ケタ間違えてないよね…。
体重推定374.8トン。古今東西どこを探してもこんな重い生物は見たことないぞ!たぶん!というクジラの化石がペルーで発掘されました。
象62頭ぶん
発見場所はぺスコ盆地のピスコとナスカ村の間の砂漠です。発見国にちなんで「Perucetus colossu(ペルーの巨大クジラ、の意)」と命名されたこのクジラ。化石は2010年にMario Urbinaさんが見つけ、分析結果がようやく「Nature」に公開されました。
年代は約3900万年前の始新世。374.8トンというと、だいたい象62頭を束にした重さだそうですよ? ひょえ~。
発見の重要性
この嘘のようにデカい化石の意味について尋ねてみたら、シュトゥットガルト州立自然史博物館の古生物学者Eli Amsonさんはメールでこう答えてくれました。
「ヒゲクジラのような巨大生物化の時期は比較的年代が新しく(約500万年前)、遠海で起こった現象と思われていましたが、Perucetusの化石が見つかったことで、これまでの予想より3000万年も前に、しかも沿岸部で起こっていたことがわかったことになります」
「これほどの巨大生物が近海で生きていたこと自体、想像もしなかったことです」
出土したのは椎骨13本、肋骨4本、寛骨1本とのこと。さらにクジラの先祖パキケトゥス(Pakicetus、半水生)を思わせる後ろ足もきれいに見つかっています。
密度は高め。ほ乳類にありがちな真ん中がスポンジ状の骨じゃありません。「衝撃だったのは、それでこれだけのジャンボサイズに到達できる点ですね。頸椎とかも肥大化が激しくて、種の特徴を見分けるのもひと苦労でした」(Amsonさん)
研究班の見立てでは、分類は古代くじら類バシロサウルス科とのこと(始新世~漸新世。有名なバシロサウルス以外にもドルドン・アトロクスやケケノドンなどがいる)。骨の状態からみて、深海に潜るというより、浅瀬で餌にありついていたものと考えられています。
もちろん謎の部分も多々あります。クジラが専門のノースウェストオハイオ医科大学の哺乳類研究者のHans ThewissenさんとDavid Waughさんも論文付属のPerspectivesの記事中こう指摘していますよ。
「大発見だが、化石で知れることには限界もある。その点も忘れてはならない。たとえば頭蓋骨など、見つかっていない部位も数多くある」
「個体の死亡年齢を知る手がかりもほとんどないし、どんな一生だったのかも推測の域を出ない」
シロナガスクジラと比べてどうなの?
地球上に現れた史上最も重い動物といえば、これまでにわかってるなかではシロナガスクジラですが、それだって、せいぜい200~220トンしか体重はありません(ソース:Brittannic)。いっぽうP. colossusは最低そのくらい重くて、いちばん重いものだと375トンですから、その倍近く。もうスケールが違います。
脂肪で浮いていた?
P. colossusは骨が高密度なので、低密度な脂肪とかがむちゃくちゃたくさんついて、それでトータルの体重が重くなっていたのではないかと、ThewissenさんとWaughさんは書いています。
「P. colossusはイワシクジラやホッキョククジラに似ている。つまり、水に浮く脂肪がたっぷり体について、それを骨格の重みで押さえる戦略で生きながらえていた。もしかしたら体脂肪の起源かもしれないし、そう考えると約3900年前という化石の年代とも符合する。3900年前というと、ちょうど地球と海が冷えはじめた時期なので体脂肪で保温することが有利に働いたのではなかろうか」
生物はここまで巨大になれる
生物がどこまで大きくなれるのか、どの進化の過程で巨大化が起こったのか、専門家も認識を改めないと!