とエルモは、誕生日にエルモが何をする予定かなど、普通の誕生日の話をし続けていますが、ちょっと待ってください、ずっと3歳半になるお誕生日って普通じゃないですよね?

エルモの年齢が話題になると、エルモはいつも元気に自分が3歳半であることを説明していて、これは何十年も続いているんです。初めて数十年前にエルモに出会った子供たちは成長して、中年になり、子供がいる歳になっていると言うのに…。もうひとつよく考えてみると、エルモの誕生日2月3日は月誕生日ではないんです。誕生日なのに、3歳「半」になるんです。誕生日にはすでに半年終わっているんです。

そうだ、科学者に聞いてみよう!

世界150カ国以上で放送されている『セサミストリート』がスタートしたのは1969年。なのに、こんなに長い間エルモの年齢問題はなぜか注目されてこなかったのです。米Gizmodoは何人かの科学者にエルモの年齢の謎について聞いてみることにしました。そしていくつか可能性を教えていただきました。

「最初に思いつくのは、エルモが重力時間の拡張を経験しているということです」と話すのは、一般相対性理論の専門家でスタンフォード大学の理論物理学者Yuk Ting Albert Law氏。

遅い時間軸で生きている?

アインシュタインによって生み出された説のことですね。重力が強い場所では、時間がよりゆっくりと経過します。例えば、木星で1年過ごした場合、同じ期間に地球いる人よりも年をとることになります。ほとんどの場合、かなり微妙な差ですが、対象が巨大な物体だった場合、違いは劇的になることがあります。

Law氏は、エルモがブラックホールの近くに住んでいるからではないかと推測しているようですが、エルモは自分の誕生日をお祝いすることがかなり好きなので、地球のカレンダー通り毎年お祝いしています。なので、エルモは最初に3歳半になった時からまったく時間が経過を経験していないくらい、信じられないスロースピードで移動しているってことになります。

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Photo: Library of Congress

一方、セサミストリートの人間の住民はちゃんと歳を取っています。例えば、音楽の先生ボブ・ジョンソンは、しっかりと時の流れの影響を受けています。ボブは1969年に番組に初登場した時は若者でした。そして番組を引退した2016年には、顔にしわやたるみがちゃんと現れていました。しかし、時間の拡張がエルモが歳を取らない理由の答えになる可能性がまだあるそうです。Law氏は「エルモの家の近くに小さなブラックホールがあれば、それが答えになりうる」と述べています。

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Graphic: Courtesy of Steven Harrellson

タイムトラベル説も崩れる

米Gizmodoが連絡を取った専門家たちのうち数名は、タイムトラベルなのではないかと答えていますが、Law氏はそれはありえないと言います。「理論的にはワームホールはタイムトラベルのメカニズムになり得ますが、タイムトラベルがエルモが歳を取らないことに結びつくかわかりません」と述べています。そう、もしエルモが誕生日を祝うために過去に時間を戻っているとすれば、やはりエルモは毎年歳を取っているはずだからです。そしてセサミストリートの他のメンバーもエルモが3歳半になった日と同じ年齢でなきゃいけないのです。

タイムトラベラー・エルモ説も、歳をとらないセサミストリートの住人がエルモだけではないために崩れてしまいますビッグバードは半世紀以上にわたって番組に登場していますが、まだ6歳半ですし、ビッグバードの友達スナッフルアパガスも5歳です。米Gizmodoは、セサミストリートのテレビ番組を制作するセサミワークショップに連絡し、Law氏の理論が出演者たちの誕生日の謎の答えかどうかを聞いてみました。

「エルモの誕生日はモンスターイヤーで数えられています」と、セサミワークショップの広報担当者の返答は公然の事実という感じでしたが、ブラックホールやタイムトラベルに関しては何も返答はありませんでした。

これより詳しい情報がないと、科学的な観点から正確な判断するのは難しいです。もし重力時間の拡張理論が正しいとすれば、「モンスターイヤー」は、重力の影響を受けた時間を表現するための言葉なのかもしれません。

鍵はモンスタータイム

しかし、コロンビア大学で博士課程の研究中に物理学と生物学の交差点を研究したSteven Harrellson氏はエルモの年齢についての論文を出してくれました。論文ではモンスターイヤーは「モンスタータイム」という理論で説明さされると述べられています。「私は、エルモが3歳半になるまでは人間と同じ速度で歳をとっていたと信じています。しかし、その時点でエルモはモンスタータイムに移行し、エルモの年齢は揺れ始めたのです」とコメントしています。

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Graphic: Courtesy of Steven Harrellson

Harrellson氏は、毎年2月3日の後のある時点で、時間が逆戻りするように動き始めて、エルモが若返りを始めると仮説を立てています。その後、時間は逆転し、次の2月3日に再び3歳半になるまで前進します。そしてそのプロセスが繰り返されるというわけです。

モンスタータイムにはモンスターエネルギーが不可欠

ただ、この説には追加の仮定が必要となってきます。科学の基本的な基盤は、物理法則が変わらないということです。人間の経験では時間は一方向にしか流れません。しかし、モンスタータイムの存在はエルモのような物体を定期的に後ろ向きに引き戻す「モンスターエネルギー」の存在が必要になります。

そして、モンスターエネルギーが存在するのであれば、エルモが何らかの異種の物質と相互作用していることになります。この物質をHarrellson氏は「モンスターマス」と呼んでいます。

「アインシュタインの方程式を使うとモンスターマスが存在する必要があるとなります。でもこれは未来の課題ですね。モンスタータイムとモンスターエネルギーの理論の研究はまだ初期段階なので」とHarrellson氏は語っています。

もし科学者たちがモンスターエネルギーの理解を利用できれば、技術や産業に重大な影響があるかもしれません。しかし、現時点ではエルモが私たちに本当のことを秘密にしているのか、はたまたエルモ自身もまだ理解していないのかわかりません。どちらにしても、44年経った今でもエルモは3歳半っていうことだけが真実なのです。ハッピーバースデー、エルモ!

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