8兆円はもらいすぎ。イーロン・マスクの役員報酬が撤回される

558億ドル(約8兆2000億円)は払いすぎ。

米デラウェア州衡平法裁判所の判事が米時間30日、Tesla(テスラ)株主からの訴えを認め、イーロン・マスクCEOへの高額報酬の差し止めを命じました。高額報酬の支払いを決めた役員会は、マスクCEOの息のかかった縁故知人ばかり。金額の客観的根拠を提示できなかったのが、その理由だとしています。

「んなもん裁判所が口出すことじゃないだろ!」とマスクはカンカン。「会社の登記をテキサス州に移転してやる!」「みんなもデラウェアで法人登記なんてやめとけ」とX上でこぼしています

それだけでは腹の虫が治まらなかったのか、さっそくネット投票にかけて約87%の人からテキサス移転に賛成票を搔き集め、翌31日には「賛成多数につき速やかに役員会決議にかける」と報告しています

デラウェアは全米新規法人設立数No.1の州で、 フォーチュン500の優良企業のうち6割以上はデラウェアで登記されています。

同州で会社を設立した場合、別にデラウェアに事務所を置く必要はないうえ、州外居住者の役員就任もOK。それで州外事業所得は非課税になりますし、ネバダやテキサスではかかる売上税もかかりません。 会社法専門の衡平法裁判制度も手厚く、法人設立がらみの紛争解決もスピーディー、買収・合併承認のハードルも低くて何かと便利。

その便利を捨ててまでテキサス? いちおう新本社の所在地だし、テキサスもそれなりに税制優遇措置は充実してるわけですが、どこまで本気なんでしょうね。

高額報酬にストップをかけたのはヘビメタドラマー

高額報酬の訴えを起こしたのはテスラ株主のRichard Tornettaさん。2018年の支払い契約がおかしすぎるだろと訴えたのがはじまりで、2022年に法廷で争われる運びとなりました。

以来、マスクの弁護人が涙に泣きむせぶ一幕もあるなど、血と涙の法廷劇が延々と繰り広げられてきたってなわけです。

どんだけの大株主なんだと思たら、原告のTornettaさん、本業はヘビメタのドラマーで、2018年に訴えを起こした当時所有していたテスラ株はなんと9株ぽっきりなんだそう。

デラウェアでは小口株主による訴えはそんなに珍しいことじゃなくて、紙切れ1枚提出すれば、あとのことは弁護士さんがやってくれるし、勝訴したら儲けは全株主で折半なので、私利私欲ってことでもないようですよ?

アメリカ人のだれもが共感?

給与水準が日本の2、3倍の米国ではありますが、89%のアメリカ人は今の給与が不満。アメリカ人の6割はその日暮らしで、次の給与が滞るとすぐ月々の支払いに行き詰る毎日です(最新の調査結果)。それもあるのか、イーロン・マスクの叫びも一定の共感を得てはいるようす。

まあ、支払いが滞って明日の電気代にも困る…というのと、Twitter買収の金が消えるだろ…や、これまでの世界一の金持ち記録が無効になってしまうだろ…というのとでは感覚にだいぶ開きがあります。そんなところで粘ってないで、2022年1月のRaptor V2ロケットテスト爆発事故で意識不明の重体になったSpaceX社員に賠償金払うほうが先じゃないかって話もありますが。

参考までに、メジャーリーグの大谷翔平選手の契約金は10年で7億ドル。今回争われた報酬558億ドル(約8兆2000億円)は、米上場企業史上でも類を見ない最高額です。

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