無人だから怪我人もなし…なのは良かったけど…。
サンフランシスコのチャイナタウンで、群衆が自動走行車Waymo(ウェイモ)のタクシーを破壊・炎上させる事件が起きました。幸い怪我人はいなかったものの、鎮火後の抜け殻のような車の様子から、炎上の激しさがわかります。動機はまだわかっていませんが、自動走行車へのネガティブな感情が背景ではないかともいわれています。
突然の破壊行為
Waymoによれば、その自動走行車は2月10日土曜日の午後9時ごろ、サンフランシスコのチャイナタウンを走行中に突然群衆に囲まれました。彼らはフロントガラスを割って車体にスプレーペイントするなどした挙げ句、車内に火のついた爆竹を投げ込み炎上させました。サンフランシスコ警察は怪我人はないと発表、出火原因は調査中だとしました。
Waymoの広報担当者は米Gizmodoへのメールで言っています。
「我々は所轄の安全当局と緊密に連携し、この状況に対応しています」
なお、この事件の数日前には、Waymoの自動走行車がサンフランシスコで自転車をはねる事故が起きていました。また去年10月には、GMの自動走行車Cruise(クルーズ)が、別の車にはねられた人を6m引きずる事故を起こしてもいます。カリフォルニア州は安全上の懸念から、Cruiseの自動走行タクシーの営業を停止させています。
花火の観客が撮影
元Amazon(アマゾン)のソフトウェアエンジニア、Michael Vandi氏はこの事故が起きたとき、チャイナタウンで春節を祝う花火を見に来ていて事故を目撃しました。彼は自身のX(旧Twitter)アカウントにそのときの動画をポストしています。
Vandi氏によれば、Waymoの車がちょっとした渋滞で停車中、白いフード付きの服を着た何者かが「車のボンネットに飛び乗って、まさにWWEスタイルでフロントガラスをノックアウトして叩き割った」そうです。
そこに居合わせた人たちはショックを受け、事態を見守りつつ車の周りに集まってきました。そのとき別の誰かが、またWaymo車のボンネットに飛び乗ったのですが、周りでも一部の人が手を叩いて煽るなどし始めました。
「そこからすごくおかしくなったんです。スケボーでガラスを割ったり、車に落書きしたり。あの場には2種類の集団がありました。けしかける人たちと、とにかくショックで動画を撮りだす人たちです。誰も(止めようとはしなかった)…というか、何十人もの人を相手にしたら、何もできません」
Vandi氏は次に、誰かが車の下で花火に点火したのを見たそうです。そのとき見た目上は何も起きていなかったものの、花火の音が聞こえて、Vandi氏を含め周りの人は「もはや近くにいたくない」と離れていきました。
Vandi氏いわく、彼は何が起きたかよくわからなかったものの、多分このとき車の中で花火に点火されたのだと考えています。数秒間煙が見えたと思ったら、「ものすごい炎が上がった」そうです。彼は消防車のサイレンが近づいたときにその場を立ち去りました。
市民の間にネガティブな感情
XとYouTubeアカウントを運営するストリート・レポーターのFranky Francisco氏も、チャイナタウンで花火を見ていました。彼は仕事の一環として、普段から警察や救急の無線連絡を聞き取っています。彼は自転車で自宅に帰っている途中でしたが、消防署が自動走行車の火災を報告しているのを聞いて、チャイナタウンに引き返しました。
Francisco氏が火災現場に到着したのは警察や消防が来た後だったので、彼は破壊行為そのものは目撃しませんでした。ただ、彼が着いたとき、当局は燃えた車がどの会社の車かもわかっていなかったと言います。
「あまりにもひどく燃えていたので、最初は(燃えた車は)Waymoだと言い、その後Zoox(ズークス)だとなりました。どんな車か認識できなかったからです」とFrancisco氏。WaymoはGoogle(グーグル)、ZooxはAmazonが作った車で、似ても似つかないのに。
Francisco氏は、Waymo車の事件に驚いてはいないと言いつつも、「自分が知る限り、自動走行車に対する破壊行為の中で最悪のケースの1つ」だと強調しました。
「この街の一部の集団において、自動走行車へのネガティブな感情はたしかにあります」とFrancisco氏。彼はCruiseの自動走行タクシーが1ダース近く、理由なく停車して渋滞を引き起こした去年8月の事案を指摘します。
「それとは逆のタイプのエネルギーも存在しています。ただ彼らはそこまで声が大きくないし、その手の人たちはたいてい、物を壊したりしないんです」